《高収悪夢治療バイト・未経験者歓迎》第2話 応募電話
勤務時間は夜から深夜、週4日以上土日できる方歓迎。免許資格不要ともちゃんと書かれていて、條件をざっと見ても気になるところはなく、それは正に凜太が求めていた求人だった。
バイト先が病院なんてかっこいいし、睡眠治療のサポートなんて仕事は面白そうだとも思った。勤務場所も住所をスマホの地図アプリに打ち込んでみたところ自宅から遠くはない。
凜太はベッドから起き上がり電話をかける準備を始める。咳ばらいをしてから、「あー。あー」との調子をチェックした。
知らない人に電話を掛けるときはどうしても張してしまう。特にバイトの応募電話となると失敗はできない。
半年周期ほどでバイトを始めたりやめたりしていた凜太にとってバイトの応募電話は初めてじゃなかったが、一応インターネットでバイトの応募電話を掛けるときの注意點をチェックする。
……そうしたもののサイトに書かれていた注意點が考えすぎなように見えて、余計に張してしまいそうだったので勢いでかけることにした。
ボールペンとメモ用紙を用意して、いざ電話番號をスマホに力する。
耳に當てたスマホから呼び鈴が繰り返される……きっと、通話が始まる前のこの時間が一番張するのだ。
「はい。とまと睡眠治療クリニックです」
「もしもし。求人報を見てお電話しました。草部と申します……」
電話に出たのは落ち著いた聲の男だった。病院の名前がかわいらしいのも凜太がこの応募先を気にった理由だった。
「ああ。バイトの応募で電話してくれたんですか。いやあ、嬉しいな。私が擔當でクリニック院長の馬場です」
バイトの採用擔當を呼ぼうと凜太が聲を出す前に、男は聲を高くして言った。
「あ、初めまして。今お時間大丈夫でしょうか?」
「大丈夫大丈夫。うちは基本的に忙しいのは夜だけだからね。君は學生さん?」
「はい。大學生です」
「そっかそっか。この辺の大學生ってことはあそこの近くのとこかな?」
「一宮大學ですね」
「そうそう。この辺の大學言うたらそこしかないもんね。うちのバイトにもおるよ宮大の學生」
馬場と名乗ったクリニックの院長は気さくな口調で話した。採用擔當の事務員か誰かと電話で話すと思っていた凜太は院長と電話が繋がり増して張しつつもしっかり聲を出す。
「そうなんですか」
「そうそう。ようやってくれとるよ。じゃあ草部君だっけ。とりあえず面接せんといけんね」
「はい」
「いつ頃來れる?」
「自分はいつでも大丈夫です」
「今夏休みだもんね。じゃあどうしようか。早いほうが良いし、明日とか明後日とかでもいい?」
「はい。大丈夫です」
明日という提案をけて、凜太もなるべく早くバイトを始めたかったので深く考えずにすぐ了承した。
「大丈夫なら、明日にしようか。明日の夕方、午後6時ぐらいでいい?」
「はい。明日の午後6時ですね。了解しました」
「うんうん。いやあちょうどあと一人か二人バイトの子がほしくてね。たぶん問題なければ採用するから遅れずに來てね」
「はい」
「來るときは履歴書書いて持ってきて。証明寫真は無くてもいいから。あとは……なんか質問ある?」
凜太はさすがに明日だと証明寫真を撮りに行くのがめんどくさいかと気になっていたので、いらないと言われて安心した。そして、質問を探す……。
「醫療の免許とか資格持ってないんですけど大丈夫なんですよね」
「うんうん大丈夫。看護師みたいなことはしなくて患者の快適な睡眠を助ける為に々やってもらう仕事だから。一応肩書きは看護助手になるんかな。看護助手は免許いらんのよ」
「そうなんですか。分かりました」
「他は質問ない?」
「はい。ありません」
「じゃあ……こっからが重要なんだけどね……メモを取る準備してくれる?」
馬場はそこから、なぜだか聲を潛めるように小さくして続きを話した……。
「著いたら必ず正面のり口からではなく裏口から中にって……。それで、開けた裏口の扉は必ずしっかり閉めてくれるかな……。廊下を進んで3つ目に見えた扉が僕の部屋だから……。そこに行くまでは窓や扉から他の部屋の様子を探らないで……そして、僕の部屋の前に來たらあまり音を立てないように小さく扉をノックすること……」
言い終わると凜太が聞き返す前に電話は切られる。通話終了の無想な音が聞こえてきてもすぐにはスマホを置けなかった。
変な通話の終わり方を奇妙に思いつつも、とりあえず面接の約束をつけられたことにをで下ろした凜太は立ち上がり、冷蔵庫のお茶を飲む。
電話の張と最後に馬場が言った謎のルールのせいで凜太は嫌な汗をかいていた……。
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