《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第二十話
翌早朝
ハルが冒険者ギルドに到著すると、ルナリアがり口で待っていた。
彼はギルドを出りする冒険者にジロジロとみられて居心地悪そうな様子で小さくなっていたが、ハルを発見すると笑顔で手を振っていた。
「悪い、待たせたな」
予定通りにやってきたハルだったが、ルナリアが先に來て待っていたことに謝罪を口にした。
「いえいえ、私がし早く來ちゃっただけなので……――それで、どうしましょうか?」
パーティとしてこれからどうするのかについて話し合っていなかったため、當然の質問をルナリアがする。
「あぁ、そうだった。説明していなかったな。――とりあえず、現狀のままではどうすることもできない」
思い出したようなハルの言葉に、ルナリアがガッカリした様子で肩を落とす。
「待て待て、現狀ではだ。なんとかするために、行かなきゃならない場所がある」
ハルは自分の説明不足を今になって悔やむこととなる。前も言葉が足りなくて彼に誤解を招いてしまったことがあったと思い出し、し慌てたように言葉を付け足した。
「ほ、本當ですか……?」
「あぁ、本當だ。そのために行く場所は――ここから東の街だ」
涙じりにし上目遣いになるルナリアに心どきりとしながらも続けられたハルの言葉を聞いた彼は首を傾げる。
「東というと、マウルの街でしょうか?」
マウルというのは、大きな聖堂院がある街であり、聖職者や聖職者を目指す者が多く集まってくる街だった。
「あぁ、あそこならルナリアのスキルもなんとかなる可能が高い」
それを聞いてルナリアが何かに気づくと同時にサッと顔が悪くなる。
「そ、その、もしかして、私には呪いがかけられているのでしょうか……?」
「……まあ、ここまでの話の流れで予想がつくよな。だけど、ここじゃ人通りがあるからひとまず出発しよう。あの街まではし距離があるから乗り合い馬車で行こうか」
不安そうに怯える彼を勵ますようにハルは明るく乗り合い馬車がある方を指す。
街と街は離れており、馬車を個人所有するのは購費用と維持費用がかかるため、街を繋ぐために定期的に出発する乗り合い馬車があったのだ。
「そうですね――もしかして伯母さんが……」
「それも含めてあとで話そう」
ルナリアがふと思い出したように言葉をらすも、ハルはそれ以上言わせないように被せ気味に言葉を遮る。
予想が當たっているかどうかはわからないため、確証がもてるまで誰かを犯人扱いはしたくなかった。
そのため、ここで結論づけるつもりはなかった。
馬車乗り場まで行くと既に數名の希者が並んでいた。
「これなら乗れそうですね」
相乗り馬車は大きめのサイズで、者を除いて八名まで乗車することができる。
今並んでいるのは三名であるため余裕を持って乗ることができるだろうとルナリアはふわりとほほ笑んだ。
「あぁ、よかったよ。時間帯によってはかなり混むからなあ」
ハルも現在の人數を見てほっとしていた。
まだ出発まで時間があるため、列に並んで待機していると五人組の冒険者がハルたちのあとにやってきた。
「ん? なあ、リーダーもういっぱいみたいだぞ」
先に並んでいたのが三名、ハルとルナリアを合わせて五名。
最大乗車人數が八名であるため、彼らのパーティ全員が乗るのは難しかった。
「ああん? あー、本當だ。……おい、お前たち」
リーダーと呼ばれた男がハルとルナリアに高圧的な様子で聲をかける。
「なんだ?」
その呼びかけにはハルが答えた。
「お前たち、馬車の順番を譲れ。お前たち二人がいなければ俺たちは全員馬車に乗ることができる。お前たちは、次の馬車にでも乗ればいいだろ」
「その言葉そっくりそのまま返す。俺たちが先に並んでいたんだ。あんたたちは次の馬車に乗ればいいだろ? 順番くらい守ってくれ」
橫柄な態度で順番を譲るように迫るリーダーの男の目をしっかり見ながら、ハルは毅然とした態度で答えた。
しかし、それが生意気な態度だと冒険者の目には映っていたようだ。
「おい、なんだその態度は。俺たちはBランク冒険者パーティだぞ、お前たちはどうせ駆け出しだろ? だったら、俺たちが馬車に乗ったほうが世の中のためだ!」
