《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第九話
角を多めに集めることができたハルは、次にパワータートルの甲羅の確保に向かう。
パワータートルがいる場所は、ふわふわ羊を倒した平原から更に北に向かった池の周辺だった。
先ほど戦った――というより、角だけ頂いたふわふわ羊は認識できる範囲で手を出した場合にのみ、角を構えて突っ込んでくる魔で、本來、危険は低い。
しかし、パワータートルは自の領域に侵してきたものには容赦なく襲いかかってくる兇暴を持っている。
名前の通り力の強い魔であるうえに、強固な甲羅を背負っているため、防力も高い。
「……どうやって倒すか考えないとだな」
甲羅はくサラマンダーの逆鱗のような、一ヶ所だけもろい部分がある――というようなこともない。
元々持っていたナイフはもちろん、武屋で購した剣でも簡単に弾かれてしまい、果てはあっさりと折れてしまう可能も低くない。
ならば、どうやって倒すのか?
「楽しいな」
その難しさをハルは楽しんでいた。彼の表に自然と笑みが浮かぶ。
冒険者であるからには、いくつもの困難に出くわすこともある。それこそ絶絶命の窮地に陥るようなこともあるだろう。
これまでのポーターとしてのハルであれば、ソレに挑戦する権利さえもなかった。
しかし、今はを張って言えた。自分は冒険者である! と。
だったら、パワータートルくらいの試練は乗り越えられる――そう信じていた。
數分前、そう意気込んだハルは今、全力で走っている。
「うおおおおお! やっぱりデカイ!」
パワートータルは亀種であるため、き自はゆっくりであるが、全長五メートルを超える巨であるため、一歩一歩が大きく、ハルは必死に全力で走ることでなんとか距離をとっていた。
池に到著したハルはパワータートルを発見すると慎重に、ゆっくりと、靜かに近づこうとしていたが、領域にられた場合のパワータートルの覚は鋭敏であり、すぐに気付かれてしまった。
ためしにナイフで傷をつけられないかと甲羅をナイフで攻撃してみたが、ガリッという音がするだけで傷の一つもらなかった。
それも結果的にパワータートルの怒りに油を注ぐ行為となり、現在の狀況となっていた。
「――もうし、時間がしいところだな」
走りながらも頭を冷靜にさせて、ハルはこの狀況を打開すべく考えを巡らせていく。
事前にわかっていたことだが、やはり手持ちの武では攻撃は通らない。
かといって、炎鎧やブレスでダメージを與えることも難しい。
ならばと、ハルは地面にブレスを使い、冷やしていく。
今日の気溫は高くもなく低くもなくといった狀況だったが、ハルがブレスを使って地面を凍らせていくことで、徐々に周囲の気溫が下がっていた。走るハルの吐く息も白くもやがかかったようになっていく。
また、地面が凍ることでパワータートルが走りづらくなる効果もある。
「さあさあ、どんどん行くぞ!」
ハルは、パワータートルのきが徐々に鈍っているのを確認して、池や地面を次々に凍らせていく。
「……はあはあ――どうだ?」
周囲が氷の世界に代わりつつある中、ハルの吐く荒い息は白く、怒りにを任せてひた走っていたパワータートルも息がれている。
「そろそろ次の攻撃に移るか」
ハルが考えている次の攻撃とは『氷牙』。
ハウンドウルフの場合は、文字通り口に生えている牙が氷屬になり、噛みつくことでそこを中心に凍らせていく。
しかし、人であるハルの場合、氷で作られた二本の牙が手のひらから出されて飛んでいく。
距離が近ければ近いほどにその威力があがるため、ハルは方向転換するとパワータートルに接近していく。
側面に回り込むと、パワータートルの足に目がけて攻撃を放つ。
「氷牙!!」
ピタリと手を足に當てて放ったそれは、やや淺いがパワータートルの足に突き刺さる。
「GUOOOOOO!」
だが足もく、なかなか攻撃は通らない。刺さった氷の牙もし暴れただけでパワータートルの足からあっさりと取れてしまう。
しかし、気溫が下がってきたことでパワータートルの能力が全に下がっていた。
亀種の多くは冬には冬眠するため、防力、攻撃力、敏捷、周囲への認識力などが下がる。
ハルはその特徴を知っていたため、今回は氷のスキルによる攻撃を考えていた。
「まだまだ行くぞ!」
ハルは今度は別の足へと移して、そちらにも氷を放つ。それを合計で四回行い、全ての足に氷牙を刺した。
「GURRRRRR」
痛みに苦しんでいるが、寒さからかパワータートルは意識がもうろうとしてきていた。
「――これで、どうだ!」
弱ってきているパワータートルを見て、追い打ちをかけるようにハルはパワータートルの口の中目がけて氷牙を放ち、更に自らの口から氷のブレスを吐く――それもこれまでで最大の出力で。
「GRRRR……」
パワータートルの怒りに唸る聲が徐々に弱まり、ついにはその聲は途絶える。
【スキル:甲羅の盾を獲得しました】
「ふうふう、はあ、やっと倒せた……」
池の周囲に生息するパワータートルだったが、ハルが見つけたのはこの一であり、それは今回の戦いにおいては幸運だった。
「スキルを連続で使うとかなり疲労するな」
ブレスと氷牙の二種類を何度も何度も使ったハルは全に倦怠をじていた。
「だけど、休んでる場合じゃないな。目的の甲羅を手にれないと……」
ハルはパワータートルの甲羅の上に乗って、八角形の一つに手を當てるとナイフを取り出した。
まず最初にハルのが炎に覆われる。これは炎鎧の効果である。
「ぐむむむむうう」
そして、唸り聲をあげながらその炎を右手に、手の先に、そしてナイフに炎を集中させていく。
高溫の炎を纏うナイフは、ずぶずぶと甲羅にゆっくりと刺さっていく。
「ぬおおおおお」
そして、ゆっくりと八角形の形に甲羅を切り出していく。
サイズが大きいこと、このナイフであってもそれでもやはりかなりのさであることから、一枚切り出すのにじっくりと時間をかけ、十五分程度を要することとなった。
「ふう、これやっぱり普通のやつよりでかいよな」
一枚切り出して改めてサイズを見ると、本來のパワータートルのそれよりも大きいことがわかる。
通常パワータートルといえば三メートル程度の大きさであるが、ハルが倒したのは五メートルはある巨大なものだった。
「……まあ、いいか。とりあえずあと何枚か切り出していこう」
それからハルは三枚ほど甲羅を切り出すと、ナイフが使いにならなくなったため、そこで作業を終了する。
「暗くなってきたか、仕方ない野宿をしよう。ここは危険だから平原まで戻るか」
日が落ちてきていたが、ハルは重量のある甲羅をしっかりと持ち上げて草原へと移していく。重たい荷を運ぶことはポーター時代に鍛えたのおかげで苦でもない。
依頼をこなしたハルの顔には疲労が漂っていたが、それでもどこか達に満ちた表でもあった。
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名前:ハル
別:男
レベル:1
ギフト:長
スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、氷牙2、甲羅の盾
加護:神セア、神ディオナ
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