《世界最強はニヒルに笑う。~うちのマスター、ヤバ過ぎます~》クランハウス③

反省しているかいないのか、キヨシの微妙な基地の歌を聞きながらハウスへ戻り、宗乃助の言う三階に向かった。

二階の踴り場でキヨシが走り去っていくのを見送り、三階へ到著すれば自分の選んだ部屋の扉の前で手を振る宗乃助を発見する。

[[ren] お待たせ]

[[宗乃助] いいでござるよw]

選んだ部屋は、黒の部屋の正面だ。部屋の広さはティタと同じぐらいだろう。気長に待つつもりだったらしい宗乃助にごめんねと伝えつつ、壁際にあるタッチパネルを作して権限を宗乃助に與えた。

[[ren] 終わった]

[[宗乃助] ありでござる]

やはり皆、自分の部屋を持つのは嬉しいらしく、早速模様替えを始めている。そんな彼に手を振り部屋を後にする。

殘るは、選び直しのキヨシと、まだ部屋が決まっていないヒガキさんと先生だが……未だ聲は掛らない。

焦ることでもないので、のんびり一階の自分の部屋をいじるつもりで階段を降りた。

[[キヨシ] ren。とりあえず決めた―!]

[[ren] うい]

二階から一階に向かっていた私を再びキヨシが呼び出した。降りかけていた足を翻し二階に戻る。

L字型の廊下を歩き白達の部屋の奧に進めば、その廊下の突き當たりにあたる一番奧、基地の上あたりになる部屋をキヨシは選んだようだった。

[[キヨシ] ここにしたぜ~!]

[[ren] うい]

基地側に出窓が設置された部屋にり、壁にあるタッチパネルを作しキヨシに権限を與えた。

終わったと伝えるより早くキヨシがき出す。

しだけ不安を覚えその様子を無言で見つめていた私の前で、キヨシは座りこみアイテムボックスから取り出したロープのような紐を取り出し、それを用に編みはじめた。

「何してるの?」

「んー。これで紐梯子作ろうと思って!」

取り出したロープを編み込み梯子を作ると言うキヨシ……その行は素晴らしいとは思う。

けれど……その長さじゃ明らかに足りないのでは? と思った私はついポロリと事実を伝えてしまった。

「キヨシー」

「ん?」

「それ……無理じゃない?」

「いや、大丈夫! 超・頑丈☆ に作ってるから!」

「あぁ、うん。頑丈さは大丈夫だとは思うけどさ……長さ足りなくない?」

「……ぁ!」

頑丈に作る為4本編みにしたのがあだになってしまったと言うべきだろうか……二本編みならなんとか足りたであろうロープの長さが足りない事に漸く気付いたらしいキヨシと視線が絡む。

非常に嫌な予を直的にじると同時に橫を向き扉に向かって足早に退室しようと試みた。

しだ……そう思いつつ扉に手をかけ締めようとしたところで、キヨシが締めかけた扉に手をかけ隙間に足を挾み込みそこから私を覗く。

その姿たるや、訪問販売で訪れた保険屋さんが、実はホラー映畫幽霊でしたと言われたようで非常に恐ろしい!

「ren……ゼル、貸して?」

「やだ!」

「頼むよ~!」

「絶対嫌!」

「ren~!」

扉を挾み、お互いに扉を押し合う形になった。ジリジリと扉を開くキヨシ。

必死に、両手で扉を閉めようとする私。そんな私たちの様子を遠目に目撃したメンバーがいた。

[[白聖] お前ら何やって……]

[[ヒガキ] マスター、決めました!]

[[ゼン] どうしたんですか?]

「頼むよ~ren~」

「絶対に嫌!」

[[黒龍] どうした?]

[[白聖] いや、キヨシとrenがさ……]

[[ゼン] なんか、キヨシ君……。

浮気して別れるって言う彼を引きとめてる男みたいに見えるw]

[[ティタ] キヨシとrenがどうしたの?]

「なー? 俺の基地の為に投資して?」

「……ヤダ」

[[宮様] 浮気男ww]

[[さゆたん] 見に行くでしゅよw]

「たーのーむー!」

「ノー」

「ほら、俺の基地超かっこよかったろ? だからさー」

[[宗乃助] 借金の申し込みw]

「まだ、貸した分1ゼルすら返ってきてないからダメ!」

[[†元親†] 俺にもゼル貸して―!]

「頼むってー。俺を捨てないで―」

「捨ててないし……嫌なものは嫌!」

「嫌も嫌も好きのうちって言うだろー?」

「知らないし……リア彼に借りなよ」

「もう既に、斷られた!」

「彼が投げたものを私から借りれると思うなww」

[[大次郎先生] キヨシ、チカ……ちょっと話ししようか?]

