《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第十九話
「――で、ルナリアの魔法で倒されたサンダーバードたちだけど、瀕死の狀態ながらも生き殘っているやつが殘っててな。それに止めを刺して倒したから、耐雷の力を手にれていたんだよ。さすがに全部カットっていうわけにもいかなかったから、痺れはしたけどな」
ハルの能力に驚き、ルナリアが気絶している間に魔を片付けていたことにも驚き、その力を使いこなしてサンダーバードを倒したことにも驚いた彼は、驚きすぎて頭の中がぐるぐる回っているようだった。
「……しお茶でも飲もう。待っていてくれ」
頭から煙が出そうなほど混しているルナリアに苦笑したハルは、彼の気持ちを落ち著かせるために、お茶をいれにキッチンへと移する。
お茶の用意をしながら、いきなり全部を説明したのはまずかったか? とハルは頭を掻いていた。
しかし、お茶を用意して戻ってくるとルナリアの目がキラキラと輝いていることに気づく。
「お茶を持ってきたんだけど……どうした?」
その変化にハルは怪訝な表でルナリアを見る。
「先ほどの話、改めて考えました。率直にいって……すっごいです!」
聞いたこともない能力に対して、疑問や疑いを持つのではなくすんなりとけ取っているようだった。
「そ、そうか。まあ、納得してもらったみたいでよかったよ」
ここまであっさりと信じてもらえると思っていなかったため、ハルは調子が狂う。お茶を差し出しながら、困ったような笑みを浮かべる。
「そんな力がずっと目覚めなかったなんて不思議ですね――何か理由があったのでしょうか?」
特別な力だから――そう思い込むのは簡単だったが、彼はハルの力が長年目覚めなかったことを疑問に思っていた。
反対にハルはただただ信じるだけではなく、こうして疑問を口にしてくれるのは嬉しかった。
「あぁ、そこだよな。あの時……俺はサラマンダーに向かって放り投げられたあと、持ってたナイフを逆鱗――つまりあいつの弱點に突き刺したんだ。暴れたあいつに吹き飛ばされないように必死だったよ」
自分も腰を落ち著けて茶をすするハルは思い出しながら語る。
軽い調子で言うハルに対して、姿勢を正して座るルナリアは真剣な表だった。
「あいつがあまりに暴れるもので、床が崩れたんだよ。そして、地下深くまで真っ逆さまと同時にナイフが深く刺さって……なんとか息のを止められた。それと同時に俺も気絶したみたいなんだけどな――はははっ」
ハルは冗談めかして言ったあとに、ふいに真剣な表に戻る。
「目覚めた時には俺には力があった。倒した相手の力を取り込む能力、それとしいい眼もな。もしかしたら、強力であるがゆえに封印されていて、落下の衝撃で目覚めたのかもしれないが……」
どこまでルナリアに説明しようか悩んだハルが出した答えはこれだった。
あくまでも神のこと、本當の能力が『長』であることは隠して説明する。
「すごい、ですね。とても、辛いですし……本當に力に目覚められてよかったです、うぅ……」
噛みしめるようにハルの言葉を聞いていたルナリアはみるみるうちに大きな瞳に涙を浮かべながら、ハルが力に目覚めたことをとても嬉しく思って泣いた。
「お、おい、泣くなって。今は、ほら大丈夫なんだから!」
に泣かれるのは慣れていないハルはそう言って力こぶを作って見たりして、わざと元気であることをアピールする。
「ふふっ、よかったです」
その様子を見て、ルナリアは自然と笑顔になっていた。涙をそっと拭いながらふわふわとほほ笑んでいる。
「……ご、ごほん。それで、本題に戻ろうか。ルナリアが魔法を使えない理由――それは、ルナリアのスキルにある」
言葉にできない恥ずかしさを誤魔化すように咳をしたハルは真剣な表で口を開く。
だが、スキルという言葉になじみがないルナリアはきょとんとした表で首を傾げる。
「えっと……魔法を使う技が足らないとかそういう話なのでしょうか?」
「いや、そうじゃないんだ。通常、第一人の儀をけると手にるのがギフト。それ以外になんらかの方法で手にったり、に著けたりしたものがスキルになる」
ということにして、とりあえずの説明をする。
実際の話はハルも理解しきれていないが、ルナリアに説明するだけなら大丈夫だろうと考えていた。
「じゃあ、そのスキルというものに問題があるんですね?」
その問いに神妙な面持ちでハルは頷いていた。
しかし、ハルは心で々考えを巡らせている。
彼のスキル欄に記されていたのは、実際にはスキルと呼べるようなものではなく――”呪い”だった。
『魔封じの呪い』
それが彼のスキル欄に記されていた。神からもらった知識では、スキルの中でもマイナススキルというものだった。
「いくつか聞きたいことがあるんだが、これまでに何か第一人の儀以外で、祝福や何かそれに類するものをけたことはあるか?」
い表で問いかけるハルに、ルナリアはしばし考え込む。
「……えっと、伯母さんが高名な魔法使いで、私が家を出ると話したら守りの儀式をしてくれるとのことで、詠唱は忘れてしまいましたが――五つの守り手がどうのとかって」
記憶に引っかかるものがあったルナリアはその當時のことをなんとか思い出しながら口にする。
「なるほど……もし、それ以外でも思い當たることがあったらあとでいいから教えてくれ。まずは、そのスキルの問題を解決しないとだな」
「な、なんとかなるんでしょうか……?」
心配そうな顔で質問するルナリア。
彼はこれまで自分のギフトのこと、能力のことを疑問に思っていた。
しかし、何をどうしても解決しないため、もう一生このままなのだろうと諦めてもいた。
そこにきて、ハルの言葉はルナリアの心に希をもたらそうとしている。
「あぁ、恐らくな。ただ、今すぐどうこうというのは難しいけどな。でも、そう遠くないうちになんとかしよう。そうじゃないと、一緒に冒険するのも大変だからな」
ふっと優しく笑ったハルはなるべく明るく、そして可能が十分にあるということが伝わるように答える。
「だ、大丈夫です! 私、いくらでも待てます! それに、問題が解決するなら一生懸命頑張ります!」
ルナリアは今の段階では何をどうすればいいのか、それはわかっていない。
しかし、ハルに自分の未來を託そうと決めていた。自分をすくい上げてくれたハルのことを信じたいという思いが強かった。
「そうか、ルナリアがそう決めてくれたなら俺も頑張らないとだな。とりあえず今日は……」
「今日は?」
これから何をすればいいのか? とルナリアはを乗り出して聞き返す。彼から、やる気がある今ならなんでもしたいという気持ちが伝わってくる。
「そろそろ解散しようか。意外といい時間みたいだ」
ハルは窓の外を指差して、日が傾いてきたのを確認させる。窓の向こうにある空は夕日がもうすぐ隠れ、藍に染まろうとしていた。
「――はっ! こんな遅くまですいませんでした! 私も宿に戻りますね! 失禮しましたっ」
ハッとしたように立ち上がった彼はこの街の安めの宿に部屋をとっていた。
「あぁ、それじゃあ明日の早朝に冒険者ギルドで落ち合おう。それ以降のことはまた相談ということで」
急いで挨拶するルナリアと明日の約束をすると、ハルは走り去る彼の背中を見送った。
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名前:ハル
別:男
レベル:1
ギフト:長
スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、耐雷1、氷牙2、帯電1、甲羅の盾
加護:神セア、神ディオナ
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*****************
名前:ルナリア
別:
レベル:-
ギフト:火魔法1、氷魔法1、風魔法1、土魔法1、雷魔法1
マイナススキル:魔封じの呪い
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