《吸鬼作家、VRMMORPGをプレイする。~日浴と料理を満喫していたら、いつの間にか有名配信者になっていたけど、配信なんてした覚えがありません~》15.パーティってなんですか?
ゲーム時間の1日は現実時間で8時間ですが、的な計算方法は
20秒で1分=20分で1時間です。
8時間で24時間の計算です。(あってるかな)
NPCが基本的に夜は寢てしまうので、夜しかログイン出來ない人などを配慮した結果そう言うシステムになったようです。
「そう、良いじだ。何だお前、思ったよりも飲み込みが早いな。ぼやぼやしてるからもっと勘の方も鈍いかと思っていたんだが」
「ぼやぼやは余計ですけど、褒められるのは嬉しいものですね」
にこにこと笑いながら僕が答えると、師匠(シモン)は面白く無さそうに鼻を鳴らした。
日曜日の夜、僕は早速、貰った紹介狀を持參して、王都の魔師のところを訪ねた。今は現実世界では火曜日の夜。無事に弟子りして、ゲームではおよそ六日と言ったところか。
口では割と人のことを馬鹿にしたような言いをするけれど、追い出すでもなくしっかり教えてくれている辺り、はとても良い人なのだろう。
本來はもっと基礎的なことを學ばなければいけないようだけれど、「今は対アンデッドの為に手っ取り早く焼き盡くせる方法を學びたい」、と言った僕の意を汲んだ指導をしてくれていて、本當に謝してもしきれない。
「本來はこうやって魔法の型を教えるのはご法度なんだ。絶対にアンデッドのいざこざが終わったら今回教えたことは忘れろ、良いな。再度基礎から學び直させてやる」
シモン曰く、魔法の本は想像力であり、それが欠如している者は、保有している魔力が多くとも上へはいけないらしい。
僕が今教わっているのは、魔法の型。つまり、よくあるファンタジー小説とかで出て來る、完された魔法の技のこと。最初にこういうものを教わってしまっては、型通りの魔法しか使えず、想像力が育たない為ご法度なのだと言う。
師匠の言うことはもっともだと思う。例えば、よく聞く「アローレイン」とか。狹い、窟のような場所で使おうとしても、上から大量に降るような「アローレイン」は上手く発出來ないだろう。
普段からそんときそのときの狀況に合わせて想像力で魔法を行使していれば、こういった事態は防げる。師匠はそう言いたい訳だ。
「師匠、質問なのですが。先日魔法もどきを発したんですが、冒険者ギルドのマスター曰く、神聖魔法のようだと言っていました。強く願うことが神聖魔法だと言っていましたが、的にはどのような違いが?」
「別に違いと呼べる違いはない。教會に居るお偉方は「神聖力」なんてものがあると吹聴して回っているが、実は魔力だ。要するに、魔法の発者が何をどうしたいか、想像した結果であることには変わらん。強い魔法をぶっ放したいと思えば攻撃力の高い魔法になるし、誰かの怪我を治したいと思えば神聖魔法と呼ばれるものになる。それだけだ」
「じゃあ、よく聞く……生まれつき相が良い屬魔法があったりとかは?」
「なんだそれ? 聞いたこともないな。まあ、相と言えば相か? 例えば火を怖がるやつが、魔法を使うときに火魔法なんか使わないだろ。そう言う意味では相があるかもしれないが、基本的にひとつの屬の魔法しか使えない、なんて決まりはない」
「じゃあ、今師匠から教わっているこの型も、火じゃなくて風とか、それこそアンデッドを浄化したい!とか願いながら行使すれば、神聖魔法が発するってことですか?」
「お、良い考え方だな。そう言うことだ。だから型に囚われるなと言っているんだ。
手っ取り早くお前がアンデッドを燃やしたいと言ったから火魔法の型を教えたが、別にこの型で神聖魔法をぶっ放してアンデッドをこそぎ浄化したって良い訳だ。まあ、神聖魔法なんてものは結果しか目に見えないからな、火魔法で燃やす方が功率もあがるだろうが」
なるほど、つまり基礎の基礎、魔力をじるところまでのハードルは異常に高いけれど、それさえ出來てしまえばあとは想像力次第でどうとでも出來るってことか。もしかして魔師かなり強いのでは?
