《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第三十七話
北に向かって旅立った二人だったが、ルナリアの故郷までしばらくあるため、途中の街に寄り道をしていく。
「この先には水の都と呼ばれている街があります。大きな湖のほとりにある街で、お魚がすごく味しいんですよ!」
嬉しそうに手を合わせて話すルナリアは故郷からやってくる際にこの街に立ち寄っていた。そのため、街のことを々と知っていた。
「へー、そいつは楽しみだな。なんていう街なんだ?」
「水の都、スイフィールです!」
ルナリアがその名前を言うと同時に、ハルたちが乗る馬車は丘を越える。
そして、丁度吹き抜けた風に目を細めた視線の先には、水の都スイフィールの姿があった。
「おー、これはすごいな……」
ハルはし惚けたように街の姿を見ていた。
その街にあるのは海と見まごうなかりの大きな湖であり、もちろん対岸も見えないほどである。
湖のほとりに広がる街は湖との共存を意識したつくりとなっており、水路が多くみられる。
「あの湖の名前は癒しの湖と呼ばれていて、その昔あの湖の水を飲むと怪我が癒やされるという伝説まであったのですよ!」
その話は、スイフィールの街で語り継がれているの語の一節であり、ルナリアは気にっていた話をすることでやや興気味だ。
「なるほどね、それはすごいな……――でも、今は別に違うんだろ?」
「……そうなんですよ。そもそも語の中のお話なので、本當の話なのかどうか――でも、私は信じたいです! だって、癒やしの力を持つ湖だなんて……その、ロマンチックじゃないですか」
ちょっとしょんぼりとしたルナリアは語と、語に登場する湖に思いをはせているようだった。
「さあ、そろそろ到著するぞ。その語について書いてある本があれば、読んでみたいな。あと、水辺の街ということだから、魚料理が待ち遠しい」
空腹を訴えるお腹を片手で押さえながら、ハルはまだ見ぬ料理に思いをはせていた。
「ですです! 前にこの街に來た時に、すっごく味しい店があったんですよ! そこに行きましょう!」
ルナリアは先ほどまでの語のことを思っていたが、ハルの言葉を聞いて以前立ち寄った店のことを思い出しており、気よりも食い気狀態になっていた。
「あ、あぁ、じゃあ、街についたら案してくれると助かる」
「もちろんです!」
ハルはルナリアが押し気味に話しをしてくるので、やや引きながら返事を返す。
それに対するルナリアの返答も、また力強いものだった。
そんなやりとりをしていると、ハルたちの馬車は街の近くまでやってきていた。
「さて、り口で手続きをしよう」
水の都スイフィールはかなり大きな街であり、り口での場手続きもしっかりしているようだった。
大きな街であるため、場の確認手続きも素早く行われ、ハルたちもすぐに街にれることとなる。
「さて、その店はどこにあるんだ? どうかしたか?」
ハルがルナリアに質問するが、なぜか彼は怪訝な表をして周囲を見ている。
「いえ、なんか、違うような……」
何かがおかしいといった様子でルナリアはきょろきょろと街を見渡している。
「――何が違うんだ?」
この街に來たのは初めてであるハルが聞き返す。
以前ここに立ち寄ったことのあるルナリアは、この街の何かが違うという。
それは、以前の狀態を知らないハルにはわからないことであるため、彼の答えを待つしかない。
「うーん、ちょっと明確に言葉にできないので、とりあえず例のお店に行ってみましょう。それまでに何かわかるかもしれませんし、お店の人に聞いてみるのもいいですから……」
ルナリア自も、何に違和を覚えているのかわからず、それ以上考えるのを一旦やめてとりあえず目的の店へと向かって歩き始めた。
だが店に到著するまでの間もルナリアは何度も首を傾げている。
ハルは彼の先導のもと始めてきたスイフィールの街を見回しながら歩く。
そして、何度目かの難しい表を経て、二人は店の前へと到著した。
見た限りこぎれいな雰囲気の海辺のレストランといった様子の店。
いい匂いが漂うことから味しい料理が出てきそうな予をじさせる。
「ここです……」
「ここか?」
自の記憶と照らし合わせても場所は間違えていないはずだったが、なぜかルナリアは口元を押さえて驚いている。
明らかに様子のおかしい彼を見て、ハルも念のためもう一度確認しなければならないと問いかけた。
「ここのはずなんですが……うーん、看板もでていますね。店名も確かあってるはずです」
二人の前にある建は、こぎれいではあるもののルナリアが言うような名店とは言い難く、客の出りも確認できないため、流行っているようには見えない。むしろやっているかも怪しいほどの寂れ合だった。
「とりあえず……はいってみるか」
そう言いながらハルが扉に手をかける。
チリーンという心地よい鈴の音と共に扉は開かれ、店の中からは一気にスパイシーな香りが漂ってくる。
「おー、いい香りだ。店の裝もいい――なのになぜ流行っていないんだ?」
時間帯もお晝時であり、混んでいてもよさそうだったが、店の中は閑散としている。
いい匂いに一気に食が刺激されたハルはなぜこんなに空いているのか信じられないといった表だ。
「いらっしゃいませ! お二人様ですか?」
元気な聲で迎えてくれる店員。
人族ので、二十歳未満くらいに見える顔立ちをしており、爽やかな青を基調としたエプロンと、彼の頭で揺れるポニーテールがらしい。
この辺りもハルの中で、評価されるポイントだった。
「はい、席は……」
「あ、あはは、空いてますね。どうぞお好きな席にお座り下さい」
ハルがぼそりといった言葉に、店員の頬はややひきつっていたが、それでも職務を全うして、最後まで案の言葉を続けた。
湖が見える特等席に二人は腰かけて、それぞれメニューを確認していく。
「お勧めは何かあるのか?」
「えっと……以前立ち寄った時は、お魚のフライ定食を食べたのですが」
しかし、メニューに彼が以前食べたというそれは掲載されていなかった。
「――なんというか、料理ばかりだな……」
ハルが言うように、メニューに並んでいるのは鳥や豬や牛のを使った料理ばかりで、魚料理がほとんど見當たらなかった。魚料理を期待していただけに、ハルはちょっとがっかりした気持ちになった。
その聲が聞こえたのか店員がトレイを抱きしめつつ、険しい表で席へとやってくる。
「……あ、あの、もしかしてお二人はこの街に來たばかりなのでしょうか?」
その質問の意図がわからなかったが、二人はとりあえず頷いておく。
「やっぱり……もうしわけありません。今、うちの店では……いえ、違いますね。この街のほとんどの店でお魚料理は提供できないのです」
悲痛な表そう告げる店員を見て、ハルとルナリアは思わず顔を見合わせてしまう。
「――あの、一何があったんですか?」
そして、ハルはこの質問を投げかけるしかなかった。
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名前:ハル
別:男
レベル:1
ギフト:長
スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、耐雷1、氷牙2、帯電1、甲羅の盾、鑑定、皮化、腕力強化1、火魔法1、発魔法1、解呪
加護:神セア、神ディオナ
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名前:ルナリア
別:
レベル:-
ギフト:火魔法1、氷魔法1、風魔法1、土魔法1、雷魔法1
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