男は一口水を含んでから堰を切ったようにペットボトルにった水の四分の三ほどまで一気に飲み切ってしまった。それから口元を手の甲で拭ってから大きく息を吐き出した。

「本當にすまない、ありがとう。し落ち著いた」

「気にしないでください。何処かに移しますか？」

「じゃあ……、あのベンチまで一緒に行ってくれるかな」

男が指差したのは公園のり口から見える場所ではあるものの、端のほうにあってそれほど目立たないところだった。キラは左手首に巻き付けてある紐の先にカケラがついていることを確認してから男の背中に手を添えて支えながら木になっているベンチまで歩いて行った。

それからずっとキラはベンチに座り込んで頭を抱えてしまった人の背中をでてやっていたので、この男については何も知らないのだ。どうしてこの男がスーツ姿で公園の隅っこの茂みの奧にうずくまっていたのかも、この顔この狀態でには異常がないと言い切ってしまったのかも、この男が何という名前なのかも知らなかった。

「あ、さっき、水買ったんだ」

「いいんだよ、あれはが渇いたり、お腹が空いたりした時のために渡したお金なんだから。ところで……」

ニジノタビビトは元のペンダントに服の上かられて、じる熱をまた手のひらで確かめた。キラの左手首には変わらずカケラが括り付けられていたので、これほどいて熱をじていないのであれば、やはりカケラはニジノタビビトにしか教えてくれないということになる。ニジノタビビトはもう一度強くカケラを握り込めた。

「キラ、カケラの熱をじているかい」

その言葉にキラはハッとして、左手首から下がった紐の先でふらふら揺れているカケラを固く握り込めた。しばらくそうしていたものの、やがてニジノタビビトの方を見返して首を振った。

「そうか……。今私の元のカケラは確かに熱を持っているんだ」

キラはニジノタビビトが握りしめた元に視線をやってから、隣の男を垣間見て今度はニジノタビビトと目を合わせた。

「じゃあ、この人が次の……」

カケラは結局のところニジノタビビトにしか次にカケラを生し、虹をつくる人を教えてくれなかったが、今回こんなにも早く見つかったのは、キラがいてくれたからに違いなかった。それは、翡翠の渦に巻き込まれたキラに果たしていこの言葉が適しているのか微妙だがキラの運が良かったことと、何より人に手を差しべらる人間だからだった。キラが優しいことはきっとこの場にいる誰よりもニジノタビビトが知っていた。

この項垂れている男が次の虹をつくる人の候補ということが分かった今、何にしてもこの人から話を聞いていく必要があった。ニジノタビビトはキラの前であるということでいつもよりもっと張しながらも、男と話をしてカケラの熱を確かめながら、の現化について話をして良いものか判斷をする。

元々、これらを見てもらった上でニジノタビビト自と虹をつくることについてキラの中でどう処理できるのか判斷してもらう必要があったのだ。キラがどういうふうに判斷して、ニジノタビビトに対してどんなを抱いたって無事に故郷の星メカニカまで送り屆けるつもりであったけれど、それでもキラには、キラにだけは自分ことを嫌いにならないでいてしかった。

キラに幻滅されないためにも、嫌悪を抱かれないためにも、今回は今までで一番失敗できないという気持ちがあった。

ニジノタビビトは一度唾を飲み込んでの渇きをどうにかしてから口を開いた。

「ミスター、私はニジノタビビトと言います。あなたのこと聞かせていただけませんか」