あ、でもそもそもの大前提を聞いていなかった。
「魔力の量って生まれつき決まっているんですか?」
「まあある程度は決まっていると言えば決まっているが……。それは途中で諦めるからだな。
絶対的にこれだけ、と決まっている訳ではなく、びる速度に違いがあると言った方が正しいかもしれない。
例えば、素質があるやつと素質がないやつ、始まりの魔力量が同じで、毎日同じだけ魔法の練習をしたとする。五日後にどちらの方が魔力の量が多いかと言えば、素質があるやつだ。
素質がないやつは、魔力の量が増えるまでにえらい時間がかかる。だから力の差が開いていく。どちらも努力を怠らなければ、素質のない方は、一生相手に勝つことが出來ない。
けれど、素質のあるやつが自分の才能にあぐらをかいて練習をしなかったとする。素質がないやつは諦めずに毎日努力を続けていたとすれば……十年後には素質のない方が魔師として大しているだろう」
なるほど、努力は裏切らないってことか。まあ、その辺りは勉強とか剣とかも一緒だよね。
「素質のあるやつが比較的多いのがエルフと言う種族だ。反対に、ドワーフは素質がないやつが多いな。
同じ種族の中でも天と地ほどの差があるから、一概には言えないが。
人間は比較的普通だ。よくも悪くも努力さえしていればまあまあ良いところまで行くやつが多い。
まあだがエルフと比べたら絶対的に壽命が短いからな。どこまでいけるかと言えば……察してくれ。
あとは見た目にも現れるらしいな。統計學的には、黒髪黒目に近い者のが魔法の素質が高いと言われている。お前みたいな、な。
よし、じゃあ今日はここまでだ。帰っても復習しろよ。あと想像力を鍛える為に、んなものを観察しろ。も生きも関係無くとにかく片っ端からな。無から有を生み出すより、既に知っている有を再現する方が早いからな」
「分かりました、今日もありがとうございました。また明日、いつもの時間に來ます」
§-§-§
「いらっしゃ……お、蓮華くんおかえり。夕飯食べるかい?」
「ただいま戻りました。是非お願いします!」
僕はもう、この店の洋食がないと生きられないにされてしまいました。
冗談はさておき、店にった瞬間から何やら視線をじる気が……。ギルドはともかく、ここ(エリュウの涙亭)でこんなにあからさまな視線をじることなんてなかったんだけどなあ。
なんて思っていたら、視線の主がこちらに一直線に向かってくる。ものすごく顔が怖いんだけど。決闘? 決闘申し込まれちゃう?
「あの! 蓮華さんですよね?」
「あ、はい。僕のことを知ってるんですか?」
「そりゃ貴方有名だもの……あー、アンデッドの件で」
「ああ、る程……? それで、僕に何か? 決闘ならお斷りです」
「決闘? 別に貴方とやりあいたくて話しかけた訳じゃないわ。
ただちょっと……取引を持ちかけに來ただけよ。それにしても貴方本當にNPCなのね」
「え? あー、そこも有名になってるんですか? お恥ずかしい限りで……どうもコクーンの不合みたいです。修理が結構かかるみたいで、それまではNPCのままですね。
それで、取引って何でしょう? 立ち話もなんですから、座りましょう。あ、夕飯は食べましたか? こちらのお店の洋食は絶品ですよ!」
そうしてこの店の売り上げにしでも貢獻するのだ! 潰れたら泣くからね、僕が。
「あ、ありがとう。そうね、えっと、本日のシチューにするわ」
「ジョンさん、ここシチュー一つ追加でお願いします! ……それじゃ、まずは自己紹介からしましょうか」
「あ、そ、そうね……突っ走りすぎたわ。私はヴィオラ。人間族でメイン武は弓。あとは調合でポーション作ったり」
「知ってるみたいだけど、僕は蓮華。人間族でメイン武は長剣。本當は刀がしいところだけど金欠で……。まあ、その剣もアンデッドの一件で壊れちゃったから、今は骸骨さんの腕を借りてます。あとは魔師に弟子りして、魔法の勉強中です」
「本當に當たり前のようにスケルトンの腕を腰に差してるのね……。
まあ、自己紹介も済んだし本題にらせて貰うけど……私とパーティを組まない? 弓だけじゃ近寄られたら厳しいし、接近戦が得意な人とパーティを組みたいのよ。
見返りは私が作ったポーション。NPC狀態で死んだら面倒くさそうだし、そんなに悪くない取引だと思うんだけど」
「不勉強で申し訳ないんですが……そもそもパーティってなんですか? いや、概念的なものは読んでた小説に出て來てたしなんとなく分かるけど、このゲームってキャラクターレベルとかない、ですよね? 組むメリットってなんだろうって一応確認しておきたくて」
「ゲームの知識を小説から得てるってなかなか斬新よね……じゃなくて……そうね。このゲームでパーティを組むメリットは大まかに二つ。
一つは、相手が上げている練度を、自分もしずつ貰えること。例えば私が貴方とパーティを組んだ狀態で弓を使ったら、貴方にも弓の練度が若干る。勿論、自分が使ってる訳じゃないから、あくまでもし、だけどね。戦闘系だけじゃなくて、調合・料理などの生産系統の練度も含まれるみたいね。