目撃したシロとゼンさんのクラチャを聞きつけた黒が見に參加する。ゼンさんの不用意な発言を聞きつけた、ティタと宮ネェ、さゆたんが姿を見せた。

キヨシと私の押し問答を、堂々と見るメンバーたちの嬉々とした聲を聞いた私は、押し問答を止め扉を放しダッシュともとれる勢いで、部屋が決まったと報告したヒガキさんの言う三階に向かう。

その橫を同じ速度で歩くキヨシが借金の申し込みを続けた。

二階の階段の踴り場で、すれ違った宗乃助が會話を聞いていたらしく、クラチャで會話の容を皆にバラし、未だ部屋を選んでいたはずの先生が青筋の浮かんだ顔で、キヨシのローブを摑みお話と言う名の説教が始まった。

そのままキヨシを先生に任せ、ヒガキさんが待つ三階に駆け上がった。

ヒガキさんの選んだ部屋は、黒の部屋と同じく二間続きの部屋だ。壁にあるタッチパネルを作して、ヒガキさんに権限を與える。

新人の自分が申し訳ないですと言いながら、その理由を説明してくれた

元々手先が用だったらしいヒガキさん。

三次職になれば大金が必要になると野良で言われ、知った彼は三次職になるまでにお金をためる事を決意したらしい。

一次職、二次職で三次職の裝備を買う為のお金を貯める為には、生産をやるしかない。

このゲームで生産は、職業として設定はされないし出來ないものの、NPCに弟子りしクエストを行うことで、そのNPCの技を學ぶ事が出來る。

それをプレイヤー間では、代行や裏職業と呼んでいる。

例えば、鍛冶屋で武や防を作ると仮定する。

NPCの場合、功率は99%

材料の量は代行の二倍。

支払うゼルは、運営の設定した値段。最低でも10M~となる。

代行で行う場合、功率は60%

材料の量はNPCの半分

支払うゼルは、代行プレイヤーが指定した料金を支払うことになる。

メインの武や防を生産する際、メインだからと皆、NPC鍛冶屋を使う。

けれど、お金が無いプレイヤーや、材料を集めきれないもしくは出し惜しみするプレイヤーは、代行を好んで使う傾向にある。

実際功確率が60%ならば……代行で試してみるのもありなのかもしれないけれど……私はやらない。キヨシ、チカ辺りは好んで使うだろう。

私が武を作ることは無いだろうが、メンテナンスが格安で出來るのは非常にありがたい。

他のメンバーにとっても同じ事だろうと思い、工房を作る為に必要な費用をクラン費で出すよとヒガキさんに伝えクラチャで報告をれた。

[[キヨシ] ごめんなさい]

[[ren] ヒガキさんが、鍛冶屋代行できるらしいから

クラン費から工房用の費用出す]

[[†元親†] ごめん……本當にごめん……]

[[ティタ] ren> マジ?]

[[宗乃助] おぉ! ありがたいでござる!]

[[さゆたん] それは凄いでしゅ!]

[[宮様] あらじゃぁ、私の方も費用出して~しい~w]

[[黒龍] おー! メンテ無料?w]

[[ren] 宮ネェのは前の全部取ってあるけど新しいのがいい?]

[[大次郎先生] 黒。無料は無いよw]

[[ゼン] 代行かー。僕も覚えようかな?]

[[宮様] あら、あるのね。じゃぁそれでいいわ~♪]

[[ティタ] 宮ネェ、細工師やんの? それなら頼みたいんだけどw]

[[ヒガキ] いえ、無料でいいですよ?]

[[大次郎先生] ren。三階のヒガキさんの隣。俺の部屋にしといてw]

[[さゆたん] 無料はだめでしゅよ! 稼げるとこは稼がないと]

[[ren] うい]

説教されていたらしい二人が反省の言葉を上げる。

代行の話を振れば、宮ネェも細工師の代行をやるようで資金がしいと訴えた。宮ネェが代行で覚えたものは、アバターの裝飾品の見た目を変える金屬関係の細工だ。

確率は鍛冶屋の代行と同じだが……細工師は、失敗する=消失ではなく。出來あがったアイテムがただ、曲がったりくねったりする……だけ。

消えないだけ良いと言うメンバーも多いが……私の考えではただのゴミでしかない。

ヒガキさんの部屋を後に先生の部屋を設定しに行く。

壁のタッチパネルで先生に権限を與え、漸く全員部屋が決まったと一安心しつつ、一階の自室に戻りキャラを変更する。

キヅナと卑彌呼の殘したベッド、宮ネェの細工師用の家類と自分の部屋用の家やクラン用の家を倉庫にれ込みrenに戻る。

ブラックアウトする視界の中で、非常に大事な事を忘れていたのを思い出し視界がクリアになると同時に、急いでNPC雇用組合に向かった。

足を運んで頂きありがとうございます。

今日はし更新が遅くなりました。申し訳ありません。

お気に召しましたながらブックマークなどをどうぞよろしくお願いします。

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