《悪魔の証明 R2》第23話 019 アカギ・エフ・セイレイ
「スピキオさん。その手帳には、いったい何が書いてあるんですか?」
好奇心を抑えきれずに訊いた。
こんなに何度も読んでいるということは、きっと大事なことが記載されているのだろう。
もしかして人に読まれたくない何かが書いてあるのかもしれない。
だが、どうにもこうにも手帳の容が気になる。
「中を知りたいのかい?」
手帳を眺めたまま、スピキオが訊き返してくる。
その彼に向かって、うん、うん、と二回深く頷いた。
スピキオは、仕方ないな、といったじで手帳をパタンと閉じる。そのまま手帳を渡してくれるのかと思ったが、なぜかその場で立ち上がった。
棚へと手をばす。
しばらくすると、がさごそと彼の鞄をあさる音が僕の耳にってきた。何を探しているのか尋ねようとしたが、間もなくスピキオの腰はシートへと戻ってきた。
座るや否や、「ほら」と、白いを差し出してきた。
それが目前に近づいてきても、それが何であるか僕にはわからなかった。
何だ、これは?
「ああ、これじゃあ、わかりにくかったかな」
スピキオはそう言うと、その白いを自分の顔の前にかざす。
「仮面……」
と聲をらしながら、それを見た僕は首を捻った。
こんなものが手帳と何の関係があるんだろう。
僕の疑問をよそにスピキオは白い仮面を自分の顔に裝著した。
「アカギ君、この仮面に見覚えはないかい?」
と、尋ねてくる。
鼻腔の部分はくり抜かれているが、口元に空気孔は見當たらない。
一見するとデスマスクと見紛うばかりの特徴的な白の仮面。そして、今吐かれたばかりのスピキオの聲はくぐもった聲だった。
ここまで考えた時、はっと目の瞳孔が開いた。
古い記憶が脳裏に蘇ったのだ。
雨――
傘をさしている自分がそこにはいた。
野太い低音の聲が拡聲で拡張され、街頭に鳴り響いていた。
何のために自分がその場所にいたかなんてもう覚えていない。
無機質なビルが立ち並ぶ街中、何の意味もなくただ目の前に繰り広げられる景を眺めていた。
修道儀にを包んだ白い仮面の男たちが降りしきる雨にもかかわらず、自らが所屬する宗教団のアピールを続けていた。
髪も修道儀も靴もずぶ濡れにし彼らは早口でび続けていた。
何が彼らをここまでさせるのだろうか。
僕の疑問を無視して彼らは、
「我々――青年活部で――す。本――日はみなさ――んの前で――」
と主張を続ける。
激しい雨音により途切れ途切れになり、よく聞き取れなかった。
それにもかかわらず、僕は未だ彼らへ視線を送り続けていた。
よく見るとそれぞれ被っている仮面の形狀がし違う。
目が吊り上がっている仮面、頬が出っ張っている仮面、眉間に皺のようなものがある仮面。
この仮面の形容の違いは何かしら意味があるんだろうか。
そう訝った瞬間、ふと背後に不吉な気配をじた。
素早く振り返った。
そこには白い仮面の男が立っていた。
今度は別のタイプだな。
恐怖を抱くこともなく、漠然とそう思った。
男はすっとチラシを渡してきた。
そして、無言のままそれをけ取とろうとしたその時、例の低い聲が男の仮面の奧から鳴り響いた。
彼は言う。
お忙しいところ、大変申し訳ありません。私たちは――
スピキオはすかさず、「しっ」と注意し、人差し指を白塗りの口元へと持っていく。
「トゥルーマン教団」
そう獨白するかのように、僕が名を呼んでしまったからだろう。
「どこにやつらの関係者がいるかわからない。聲を抑えて話そう」
くぐもったままの聲で言う。
聲は仮面に標準裝備されている変聲によるものだった。
どうやら彼が持っているのは本のトゥルーマン教団の仮面。
そう考えて相違ないだろう。
仮面を取り外し素顔に戻ったスピキオがその先を言う。
「君が推測している通り、私はトゥルーマン教団の人間だった」
いつも通りの穏やかな聲だった。
スピキオのこの臺詞から推察するに、現在の彼は教団の人間ではないということだろう。
「だった……ということは、もう、スピキオさんは、トゥルーマン教団を辭められたということですよね。なぜ辭められたのですか?」
若干聲のトーンを落として訊いた。
「そうだね」スピキオは素直にそれを認めた。「君の言う通りだ。私はトゥルーマン教団青年活部に所屬していた。當時、私は數々の悪行を重ねた、本當に今言えないくらいひどいことをしてきた。そう、まさしく筆舌し難い、人道にも劣る行為をね。そう、信仰を容認しない者たちに対して行ってきた。今現在も行われている許されない行為を。だが、私はある日、その行為に良心の呵責を覚えてしまったんだよ。教団に所屬している人間としては、決してじてはいけない良心の呵責を。だから、辭めたんだ」
このスピキオの告白に僕は眉を顰めた。
彼の発言には、常にトゥルーマン教団が悪逆非道なことを行っているかのようなニュアンスがじられた。
確かにトゥルーマン教団は青年活部を筆頭に、多理解不能な行は取るときはあることにはある。
極力関わりたくない存在ともいえるかもしれない。
だが、彼らがそのような行為……大きく人道に反するような悪行に手を染めているというような噂は、僕の知る限りあまり聞いたことはなかった。
