《闇墮ち聖の語~病んだ聖はどんな手を使ってでも黒騎士を己のモノにすると決めました~》第三十二話『聖の覚悟』
ドラゴンが消えた事により霧が晴れる。
「瘴気の消失を確認、當方らの勝利だ!」
塔の頂上から、外を見渡すとヴェヌス達は歓喜の表を見せた。しかしその中に置いてディアーナだけは険しい顔をしていた。
(.....そうか、西側の瘴気全てがディアーナへと収束されたのか。)
ドラゴンが司っていた瘴気はディアーナへと還元される。この事実は本人とディアーナの過去を知る黒騎士しか知らない。
「やりましたね、聖様!」
シアリーズが嬉しそうにディアーナへと聲を掛けるとディアーナはを押さえながら微笑を見せる。冷や汗をかいていることから無理をしているのは明白だ。しかしそれを悟られないようにシアリーズへと言葉を返す。
「人の生きる未來を繋ぐ事が出來たのです。けれどまだ安心するには早いでしょう。」
聖は杖を大地につけ、上手くが倒れないように固定する。
「シアリーズ、西方向一帯の霧は確かに消えました。しかし、我々は更なる調査をしなければなりません。」
遙か先に見える大陸を指差すディアーナ。眼では見えないが魔力を通して目を強化すれば分かる。瘴気は完全には消え去ってはいないのだ。ヴェヌスらは笑みを捨て霧を睨みつけた。
「______まだ、戦いは始まったばかりだと言う事だな。」
マールスの言葉に一同は神妙な面持ちとなる。
「あぁ我々は陛下の前に立ち塞がる埃、霧を完全に振り払わなければならない。」
ヴェヌスの発言に帝國の人間らしい考えだとマールスは心で笑う。
「あれ、聖様?」
シアリーズはいつの間にかその場からいなくなっていた聖に気づく。周りを見渡すが姿が見當たらない。恐らくは苦痛の限界が來たのか、螺旋階段を下ったのだろう。
「用を足しにでも行ったのではないかね。」
「シネ」
シアリーズはダイレクトにレムスに対し死ねと言う。
(ディアーナ..........)
今頃は瘴気の呪いにを犯される覚に襲われている筈だ。
(痛みを皆に見せないように最後まで聖として暗躍する事を選ぶか。)
黒騎士は剣を鞘に戻し、晴れた空を見上げる。聖としてのディアーナを間近で見てしまい、このまま放置して元のディアーナに戻すべきなのかと疑問にじてしまう時がある。あの聖の経歴、そして立ち振る舞い、掲げる大を知っている故に同のがなからずじてしまう。
(______殘る塔は三つ。そして全てを落とした後に【骸の魔】が中央の魔界門(中央塔)から現れる。)
黒騎士はヴェヌス達を一瞥すると拳を握りしめた。
(はぁ、駄目だな。俺はいつもいつも人のにれて優不斷な決斷をしてしまう癖がある。)
心を鬼にしなければこの世界を、ディアーナを【自分のいる世界】へと引きずり出す事は葉わない。
(ヴェヌスも、マールスも俺の手でいずれは............)
言葉が詰まる。短くはあるが共に戦い、食事もした。
_______戦友だった。
■■■■■の時と同じく親しい者を此の手で、いや今回は間接的になるが殺さなければならない。
「俺達も行こう________ドラゴンが倒された事でこの塔の崩壊が始まっている。」
時間はまだある。考えよう。
「あがあああああああああああああああああああああ、はぁ、はぁ、うあああああああああああああああ」
頭がが全てが痛む。まるで側から針金で突かれているような鋭い痛みが全を襲う。
『コロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセ______________ニンゲンヲコロセ』
頭に常に鳴り響く聲、そしてその言葉の通り人間に対しての殺人衝が増幅するのが手に取るよう分かる。
「黙れぇーーー!!私は世界に平和を齎す聖!!決して闇には屈しはしない!!」
頭を振るい瘴気の意志へと反抗する。
『ウケイレルノダ』
『セカイハシンニヘイワナドニハナリワシナイ』
『ジンルイガキエルマデハ』
『死ダケガセカイヲスクウ』
『コロセ』
『スベテヲ』
『ディアーナ』
『シンノエイユウトナルノダ』
聖は手を地面へとつけ息を荒げる。
「........うぅ」
頭に響き続ける瘴気の意志。ディアーナは涙を流す。しかし聖としてこの瘴気を自に封じ込める事こそが使命であると言い聞かせ絶だけはしなかった。
(私だけがこの役目を果たす事が出來る。)
16歳と若いがけ持つには余りに大き過ぎた運命。しかし、其れを投げ出すと言う考えは彼にはなかった。
「世界にを齎す者として闇の災禍は私が死するときまでけ持ちましょう________世界に安寧を屆ける為に。」
何故ならば彼が【聖】であるから。
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