多分、見てるだけでもなからず理解度も上がる……とかそう言う考え方じゃないかしら。まあ不思議なことに、パーティを組んでいないと他のプレイヤーのきを見ても練度は上がらないけれどね。
二つ目が、冒険者ギルドでのメリット。依頼をけるときの手數料は、一律依頼料に対するパーセンテージで計算されるから、パーティでけた方が割り勘出來て安くなる。勿論その分、報酬も割り勘になると言うデメリットもあるけどね。
それと、ソロよりもパーティの方が依頼がけやすい。一つの依頼に対して冒険者が殺到した際の基準として、功率を考えてソロよりはパーティの方が選ばれやすいわ。勿論、実力に対して難易度が低い依頼なら関係無いでしょうけど。
あとはまあ、私がだから、の護衛依頼とかけやすくなるかもしれないわね。は舐められやすいって言うのもあるから、私にとっては貴方が居てくれると逆に助かるけれど。
これはあくまでも風の噂だけれども、パーティの方がランク上昇の評価に有利、とも聞いたわ。あくまで噂だけれどね。
これで答えになったかしら?」
うーん、パーティのメリットは分かった。けれど、彼が突然僕に聲をかけてきた理由は全く見當もつかないなあ。
「メリットは分かりました。でも何故僕なんですか? 近接系を主武としてるプレイヤーなら他にもたくさん居るかと思いますが」
「それは……単純に面白そうだと思ったからよ。今回の王都クエストだって、多分本來はもっと別な筋書で発覚してただろうし。貴方の側に居ればその型破りな行で想像出來ないことが起こりそうだってね」
これが本心なのかは不明だけれども、なんかとんでもない期待をされている気がする。と言うか、僕は単純にプレイヤーに知り合いがいないし、メインクエストとやらもけていないから、NPCと仲良くなって依頼をけたりしただけ。型破りな行なんて一切した覚えはないんですが?? 地味に失禮だな。
「はあ、まあそれだけが理由って訳じゃなさそうですけど……。
死亡時の取り扱いについては、コクーンの修理が終わるまではGMが特別に蘇生してくれるようです。なのでまあ心配には及ばないですが……確かにGMの手をわずらわせるのも申し訳ないので、ポーションの類を貰えるのであれば助かります。
そうですね、じゃあ今回の王都クエストが終了するまで、臨時でパーティを組みましょう。正式に組むかどうかはそれまでに決めると言うことで、どうですか?」
「分かったわ、じゃあそれで。フレンド申請……は出來ないわね。ウィスパーチャット……も無理だから、毎日ここで待ち合わせする形? でも貴方今魔師に弟子りしてるのよね? どうすればいいかしら」
「どうせなら明日、師匠のところに一緒に行ってみますか? もし他に用事がなければ、ですけど。パーティさえ組んでいれば私が魔法を學んでいる間、ヴィオラさんの練度も若干上がるんですよね? 今のところ魔法を使うご予定はないかもしれないですけど、練度は上がったからといって困らないものですし」
「そうね、そうするわ。ところでっておいてなんだけど、NPCの貴方とパーティ組めるのか分からないのよ。今ちょっと試してみても良いかしら?」
え、まさかのそこから? 結構自信満々でってきたから何かしらの確信を持っているのかと思ってたんだけど。
「ど、どうぞ……でもご存じの通り、僕はメニュー的なものは何も使えないですよ?」
「うーん……護衛のときとか、臨時でNPCとパーティ組んでいたから、口答でいけるかなってちょっと思ってて。えーと、蓮華さん、私とパーティを組んでいただけますか?」
「はい」
「あ、來た。こっちの畫面ではちゃんとパーティを組めているわ。ログアウトしても維持はされるから、これで貴方の現在地は分かるし……一応明日もここに來る予定だけれど、遅れたら直接魔師のところへ向かうわ。それで良いかしら?」
「分かりました、ではそれで。一応、いつもゲーム時間で朝八時にここを出ています」
「そ、分かったわ。それにしてもここの料理、味しいわね。出発前に朝食も食べられるかしら?」
お、なかなか見る目が……いや、見る舌が?あるなあ。早速ジョンさんの虜になってる。夕飯にったかいがあったなあ。
「六時からオープンみたいなので食べられますよ。モーニングは焼きたてのパンも出るので是非」
「良いわね……明日は早めに來るわ。ところで、今日これからの予定は? 貴方さえ良ければ何か二人で依頼をけない? と言っても王都クエストの影響で、まともにけられる依頼は西の食調達くらいでしょうけど」
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あと、誤字指摘いつもありがとうございます。
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