【書籍化】萬能スキルの劣等聖女 〜器用すぎるので貧乏にはなりませんでした
※第3回集英社WEB小説大賞にて、銀賞を獲得しました。書籍化します。 剣も魔法も一流だけど飛び抜けて優秀な面がない聖女ソアラは、「器用貧乏」だと罵られ、「才能なしの劣等聖女」だと勇者のパーティーを追い出される。 その後、ソアラはフリーの冒険者業に転身し、パーティーの助っ人として大活躍。 そう、ソアラは厳しい修行の結果、複數スキルを同時に使うという技術《アンサンブル》を人間で唯一マスターしており、その強さは超有能スキル持ちを遙かに凌駕していたのだ。 一方、勇者のパーティーはソアラを失って何度も壊滅寸前に追い込まれていく。 ※アルファポリス様にも投稿しています
8 105高校生男子による怪異探訪
學校內でも生粋のモテ男である三人と行動を共にする『俺』。接點など同じクラスに所屬しているくらいしかない四人が連む訳は、地元に流れる不可思議な『噂』、その共同探訪であった--。 微ホラーです。ホラーを目指しましたがあんまり怖くないです。戀愛要素の方が強いかもしれません。章毎に獨立した形式で話を投稿していこうと思っていますので、どうかよろしくお願いします。 〇各章のざっとしたあらすじ 《序章.桜》高校生四人組は咲かない桜の噂を耳にしてその検証に乗り出した 《一章.縁切り》美少女から告白を受けた主人公。そんな彼に剃刀レターが屆く 《二章.凍雨》過去話。異常に長い雨が街に降り続く 《三章.河童》美樹本からの頼みで彼の手伝いをすることに。市內で目撃された河童の調査を行う 《四章.七不思議》オカ研からの要請により自校の七不思議を調査することになる。大所帯で夜の校舎を彷徨く 《五章.夏祭り》夏休みの合間の登校日。久しぶりにクラスメートとも顔を合わせる中、檜山がどうにも元気がない。折しも、地元では毎年恒例の夏祭りが開催されようとしていた 《六章.鬼》長い夏休みも終わり新學期が始まった。殘暑も厳しい最中にまた不可思議な噂が流れる 《七章.黃昏時》季節も秋を迎え、月末には文化祭が開催される。例年にない活気に満ちる文化祭で主人公も忙しくクラスの出し物を手伝うが…… 《八章.コックリさん》怒濤の忙しさに見舞われた文化祭も無事に終わりを迎えた。校內には祭りの終わりの寂しさを紛らわせるように新たな流れが生まれていた 《九章.流言飛語》気まずさを抱えながらも楽しく終わった修學旅行。數日振りに戻ってきた校內ではまた新たな騒ぎが起きており、永野は自分の意思に関係なくその騒動に巻き込まれていく 《最終章.古戸萩》校內を席巻した騒動も鎮まり、またいつものような平和な日常が帰ってきたのだと思われたが……。一人沈黙を貫く友人のために奔走する ※一話4000~6000字くらいで投稿していますが、話を切りよくさせたいので短かったり長かったりすることがあります。 ※章の進みによりキーワードが追加されることがあります。R15と殘酷な描寫は保険で入れています。
8 170こんなの望んでない!
仲違いしている谷中香織と中谷翔。香織は極度の腐女子でその中でも聲優syoの出ている作品が大好きだった。そのsyoは皆さんご察しの通り中谷であり中谷はこれを死んでもバレたくないのである。
8 133ドラゴンテイマーにジョブチェンジしたら転生してた件
MMORPG『スカイ・アース・ファンタジア』のサービス終了のお知らせ。 それを知った主人公の大空 大地(おおそら たいち)は、最後のアップデートで実裝されたドラゴンテイマーになろうと決意する。 その後、なんとか手に入れたジョブチェンジ用アイテムを使った結果、MMORPG『スカイ・アース・ファンタジア』のもとになった世界へと転生してしまうのであった…… これは、強くてニューゲームしてドラゴンテイマーとなった男が、異世界で第二の人生を送る物語である。 ※.第一章完結しました。 ※.1週間に2、3話の投稿を目指します。 ※.投稿時間は安定しませんがご容赦ください。
8 135死んだ悪魔一家の日常
延元紅輝の家族は普通ではない。 一家の大黒柱の吸血鬼の父親。 神経おかしいゾンビの母親。 神経と根性がねじ曲がってるゾンビの妹。 この物語は非日常的な日常が繰り広げられるホラーコメディである。
8 134友だちといじめられっ子
ある日から突然、少女はクラスメイトから無視をされるようになった。やがて教室に行かなくなって、學校に行かなくなって⋯⋯。 またある日、先生に言われて保健室に通うようになり、教室に行くのだが、影で言われていたのは「なんであいつまた學校に來てんの」。少女は偶然それを聞いてしまい、また保健室登校に逆戻り⋯⋯。 またまたある日、保健室に登校していた少女の元に、友人が謝りに。また教室に行くようになるも、クラスメイトに反省の意図は無かった⋯⋯。 遂には少女は自殺してしまい⋯⋯⋯⋯。 (言葉なんかじゃ、簡単にいじめは無くならない。特に先生が無理に言い聞かせるのは逆効果だとおもいます。正解なんて自分にも良く分かりませんが。) ※バトルや戀愛も無いので退屈かもしれませんが、異世界物の合間にでも読んで見て下さい。 (完結済~全7話)
8 99