《勘違い底辺悪役令嬢のスローライフ英雄伝 ~最弱男爵家だし貴族にマウント取れないから代わりに領民相手にイキってたらなぜか尊敬されまくって領地かになってあと王子達にモテたのなんで???~》37:おばさまの就職先

――ウエストパイン領東部の森。

私達は、やっきになって獲を追い回していた。

高い木々が生い茂る森の中は晝だと言うのに薄暗く、そしてそこを城にする魔達のまあ……ウザったいこと!

「待ちなさいよこのっサル!」

「カリン様、あまり深追いしては危険です!」

「分かってるっ! あっ! あーっ! くっそー! 逃げられたわ!」

枝から枝へと縦橫無盡に飛び回る憎ったらしいサル型の魔は、「キキキィー!」と吠えながら暗闇へと去っていってしまった。

ちっ! あともうしだったのに!

悔しさに地団駄を踏むと、そそくさとアルクが勵ましにやってきた。さっき私に「追うな」と咎めたせいで逃がしたのかと思っての行かもしれない。

「ご、ごめんなさいカリン様……でも、目的は達出來たことですし、一先ずはこの辺りでよろしいのでは?」

……そうね。今回の目的は、あくまでも森の生態調査。

様々な種類の草花の採取と、どのような魔が出現するかをリサーチすること。できれば魔も倒してそれを持ち帰ってくるのがましい。

これが冒険者となった私達の最初の任務だった。

の討伐が二の次なのは、あくまでも新米冒険者の適正審査も兼ねての任務だからだ。

この森の魔とどの程度やり會えるか。また、どの程度の調査能力を有しているか。

この任務の出來次第で、今後の評価が変わってくる。

だから魔は見つけ次第、一匹殘らず倒したかったのだけど……まあ、仕方が無いわね!

「俺もアルクに賛っすよ、カリン様! というかあのサル……逃げてったあいつ以外の群れは全滅させたじゃないっすか!」

そう言ってアルクを庇うのは……筋の主張がやかましい日焼けマンのカント!

本當はバスターズの剣最強であるハイレンを連れてきたかったのだけれど、その座を奪って、彼がウエストパインでの冒険者活のお供とすることとなった。

本人の強い意志もあるけれど、これはお父様の勧めでもあった。

「彼はなにか、とてつもなく大きな壁を乗り越えたようだね。いい面構えだよ。……彼がカリンちゃんの傍にいれば、僕も安心なんだけどねえ」

と、いうことで、お供はハイレンとチェンジ。

二人とも連れていくことは難しかった。単純に資金不足だし、二人もバスターズの主要人が抜けるのは子供たちが揺してしまう。

また、お父様からはなんと……!

メンバー全員、數日は無給でも生活出來るくらいのお金を頂戴したっ!

「おっと、勘違いしないでよ? これはあくまでも我が娘の路銀だからね。……まあ使い方はカリンちゃんに任せるけどねえ」

貴族としての立場を守りつつ、最大限の援助をしてくれた。お父様には謝しかないわ。

「あーあ! 疲れましたわね!」

そんなわけで日も暮れかけたところで、探索を終えてウエストパインの宿へ到著っ!

任務の達は冒険者斡旋所(ギルド)に報告したし、取り分も即金でゲット! 幸先がいいわ。

「みんな、おかえりなさい。お部屋の掃除は一通り済ませておいたからね」

出迎えてくれたのは、元パン屋のおばさま……バーバラおばさま。

の言う通り、初めに宿をとって案されたこの部屋はクモの巣やホコリがまあまあ気になったけど、今はきれいさっぱり、見違えたわね。

「もう、なにやってるのよ。ゆっくり休んでなさいって言ったじゃない」

「うーん、でも、がうずいちゃって。ご迷でしたか?」

「まさか! とても居心地がいいわ! ありがとうバーバラおばさま。でも、あなたは……これから大事な仕事があるんですからね」

「……はい」

そう。事の発端は私のせいなのかもしれないけど、おばさまの借金を返すためにこんなところまで來た……ということを、おばさまにはしっかり自覚してもらわなくてはね。

夕方のこの時間から、今度はおばさまの仕事が始まる……。

「カリン様……その、そろそろ、お腹すきません?」

そうね。カントが空腹を訴えてきたことだし、そろそろおばさまを仕事場に送り屆けるついでにご飯にしましょうか。

「そ、それじゃあ……がんばってきますねっ!」

「ええ、しっかりご奉仕してきなさいっ! 初めてで最初は上手くいかなくても、誠心誠意をもって謝れば貴族の方々は許してくださるわ!」

「は、はい!」

こうして、おばさまはこれからの働き口であるお店の中へと消えていった。

そうね!

貴族用達の高級料亭の下働きよ!

お父様がたいへん無理を言って、そこになんとか就職先を斡旋してくれましたわ!

さて、私達も近くのやっすい酒場でお食事でもしましょうか。

お読みいただき謝でございます。

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