《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第四十一話

ハルとルナリアは資料を付嬢のランに返卻すると、冒険者ギルドをあとにする。

「平原と廃城に行く前に、裝備とアイテムを買っていくか」

と戦うために、回復薬などの準備をしておく必要があった。ルナリアは笑顔で頷いてハルについていく。

最初に二人は通りにある武屋に立ち寄ることにする。

カラーンというベルの音とともに足を踏みれるが、店の中から聲は聞こえてこなかった。代わりに聞こえてきたのは大きないびきだった。

「寢てるのか……」

「寢てるみたいですね……」

會計のカウンターに突っ伏して寢ている初老の男の姿。狀況的に見て、彼がこの店の店員であることは容易に想像できる。

気持ちよさそうにいびきをかいて寢ている姿を二人は苦笑じりで見る。

「……ま、まあいいか。店のものをみせてもらおう」

「です、ね」

二人は支払いの時に起きてくれればいいだろうと、陳列されている品を順番にみていく。

「ハルさんはどういった武を選ぶんですか?」

自分の杖を々としながら、ルナリアが尋ねる。

「そうだなあ、一般的に使いやすい武の片手剣を選ぼうと思っている。ふわふわ羊の角を狙った時も使ったが、魔相手でも問題なく使えそうだからな」

そう言いながらハルは並んでいる片手剣の一つを手に持ってみる。手に握ったじと、全の見た目、刃がもつ特などをじっくりと確かめていた。

「うーん、どうだろうなあ。今のとあんまり変わらないか……」

だがそれはハルのお気に召すものではなかったようだ。

ふと目を向けた腰にに著けている片手剣――これも業ではないが、それなりに使える武である。

「これなんかどうですか?」

ルナリアが指差したのは、刀が青みがかった片手剣だった。

「ほう、それを選ぶとは嬢ちゃんいいセンスをしとるな」

青みがかった片手剣に見っていたその時かけられた聲に、ハルもルナリアは勢いよく振り返る。

「やあ、二人とも客じゃろ? その片手剣は々特別な金屬を使っておってな。多の刃こぼれ程度であればすぐに自己修復する代じゃ」

二ッと笑ってそう言うと、店員は適當にそこらへんにあったハンマーを振り上げてわざと刃先を潰そうとする。

「おいおい、いいのかよ、売りだろう?」

思わずハルが心配するが、その手は止まらずに振り下ろされ、カキーンという金屬音と共に剣の刃の一部を潰す。

「ほれ、潰れとるじゃろ? これにしだけ魔力を流すと……」

店員が魔力を流すと、彼の言葉のとおり、剣の潰れた部分はゆっくりと修復され、數分後には元の狀態に戻っていた。

魔力が流されたことで青みがかった刀しくを持っているように見えた。

「すごいです!」

いち早くしたのはルナリアだった。目をキラキラと輝かせ、手を合わせて興じりに聲を上げる。

自己修復機能を持つ裝備というものを初めて見たためだった。

「確かに……これなら、戦闘で傷がついても何度も使うことができるな」

心したようにつぶやくハルは実際にこれから使うにあたって、長期的な運用ができると考えていた。

「――それでいくらなんだ?」

ハルの質問に、店員は歯をむき出しにニヤリと笑う。

「久々のお客さんってことで、々勉強させてもらって――この値段だ!」

食いついてくれたことを嬉しそうにしている店員は紙に勢いよく値段を記してハルにばっと見せる。

「っ、ぐ、ぐむむ……」

その値段はハルの財布にある金で支払うことはできるが、支払ってしまうと懐が心もとなくなってしまう。

この先の買いを考えるとしためらう數字だった。

悩んでいるハルを見たルナリアが、そっとハルの肩に手を置いた。

「大丈夫です。旅の資金は私の方で出しますので、ハルさんは必要なものを買って下さい!」

を思わせる笑顔で言うルナリア。彼も前回の依頼の報酬があるため、資金に余裕があった。

「いや、でも……」

それでも躊躇するハル。誰かに何かをされることに慣れていないせいか、罪悪が勝ってしまったようだ。

「~~っ、ハルさん! 私たちはパーティ! 仲間、一蓮托生です!」

遠慮するハルを見てし怒ったルナリアは自分たちの関係を表す言葉を強調するように大きな聲で口にする。

