「あぁー、気持ちいいー……」

今俺は、窟のり口でスライムを枕に寢ている。

このスライム……シエルをテイムしてから、三日が経った日の夜だ。

この三日間、俺はひたすら採掘に勵んだ。

結果……

◇インベントリ

巖×4893

鉄鉱石×71

銅鉱石×89

金鉱石×5.8

銀鉱石×8.9

石炭×88

石灰巖×90

……

ルビー×1.7

サファイア×1.4

クリスタル×19

亀石×39

とまあ、だいたいどの資源も初日の三倍に増加している。

魔力を増やすクリスタルだけあまり増えていないのは、なるべくすぐに消費するようにしてるからで、もう500個近くは使ってるはずだ。

だから、俺の魔法も非常に強力になった。

今では海に雷屬の魔法を放つだけで、狙った大魚が取れる。

水屬の魔法なら、5樽（たる）分の水を降らすこともできた。

今の俺は中位魔法を軽々と使いこなせるようになったのだ。

靜電気だの、手汗だのと馬鹿にされていたのが今となって信じられない。

こうして俺は、早くも水と食料の問題を解決した。

しかもありがたいことに、シエルは教えたことをすぐに覚えた。

言葉は理解できないようだが、俺の手振り振りを真似してくる。

ベッドになってとか、窟の移に俺を乗せてくれたりと、至れり盡くせりだ。

また、シエルの他にスライムを十ほどテイムできた。

しかし、彼らはシエル以上に意思疎通が難しく、好き勝手にそこらへんをうろうろしてるだけだ。

一応名前は付けたが……正直、見分けがつかない。

シエルみたいにきがあれば分かり易いのだが。

というより、このシエルが特別なだけかもしれないけど。

「シエル……その肩の所も頼む」

俺は自分でんでほしい部分を手で示すと、シエルはをうねらせて肩をんでくれる。

「あ～……そこ。そこだ……」

とにかくだ。今俺はとてもこの島で快適に過ごしている。

生命の危機をした上に、”採掘”という生甲斐が出來た。

もちろん魚ばっかじゃ飽きるし、あれこれ魔法で工夫したいところだが……

気が付けば俺はもう、採掘のことしか考えてなかった。

希な鉱が、ピッケル一つでザクザク掘れてしまうのだ。

こんな楽しいことは他にはない。

というより、この島でできることって、現狀それぐらいだからね。

……明日も掘るぞ！

俺はひんやりとしたシエルの上で、気持ちよく眠りにつくのであった。

……うん？　なんだ？

頬をつんつんとされたので、俺は目を開く。

起こしたのはどうやら、シエルのようだ。

を起こして外を見ると、まだ朝焼けの時間。

波も穏やかで、気持ちの良い目覚めだった。

「シエル、おはよう……俺を起こしてくれたのか？」

シエルはをばして、矢印の先端のような形を海側に向ける。

「何かあったのか？　うん？　あれは……」

巖場には難破したボートがあった。

俺の乗ってきたものではなく、木片が散らかっている。

そしてその周囲には、人ならざる者が三ほど橫たわっていた。

緑のの者……ゴブリンか。

周辺に大型船は見えないから、どこからか漂流してきたか。

に著けている皮もぼろぼろだ。

ここも巖場とはいえ陸地だ。

海を彷徨（さまよ）うよりは、はるかに安全。

食糧や水も手にるかもしない。

そう考え上陸しようとしたが、波に呑（の）まれたのだろう……

ボートの壊れ合を見るに、皆相當な速さで巖に叩きつけられたか。

死んでいてもおかしくない。

一応、生きてるか聲を掛けてみよう。

使えるを持っている可能も有るし。

こちらを襲ってくるかもしれないが……

今の俺は中位魔法が使える。恐れることはない。

俺は早速シエルを従えて、ゴブリンたちに向かった。

「……おーい、大丈夫かー？」

こちらの聲には誰も反応を示さなかった。

よく見れば、皆を流している。

……これはもう駄目かもしれない。

一応、一ずつ息があるか近寄って確認する。

すると意外にも、三とも息があった。

「……まだ、生きてるな」

なんとか助けてやりたいが、相手は魔のゴブリンだ。

ゴブリンは部族を形して生活するのだが、基本は人間と敵対関係にある。

だいたいの人間はゴブリンを見たら殺せと教わるし、逆もしかりだ。

しかし一方で、人間と友好的な部族もいるという。

どちらかの區別は難しい……

まあ、今の俺は中位魔法を軽々扱える。

窟の中は真っ暗だし、道も複雑。

採掘中に後ろから襲われるなんてことはないだろう。

このまま見捨てて死なれたら、後々罪悪でうなされそうでもある。

俺はすぐに回復魔法リカバリーを、ゴブリンたちに掛けた。

白いがゴブリンたちを包む。

流は止まったようだ。

息の調子も穏やかになったと思う。

専門家じゃないのでなんとも言えないが、回復したのは確かじゃなかろうか？

さてこの後だが……

このままでは彼らは波に濡れてしまう。

やがても満ちてこよう。

も強くなってくるし、窟に寢させてやるか。

まずは……あいつが運びやすそうだな。

ゴブリンの中で、一番小さい者をまず持ち上げる。

人間の児のような大きさで、黒ずんだ緑のをしていた。

も丸っぽく、本當に軽々運べた。

次に、先程のゴブリンよりし背丈の高い者を運ぶ。

葉っぱのような緑のだが、皺も目立つので老人かもしれない。

こちらもやせ細っていて、運ぶのは簡単だった。

そして最後が困った。

ゴブリンは小さいことで有名だが、この者は俺よりも背丈が高い。

しかも筋骨隆々で、ゴブリンよりかはオークを思わせる見た目だ。

どう持ち上げようか……うん？

迷ってると、シエルが自分のを広げ、この大きなゴブリンを窟まで運んでいった。

「いやあ。シエル、助かったよ」

シエルはなかなか察しが早くなってきたようだ。

こうして俺たちは、ゴブリンを三窟のり口に運び終えた。

さて、どうするかな？

俺は早く採掘に向かいたい……

看病の必要が有るならさすがに行けないが、もう外傷も見當たらない。

水と食料はあるわけだし、起きたら勝手に飲み食いしてくれるだろう。

俺の手は自然とピッケルを握っていた。

「シエル……こいつらに何かあったら、教えてくれるか？」

シエルは俺の聲に頷いたりはしない。

だから振り手振りで、なんとなく伝えてみる。

それが上手く伝わったのか、俺が窟を降りても、シエルはその場にとどまってくれた。

……これで心置きなく採掘ができるっ！

俺は今日も、ピッケルで巖壁を叩くのであった。