《【書籍化決定】白い結婚、最高です。》10.最初の仕事
ワンピースもエプロンもサイズがぴったりだった。
働きたいとユリウスに告げたのは昨日。
たった一日でメイド服を用意できるとは……
「オラリア家のメイド長たるもの、このくらい出來て當たり前です」
マリーがむふふ、と得意げに笑いながら言う。
彼のプロ意識に尊敬の念を抱いていると、「ですが、よろしいのですか?」とどこか案じるような聲音で聞かれた。
「新しい環境に慣れるまで、もうし休まれた方がいいのではないでしょうか」
「いえ。かずにいると何だかソワソワしてしまって逆に……ではなく、神衛生上よくないといいますか……」
「……なるほど。アニス様のお気持ちは理解出來ました」
マリーは納得した様子で首を縦に振ると、化粧臺へと連行した。
「念のために、化粧で黒子(ほくろ)でも作っておきましょうか」
マリーは私にうっすらとメイクを施すと、右目の下に黒い點を描いた。
さらに髪を髪留めを使って一本に纏め、最後に四角いフレームの眼鏡を裝著させる。
「……これが私?」
私は衝撃をけた。
化粧臺の鏡に映っていたのはぼさぼさ頭のではなく、地味ながらも清楚な雰囲気漂わせるメイドだったからだ。
「人間、し見た目を変えるだけで印象が大きく変化するものですので」
マリーは平然とした口調で言いながら、化粧道を片付けていた。
「さて、あとはメイドの時に名乗る名前ですね。そうですね、フレイなんて如何でしょう?」
「フレイ?」
「……私の祖母の名前です。申し訳ありません、人の名前を考えるのはし苦手でして」
「いいえ、素敵なお名前です。喜んでお借りさせていただきます」
それに外見も名前も変えて、本當に別人になれたようで心が高揚している。
自分をここまで変させてくれたマリーには謝しかない。お禮を言おうと、彼の方を振り向こうとした時。
突如、ガシッと肩を摑まれた。
「これであなたはユリウス様のご伴から、ただの新人メイドになったわけです」
背筋が凍えるような冷たい聲が、背後から聞こえる。
鏡には、猛禽類が如き鋭い眼差しを私に向けるマリーの姿が映っていた。
「ここからはあなたを一切甘やかしません。いくら泣いても喚いても、容赦しないのでそのおつもりで」
「はい」
何かやらかしたら殺(や)られる。
私はそう悟りながら返事をした。
縦にも橫にも広いオラリア邸。
そこで働く使用人の數も、私の実家の五倍はいるだろう。
私の最初の仕事は、大広間に集められた彼らの前で自己紹介することだった。
「私はフレイ・ダーニットと申します。本日から、このお屋敷で働かせていただくことになりました。よろしくお願い致します……」
最後に深々とお辭儀をすると、灰の髪をおさげにしたがとてて……と私へ近づいて來た。
「ねえねえ、あなたはどんな仕事が出來るの?」
「料理、清掃、洗濯、接客。この辺りのことは出來るかと思います」
どれも経験のある仕事だ。
けれど私の答えを聞くと、彼は何故か困ったような笑みを見せた。
「うーん、またこの手のタイプか!」
そして深い溜め息をつかれる。他の使用人も「またか……」と言いたげな表を浮かべている。
何だろうか、この歓迎されていない雰囲気は。
「ま、いいか。あなたがそう言うのなら、とりあえず今言ったことをお願いしようかな」
「は、はい」
「細かい説明はマリー様から聞いてね。うちのメイド長、怒らせると本當に怖いし、泣き落としなんて通用しないから!」
その本人が私の隣にいるのに、隨分とはっきり言う……
マリーも特に気にする様子もなく、腕を組みながら頷くだけである。
と、おさげのメイドは思い出したように「あ」と聲を出してから、マリーに尋ねた。
「そういえばアニス様のお世話係は、誰に決まったんですか?」
「當分の間は私が務めます。それとアニス様のお部屋には誰も近づかないでください。人とお會いするのが苦手な格のようですから」
「了解です。でもその人って真面目そうなみたいですね。昨日メイドが見かけたらしくて……」
