≪採掘が可能になる道を所有しています≫

「……え？」

俺は周囲を見回す。

しかし、誰もいない。

いや、いると言えばいるが、皆死だ。

というより、窟の中なのに反響しなかった……

しかも、耳というよりは頭に直接響いているじだ。

俺は口にするでもなく、自分の頭に念じる。

……もう一度言ってくれ

≪採掘が可能になるアイテムを所有しています。採掘を始めますか？≫

やはり、こいつは俺の頭の中で喋っているらしい。

……お前は誰だ？

≪紋章【窟王】による助言機能です。生ではありません≫

【窟王】……俺が生まれながらに得た紋章だ。

王宮にほぼずっといたこともあって窟に行くことはなかったが、まさかこんな効果があるとは。

他に、【窟王】による効果があったり……

助言者は俺の意図を汲んだかのように答える。

≪現時點では助言機能の他に、採掘スキル引き上げ、補助効果が有ります。また、窟で有効な各能力、スキルランク向上があります≫

々聞きなれない言葉はあるが……

つまり、【採掘者】の上位版と考えれば良いのだろうか。

【採掘者】の紋章を持つ者は、採掘スキル引き上げ効果だけを得る。

そして【窟王】だけあって、窟の中では強くなれるらしい。

とにかく採掘に特化してるのは間違いない。

ここだけだと寢床には手狹だから、し掘ってみるか。

……採掘を始めると言ったら？

≪承知しました。採掘補助効果により、採掘最適化を始めます≫

……最適化？　え？

俺は窟の壁に、白いが無數に浮かんでいることに気が付く。

なんでってるんだ？

≪白いの部分は、ピッケルで叩くことを推奨する部分です。壁を破壊しやすく、更に落盤を防ぐため計算されています≫

「へえ。じゃあ、叩いてみるか」

俺は早速、ピッケルでその場を叩く。

すると一回で、人の頭ほどの巖を掘り出せた。

腕にかかる衝撃もなかったし、どうやら助言は確かのようだ。

「というより、窟の中なのにやけに明るいな……これも補助効果か？」

≪はい。暗視効果です≫

「そうか。これなら続けられそうだな……とりあえず寢床のスペースを作ってみるか」

再び俺は、ピッケルで巖壁を叩く。

どこを掘ればいいか分かるのでリズムよく掘り出せる。

巖が崩れる音がなんとも心地よい。

「なんか……楽しくなってきたぞ……」

気付けば俺は、採掘に熱中していた。

寢床分というのも忘れ、その何倍も掘り続けていく。

足元はすぐに巖で一杯になった。

いや、というか……一回で掘れる量が増えてきている？

掘り出した巖も大型になってるような。

≪採掘スキルのランクが10上昇により、採掘量が増えています≫

よく分からないが、技量が上昇してるということだな？

しかし、掘れる量が増えたことで、足元が……

≪巖×168を回収しますか？≫

回収だって？

≪紋章【窟王】の効果により、採掘なら重量に関係なく保管できます≫

ほう。どこに？

≪回答不能≫

そう……人への影響とか、もう取り出せなくなったりとかある？

≪人への影響はなし。取り出しは隨時可能です≫

なら頼む……

俺がそう念じると、掘り出した巖がるとともにどこかへ消えていった。

≪巖×168を回収。インベントリを作します≫

俺の頭に以下の報が、ぽっと浮かぶ。

◇インベントリ

巖×168

「……す、すごいな」

採掘限定とはいえ、あれだけの巖を一度で回収した……

しかも、基準は不明だが數値化してくれたのだ。

≪採掘したものを自回収する機能もあります。自回収を起しますか？≫

お願いしますっ……！

まさに至れり盡くせり。

これで採掘に集中できるというものだ。

俺は鼻歌じりに、どんどんとピッケルを振るう。

だが、巖礁は小さいから、このままだと向かい側にすぐ到著するだろう。

なので、そろそろ下方向に向かって掘り始める。

足元に落ちた採掘は、即座にに包まれ消えていく。

自回収……なんて、楽なんだ。

気が付けば、外の明りが遠い。

助言者によれば、採掘開始地點から、10m（メートル）掘り下げていたという。

m（メートル）という単位は初耳だが、俺が1mを覚えればいいだけだ。

そして知らないうちに、インベントリに々なものが。

鉄鉱石や銅鉱石……金鉱石まであるらしい。

もちろん売り手がいない現狀、金に価値などないが。

また、見知った鉱石だけではなく、見慣れないものもあった。

「……クリスタル？」

≪採掘補助機能、鉱石図鑑を起します。クリスタル……使用者に保持魔力増大の恩恵を與える。増加量は石の大きさによる≫

魔力を増やせるだってっ？！

じゃあ、俺のない魔力も増やせるっていうのか。

俺の今までの苦労はなんだったんだ……

肩を落としながらも、俺は更に別の採掘を見つける。

こっちの亀石（タートルストーン）ってのは？

≪亀石……使用することで壽命を一日増やすことができる≫

……じゅ、壽命っ？！

々と理解が追い付かない。

ここまで簡単に採掘ができることも驚きだったが、まさかここまで変わった石が手にるとは。

このシェオール巖礁……実はとんでもない領地なんじゃないか？

何にしろこんな面白いことは、人生で初めてだ。

更に奧には、もっと別の何かが眠ってるかもしれない……

「……よっしゃああああっ！！　掘るぞおおおお！！」

そんな好奇心が、俺にピッケルを狂ったように振らせる。

ただ一人、真暗な窟でび、収穫がある度に両手を上げて喜んだ。

「ルビーっ？　……こ、これはサファイアかっ？！」

気が付けば、俺はもう通りかかる船を探すのも忘れて、ただ採掘に熱中するのであった。