ハルの態度が気に食わなかったリーダーの男が怒鳴りつけてくる。
「……なあ、こいつ能無しポーターじゃないか?」
「あぁ、それにそっちのは魔法が使えない魔法使いじゃねーか」
クスクスとからかうように笑いながら冒険者たちがハルとルナリアのことを口にする。
「は? なんだ? 荷持ちと、魔法が使えない魔法使い? ……なんだそりゃ、そんなやつらが俺たちに反抗してるのか? ばっかじゃねーの? さっさとどけよ、おら」
それを聞いたリーダーの男はますます態度を大きくして強引にハルたちをどけようと迫ってくる。
ハルを裏切った冒険者パーティ、ルナリアを囮にした冒険者たち、そして今回の彼ら。
「――どうにも俺とルナリアが関わる冒険者パーティは碌なのがないな……」
ため息じりのハルのその呟きはリーダーの耳に屆く。眉をしかめてハルをぎろりと睨み付ける。
「ああん? お前生意気なだけじゃなく、俺たちのことを悪く言いやがったな? ……ちょっと痛い目見たほうがいいんじゃないか? おい、お前たちやるぞ!!」
男の指示をけて、冒険者パーティがハルとルナリアを囲んだ。
その間に馬車がやってきたが、者は関わるつもりがないらしく、ハルたちの決著がつくのを待っている。
最初に並んでいた三人は巻き込まれないようにとそそくさと既に馬車に乗り込んでいた。
「……はぁ、仕方ない。それじゃあ俺たちは次の馬車に乗ることにするよ。そこまで急いでないから」
厄介ごとはごめんだとハルは引き下がろうとする。
実際、目的はあるがすぐに向かわなければならないことでもないため、前に並んでいた乗客が定刻に出発できないのも悪いと思い、その判斷をする。
順番を守るという最低限のルールについて、ここまで話のわからない相手だとは思っていなかったため、最初は反論したがそれも無駄となった。
「あぁっ!? ははっ、怖気づいたのかよ。じゃあ見逃してやるよ――といいたいところだが、し痛い目を見てもらおうじゃねーか。俺たちに逆らうのはそれだけ罪深いことだから、なあ!?」
そう言うと、リーダーが剣をハルに向けて振り下ろしてきた。Bランクというだけあり、そのきは悪くないものだった。
「――悪いが、さすがにその攻撃をけるわけにはいかないな」
だがそれをハルは紙一重のきで避けると、リーダーの男の腹に拳を撃ち込んだ。もちろん、拳には火を纏わせている。
「……ぐはっ!」
そして、男はその場で膝をつく。
リーダーの男はまさか自分の攻撃が能無しと言われた駆け出し冒険者に避けられるとは思ってもいなかったようで、驚きとハルの想像以上に重たい攻撃をくらい、一瞬混していた。
「くそ、やっちまえ!」
仲間がやられたことに我慢ならないと他の男たちが襲いかかろうとする。
「ま、待て!」
しかし、それは焦ったようなリーダーの言葉によって止められた。彼は未だ腹を押さえたまま立ち上がれずにいる。
「い、いや、いい。俺たちが悪かった……お前たち、武を引っ込めろ。俺たちは次の馬車で行くぞ」
思わぬリーダーの言葉に冒険者たちは拍子抜けしてしまうが、リーダーの言葉であるため、渋々引き下がることにする。
「待たせて悪かったな。行かせてもらおう」
そう言うとハルはルナリアを伴い、何もなかったかのように馬車に乗り込もうとする。
Bランクパーティのリーダー相手に一瞬で決著をつけたため、ルナリアは目を白黒しながらハルに背中を押されて馬車に乗り込んだ。
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名前:ハル
別:男
レベル:1
ギフト:長
スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、耐雷1、氷牙2、帯電1、甲羅の盾
加護:神セア、神ディオナ
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名前:ルナリア
別:
レベル:-
ギフト:火魔法1、氷魔法1、風魔法1、土魔法1、雷魔法1
マイナススキル:魔封じの呪い
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