ピンと立った耳と尾が怒りをわにしている。

し強めに放たれたその言葉はハルのを撃ち抜いた。

「――仲間、か……わかった。すまないが、お言葉に甘えさせてもらう」

にこみ上げる溫かな気持ちにへにゃりと笑ったハルのその返事に、ルナリアは不満があるようでを尖らせていた。

「違います、そういう場合はすまない、じゃないですよ?」

ハルの間違いをルナリアは苦笑しながら指摘する。

「あぁ、そうだな。ありがとう、助かるよ」

自分の聞きたかった言葉が聞けたルナリアはにっこりと笑って頷いていた。

「……あー、ごほん。お前さんらが仲がいいのはよーうっくわかった――それで、買うのかね? 買わないのかね?」

店員が算出した値段は、この剣の実用を考えると実際お得な値段であり、店員としても早く結論を出してほしかった。

「あ、あぁ、悪い。買わせてもらうよ……これでいいかな?」

ハルは自分の財布から提示された値段分の貨幣を出して店員へと渡す。

「毎度あり。あんた、いい買いをしたぞ? こいつはわしが作った自信作でな……」

そう言うと、可い子どもをでるかのように店員は剣をひとでする。

「これ、あんたが作ったのか?」

「店員さん、鍛冶師さんだったんですか?」

二人の質問、その両方に店員はにんまりと笑顔で頷いた。

「あぁ、この店に置いてある武のうち、そこからそっちの棚にあるやつはぜーんぶわしが作ったもじゃ!」

両手を広げて店員は誇らしげにそう言った。我が子を自慢するようにその表は自信に満ちていた。

「すごいな……」

ハルが気にして見ていた片手剣をはじめ、店員が指し示した先にある品はどれをとっても丹込められた逸品だというのが一見してわかる。

を作るスキルはあるが、それでも長い長い修行を続けてきたものだけが、ここまでの武を作ることができるのだ。

それを知っているハルは驚きとでぼそりと呟く。

「そういってもらえると、がんばって作ったかいがあるわい。その剣は剣になれていないものが使うのに適したものじゃ。この先、お主が強くなったと実して、その武では足りなくなった時にはまたくるとええ。その時はさすがにサービスできんが、良いものを提供するぞ」

パチンと茶目っ気たっぷりにウインクしながら店員はハルが買った片手剣の最終チェックをしている。

ハルがどれだけの力やスキルを持っているのか、店員は知らない。

もちろんリップサービスで言っている部分もある。

しかし店員は、なんとなくではあるが、またハルたちが武を求めてやってくるような気がしていた。

「あぁ、そうなるように鍛えるさ。まずは、この剣を使いこなせるようにならないとな」

最終チェックを終えた片手剣を取ったハルは嬉しそうに持ち手の部分をでる。

スキルを持っていないため、スキルサポートをけることができないハル。しかし、見よう見まねで剣を振ることはできる。

これまで々な冒険者の戦いを見てきたハルは、剣の使い方をある程度ではあるが理解していた。

當時スキルがなかったハルはを鍛える傍ら、何かの役に立てばとひたすら冒険者たちのことを観察していたのだ。

この點についても、ハルの勤勉さが戦いに繋がっていく。

スキルを獲得し、レベルが上がり、が強化された今だからこそできることがあった。

「いい買いができた。また、金がったら寄らせてもらうよ」

「あぁ、またきておくれ」

そうして、ハルとルナリアは錬金師の店と防屋に立ち寄ってから西の平原を目指すこととなる――。

*****************

名前:ハル

別:男

レベル:1

ギフト:

スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、耐雷1、氷牙2、帯電1、甲羅の盾、鑑定、皮化、腕力強化1、火魔法1、発魔法1、解呪

加護:神セア、神ディオナ

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*****************

名前:ルナリア

別:

レベル:-

ギフト:火魔法1、氷魔法1、風魔法1、土魔法1、雷魔法1

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