バスターズの創設を考えたのは、お父様に麥を頂けるようにお願いした時だ。

お父様の、苦蟲を噛み潰したような表……。

私の想像以上にマシラム様との確執は深いものなのだとわかった。

今回はパン屋さんに麥を提供できたものの、本の解決にはなってない。

麥の相場は相変わらずだ。この狀況のまま今ある麥が無くなってしまえば、またパン屋さんは営業できなくなってしまう。

うちだって、そう何度も麥を提供できるわけじゃない……。

というか、あの量を捻出するのにだって……！

わ、私の……私の！　くぅ！

數ヶ月に一度の楽しみであるお母様の手作りケーキが！

食べられなくなるという犠牲を払ってまで手にれたものだというのにっ！

だからこれ以上、もうパン屋さんへ麥の提供はできない。

……かといって、麥を買うことも出來ない。

ならばどうするか？

――造よッ！

マシラム領の農地管理は完璧。集積所で毎年の平均的な作の産出量を把握しているため、こっそりと隠し持つなどの不正をすれば即座に見破られてしまう。

しかし、その産出量の計算には、モンスターや自然災害による被害をも想定した見積りで計算されているのだ。

そこを逆手に取る！

うちは貧乏領地のため、兵士や冒険者を雇ってモンスターによる作の被害を食い止めるのはかなり難しい。……逆を言えば、そのモンスターを退治することができれば、計算に上がらない分の作は自分の領地に隠し持てるということだ。

その為のバスターズよ！

そのために、これから子供たちを徹底的に鍛え上げるわ！

「カリン様、それは何をされてるんです？」

まず子供たちの力量を計るために私が用意したのは……。

グラスに魔法で生み出した水を注いだもの。

「そうね。ちょうどいいわ。あなた、このグラスに手をかざしなさい」

「え、う、うん」

たまたま話しかけてきた年に指示を出すと、言われるがまま彼はグラスに手をかざした。

――そんな年の頭をゲンコツで引っ叩く！

「ウギャッ！　な、なにすんですか！？」

「いいから。グラスをよくごらんなさい」

コツンと叩かれた頭を痛そうに抑える年。

涙目で非難する彼を無視して、皆をグラスに注目させる。

……嘆がれた。

「うわぁ、これ……まほう？」

グラスの中に、ちいさく煌めく赤いが浮かび上がっていた。

キラキラと輝いて、見ていると、ほんのりと暖かい溫度を錯覚する。

「ええ、そうよ。あなたは火の魔法が得意なようね」

ドっと周りから歓聲が上がる。

これは潛在的にどの系統の魔法が得意かを、最も簡単に調べることが出來る測定方法なのだ。

大層な名前で言うと『水見の儀』と呼ばれている。

頭を毆ったのは、魔力作なんてしたことがない素人は、突然の痛みに対してが防衛反応を起こすことで、一瞬だけでも魔力を放出することを利用させてもらったからだ。

さあこれで、まずはみんなの適を見ていくわ！

……そもそも魔法の才があるかどうかも含めてね！

お読みいただき謝でございます。

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