「はい、お喋りはここまで。各自持ち場についてください」
マリーが手をパンッと叩いて強制的に話を切り上げると、使用人たちは慌ただしく大広間から出て行く。
「では私たちも行きましょうか。まずは初日なので、簡単な仕事からお任せしようと思います」
「が、頑張ります」
そう答えた私の聲は、裏返っていた。
いくら様々な職種を経験してきた私でも、高位貴族の使用人は初めてなのだ。張だってする。
【WEB版】身代わりの生贄だったはずの私、兇犬王子の愛に困惑中【書籍化】
11月11日アリアンローズ様より【書き下ろし2巻】発売! 伯爵家の長女ナディアは、家族から冷遇されていた。実母亡き後、父は後妻とその娘である義妹ジゼルを迎え入れ溺愛し、後妻はナディアを使用人以下の扱いをしていた。そんなとき義妹ジゼルに狂犬と呼ばれる恐ろしい王子の侍女になるよう、國から打診がきたが拒否。代わりにナディアが狂犬王子の生贄として行くことになった。そして噂通りの傲慢な態度の狂犬王子クロヴィスは、初対面からナディアを突き放すような命令をしてきた。ナディアはその命令を受け入れたことで、兇犬王子は彼女に興味を示して―― ◇カクヨム様でも掲載 ◇舊題『身代わりの生贄だったはずの私、狂犬王子の愛に困惑中』※狂犬→兇犬に変更
8 74異世界転移は分解で作成チート
黒金 陽太は高校の帰り道の途中で通り魔に刺され死んでしまう。だが、神様に手違いで死んだことを伝えられ、元の世界に帰れない代わりに異世界に転生することになった。 そこで、スキルを使って分解して作成(創造?)チートになってなんやかんやする物語。 ※処女作です。作者は初心者です。ガラスよりも、豆腐よりも、濡れたティッシュよりも、凄い弱いメンタルです。下手でも微笑ましく見ていてください。あと、いいねとコメントください(′・ω・`)。 1~2週間に2~3回くらいの投稿ペースで上げていますが、一応、不定期更新としておきます。 よろしければお気に入り登録お願いします。 あ、小説用のTwitter垢作りました。 @W_Cherry_RAITOというやつです。よろしければフォローお願いします。 小説家になろう&アルファポリスにも出し始めました。 「テト/ライアー」って名前から「冬桜ライト」っていう名前に改名しましたっ!
8 61IQと反射神経と運動神経人外がVRMMOやったら!チートだった件
IQと反射神経と運動神経が人外の少年がVRMMORPGをやったら、ヌルゲーになった話
8 189異世界転移した俺は異世界ライフを満喫する事にした
『異世界転移』 それは男子高校生の誰しもが夢見た事だろう この物語は神様によって半ば強制的に異世界転移させられた男がせっかくなので異世界ライフを満喫する話です
8 170無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。
無能の匠 そんなあだ名を現実世界でつけられていた夢も希望もないダメ主人公{多能 巧}による突然の異世界への転移。 ある日変な生き物に異世界に飛ばされた巧。 その異世界では精霊術、紋章術、降魔術といった様々な魔法の力があふれていた。 その世界でどうやらスゴイ魔法の力とやらを授かったようだった。 現実世界ではなんの取柄もない無能な大人が異世界で凄い異能の力を身につけたら・・・
8 190デフォが棒読み・無表情の少年は何故旅に出るのか【凍結】
特に希望も絶望も失望もなく 夢も現実も気にすることなく 唯一望みと呼べるようなもの それは “ただただ平々凡々に平和に平穏にこの凡才を活かして生きていきたい” タイトルへの答え:特に理由無し 〜*〜*〜*〜*〜*〜 誤字脫字のご指摘、この文はこうしたらいいというご意見 お待ちしていますm(_ _)m Twitterで更新をお知らせしています よろしければこちらで確認してください @Beater20020914
8 60