家に帰ると、凜太はさっそく馬場からもらった薬を試してみることにした。悪夢治療中にし眠れたけれど、一昨日からよく眠れていないので睡眠時間は足りていない。玄関に鍵をかけると同時に眠気がどっと降りてきた。

袋を開けてみたところ見た目におかしなところはなかった。小指の爪先くらいの白い錠剤。凜太は迷わず1日2粒のルール通りにその薬を水で飲み込む。

を通り、馬場からもらったとまと睡眠治療クリニック限定の薬が確かに凜太の胃の中へった。

これで本當に大丈夫なのだろうか。そんな不安もあったが凜太は服をぐとベッドに倒れた。どちらにせよもう限界がきていたので、信じるしかなかった……。

十數時間後、目を覚ました凜太は驚く。あまりの寢覚めの良さに、ただ驚くしかなかった。

窓からは夕日が差し込んでいた。それと同時にセミの鳴き聲も窓の方から……。朝方眠ったはずなのに気付けば1日の終わりをじる時間だった。

一瞬の出來事だったようなのに確かな充実。目の疲れもの疲れも吹き飛んで、全が力している。だけど、スイッチをONにすればすぐにでもき出せる気がする。

久しく忘れていた覚だった。凜太は眠るってこういうことだったんだと気づく。當たり前だった良い眠りを取り戻した。

飯を食って風呂にればまたすぐにバイトに行かなければならない時間だったがそれも嫌な気がしない。凜太は敢えて聲を出しながらあくびをした。

その日のバイトも、その次の日のバイトも問題なく終わった。馬場が言っていた通りの悪夢を見る患者がたくさん來て忙しかったけれど時間通りに帰ることはできたし、凜太はただ雑務をこなすだけだった。

「治療してなかったら寢れなくて大変じゃない？」

凜太にはそんな言葉も同僚から投げかけられた。普段なら仕事中に合法的に寢られるこのバイトで、回復とは真逆の労働をしている凜太を同僚は哀れに思った。凜太自はそれが楽だったにも関わらず、ハズレくじを引いたねという態度だった。

そして、その次の日もそのまた次の日も楽な日は続いていった。の悪夢を見る患者は日に日に數を減らしていって、ある日ぴたりといなくなった。

バイトも半分は休めるようになって、看護婦も夜に出勤しなくてよくなった。とまと睡眠治療クリニックにも當たり前の日常が帰ってきたのだ。

そうすると、凜太もまた雑務だけのバイトから悪夢治療をこなすことになった。馬場が待つ治療室で、裝置を使って人の夢にる。

馬場に自分も悪夢を見ていることを伝え、薬をもらってから5日後。まだ一週間も経っていない。

またあのが夢の中の世界に出てくるかと思った。しかし、あのは姿を見せることは無くなった。