《高収悪夢治療バイト・未経験者歓迎》第35話 気持ち悪い生
これまた、いかにもな一室。おそらくはあの部屋の中に何かがいる。
「あ、なんか怪しい部屋がある……」
「どこ?」
「不気味だから春山さんは見ないほうがいいかも」
凜太は咄嗟にそう言ったが一つ下の段まで上ってきた春山も2階を見上げた。階段を上がってすぐ隣にある木製のドア。それは明らかに他と違った。
ドアの縁から赤いが廊下にれている。一般的な白い蛍燈のでも常夜燈のオレンジっぽいのでもない。真っ赤なだった。
ぐいぐい進んでいた凜太もさすがにそこで足を止めた。これ以上一歩もあそこへ近づきたくない。
シンプルに怖かった。暗がりで一つだけ赤くるドア。すごくシンプルに怖かった。
「春山さんはここで待ってて。俺だけであそこに行ってみるよ」
「いや……でも……」
「大丈夫。1人で行ってこの棒を振ればそれで終わり。2人も嫌なもん見る必要ないよ」
凜太は良い恰好をしようと思った。言いながら春山の返事をちゃんと聞かずに階段を上った。怖がっているよりもさっさと終わらせたほうがいい。
所詮これは夢で、容も気持ちの悪い生がいるだけと知っている。
階段を登り切った凜太は一応左右を確認する。やはりと言えばやはり、廊下は暗く、がれるドアは一つだけだった。
そのドアのほうへ一歩踏み出すと、突然階段のほうから音がした。凜太は素早く首をかして振り返る――。
何のことは無く、そこには春山がいた。うっすらと綺麗な目がし見下ろした位置に見える。
「やっぱり私も行かなきゃと思って」
「ほんと?大丈夫?」
「うん。……今日は私が先輩だから」
張していたのでささいな音でびっくりしてしまった。
もしも……この家の住民が人と違って悪趣味ではないのなら、このドアの先には何かがいる。どんな風になっているかは全く想像がつかないけれど、この夢の中で特別な空間であるはずだ。
「じゃあ……開けるよ」
凜太はドアをゆっくり開けた……。
中には案の定なにかがいた。部屋の中央の床の上、すぐに気づく場所にいた。大きな芋蟲のような生が。
一見したところではそいつがいる以外にはおかしなものがない一室。廊下にれていた赤いは蛍燈のが赤いという理由だった。
の子が使う子供部屋というじだろうか……あの患者の子中高生の部屋か。
凜太は恐る恐る、氷の上を歩くかのように慎重に部屋の中へる。部屋の真ん中にいる芋蟲に向かって。
自分の手の平よりもし大きなサイズ。近づいてよく見るとに小さな突起がいくつかあってちょうどナマコみたいな見た目をしていた。
想像していたものよりは気持ち悪くはない。これを潰せばそれで終わりか……?
近づいても逃げようとはしない大きな芋蟲。小さくうねうねとはしていてやはり生きてはいる。凜太はそれに向かって木の棒を構えた。
しかし次の瞬間「うわ」と聲をらす。
芋蟲のに人間の目が出てきた。
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