《旋風のルスト 〜逆境の傭兵ライフと、無頼英傑たちの西方國境戦記〜》逃走失敗と接敵 ―死にものぐるいのはじまり―
そこから敵の行はとても速やかだった。
背後から敵が迫っている。その現実に全員が気持ちを一つにしていた。
私たちは雑魚の集まりだ。
経験の淺い駆け出しと若造と、
いまいち本気度のない中途半端な中堅、
そして私、
それが傭兵ギルドの募集告知を目にしてたまたま同じ場所に集まっただけにすぎない。しかし、どんな任務に応募しても同じだ。自分以外の他の傭兵たちとその場限りの即席のチームワークを作って任務を遂行するしかないのだ。
しずつ頭上が暗くなり始めていた。夕暮れが近づいている。狀況がさらに悪化、日が沈んで真っ暗になればここが敵のテリトリーであることを考えれば私達の方が圧倒的に不利だ。
否、絶的だ。
それでも私たちは生き延びなければならないのだ。自分自のために。
黙々と道を歩いていた私の耳に草れのかすかな音が聞こえる。
それは〝死の予兆〟
私はんだ。
「周囲警戒!」
その言葉に全員が一斉に武を取る。その時の様相を私は瞬時に読み取る。
「牙剣持ち4人、弓1名、槍1名、大杖1名――」
私は問いかける。
「〝武〟持ちは?」
その問いかけに槍持ちと杖持ち、さらに牙剣持ちが一人、反応した。私は問う。
「この中で一番足が速いのは?」
一番細な牙剣持ちのが手をあげた。
「私です。風系の武で加速移ができます」
そう言いながら彼は右腰に下げた小ぶりなナイフのような武を取り出して見せた。真剣な表の彼に私は託すことにした。
「一人先行して麓の村まで連絡してください。そして村の責任者に市民義勇兵の急員を依頼してください。可能であれば正規軍の軍人に連絡を取り軍の員もお願い致します」
彼ははっきりと頷いた。
まだあどけなさの殘る雰囲気の彼だが、今ならば信頼できるかもしれない。
「了解、直ちに向かいます」
そして彼は一人離れると聖句を口にした。
「駆! シルフィードの飛翔!」
〝駆〟がアイテムの能力起の合図で、その後に固有能力を象徴するキーワードが詠唱される。
それが私たちの民族固有の霊科學アイテム〝武〟の使用の際のセオリーだ。
ミスリル素材と、使用者の認識の中の作理論、そしてを発させる際のキーワード、この三つでり立っている。
連絡を依頼したあの彼も自らの周囲に風を纏いながらものすごい勢いで一気に離れていった。右腰に下げたナイフ型のアイテムがその持てる能力を憾なく発揮している。
さて次はこちら側の態勢づくりだ。
私は宣言する。
「二人一組で行してください。その際、遠距離攻撃能力者と近接戦闘能力者でペアになること」
私のその言葉に一人の男が言う。
「遠距離主で攻撃して、もう一人が周囲警戒と防役に徹するわけか」
理解してくれる人がいると話が早い。
「そうです。敵に接近を許さず數を削り、その間に退路を確保します」
先ほど気の抜けた返事をしていた彼が聞いてきた。
「あんたはどうするんだ?」
「私は単獨行を取ります。おそらく襲撃者にも指揮系統があるはずです。その要となっている人を探して叩き潰します」
狀況としてはこれしか考えられない。
私を含めた7人が一斉に展開して戦闘を行っても個々の戦闘能力が低いから犠牲者の発生は避けられないだろう。
ならば二人一組とすることで生存の可能を上げられる。私一人なら持っている能力をフルに駆使すれば敵の撃破は可能なはずだ。
あの筋質のの彼が言った。
「生存の可能を最優先して、その間に救援を待つわけか」
「そうです。逃げ切るのが不可能ということであればそれしか手はありません。ですが!」
私は一際強く大聲を出した。
「連絡役に向かってくれた彼を信じましょう。彼の武の能力なら時間的な問題は解決可能です」
足で走って行くなら間に合わないが、武の力を借りれるのであればまだまだ可能はある。
「生き殘りましょう! それが私たちに生き殘るチャンスを作ってくれた部隊長の意思に報いる唯一のものです」
皆が頷いてくれた。そこにはもう気の抜けた雰囲気はない。経験が淺いとは言え彼らも立派な職業傭兵なのだから。
その場で即興でペアが作られる。周囲に展開して戦闘準備が完了する。
私も腰に下げていた用の武をあらためて手にした。
私はんだ。
「戦闘準備」
「了解!」
全員で揃った聲が聞こえる。さぁ〝死に狂い〟の始まりだ。
じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出身の魔導士、通訳兼相棒の新米回復術士と一緒ずてツートな無詠唱魔術で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】
【2022年6月1日 本作が角川スニーカー文庫様より冬頃発売決定です!!】 「オーリン・ジョナゴールド君。悪いんだけど、今日づけでギルドを辭めてほしいの」 「わ――わのどごばまねんだすか!?」 巨大冒険者ギルド『イーストウィンド』の新米お茶汲み冒険者レジーナ・マイルズは、先輩であった中堅魔導士オーリン・ジョナゴールドがクビを言い渡される現場に遭遇する。 原因はオーリンの酷い訛り――何年経っても取れない訛り言葉では他の冒険者と意思疎通が取れず、パーティを危険に曬しかねないとのギルドマスター判斷だった。追放されることとなったオーリンは絶望し、意気消沈してイーストウィンドを出ていく。だがこの突然の追放劇の裏には、美貌のギルドマスター・マティルダの、なにか深い目論見があるようだった。 その後、ギルマス直々にオーリンへの隨行を命じられたレジーナは、クズスキルと言われていた【通訳】のスキルで、王都で唯一オーリンと意思疎通のできる人間となる。追放されたことを恨みに思い、腐って捨て鉢になるオーリンを必死になだめて勵ましているうちに、レジーナたちは同じイーストウィンドに所屬する評判の悪いS級冒険者・ヴァロンに絡まれてしまう。 小競り合いから激昂したヴァロンがレジーナを毆りつけようとした、その瞬間。 「【拒絶(マネ)】――」 オーリンの魔法が発動し、S級冒険者であるヴァロンを圧倒し始める。それは凄まじい研鑽を積んだ大魔導士でなければ扱うことの出來ない絶技・無詠唱魔法だった。何が起こっているの? この人は一體――!? 驚いているレジーナの前で、オーリンの非常識的かつ超人的な魔法が次々と炸裂し始めて――。 「アオモリの星コさなる」と心に決めて仮想世界アオモリから都會に出てきた、ズーズー弁丸出しで何言ってるかわからない田舎者青年魔導士と、クズスキル【通訳】で彼のパートナー兼通訳を務める都會系新米回復術士の、ギルドを追い出されてから始まるノレソレ痛快なみちのく冒険ファンタジー。
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