《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第四十五話
「ルナリア……だいじょうぶか?」
呼吸が落ち著いたところで、ハルが気遣うように質問する。
「な、なんとか……まだちょっとドキドキしてます」
ふにゃりと笑って見せたルナリアは再びポイズンスネイクに視線を送りながら、元を抑えるように手を當てている。
「でもルナリアがけてよかったよ。俺一人だったら、あのままやられていたな」
毒をいいタイミングで凍らせたルナリアの魔法がなかったらと思うと、ハルは肝を冷やしていた。
そして仲間のナイスフォローに謝していた。
「間に合ってよかったです。魔法を使う寸前まで震えてましたから」
苦笑するルナリア。あの時の彼は無我夢中に近い狀態で、詳細は覚えていないほど必死だった。
しかし、あのままではハルがやられてしまうと思い、ルナリアは踏ん張った足を一歩踏み出して魔法を放つことに功したのだ。
「なんにせよ、新しい能力を手にれることができたよ」
ハルは口を開くと、毒牙を使うイメージをする。そして、イメージした牙から毒を前方に出する。
その毒牙を地面につくと、噴出された毒により地面が汚染され、小さなをあける。
「……やっぱりポイズンスネイクより威力が弱いな」
予想していたよりも小さな技にハルは思わず不満げにぼそりと愚癡をこぼす。
ハルが能力を習得すると、どうしても1からのスタートになってしまうため、これまでずっと使い続けているポイズンスネイクよりも威力がどうしても下がってしまう。
「ハルさんの能力というのは、強化されないんですか?」
ルナリアに能力の詳細は伝えていないため、ハルの言葉からそんな疑問を持つ。
「使っていくと能力が強くなる。それと、同じ能力を持つものを倒すと、それでも強くなる。ただ、どちらにしても一定數の試行と一定數倒さないとだけどな」
淡々としたハルの説明に、ルナリアはなるほどと頷いている。
「だったら、このあたりの魔をもっと倒してみますか?」
ルナリアのその提案は一度ポイズンスネイクを倒したことから、気持ちにしゆとりが出てきたがゆえの発言だった。
「……またこいつが出て來ても大丈夫なのか?」
最初のルナリアの様子を思い出しながら、ハルがしからかうように話す。
ハッとしたように目の前に転がるポイズンスネイクを見たルナリアのは張でくなる。
「だ、だだ、大丈夫ですっ!」
どもっているため、その言葉に説得力はなかったが、それでも倒したことは確実にルナリアを一歩前に進ませていた。
「だったら、し狩って行くか。屬スライムを倒せば耐スキルもいくらかあがるだろうし、毒の耐も今後あったほうがいい場面も出てくるかもしれないからな」
「了解です!」
クスッと笑ったあと、ハルは能力の強化の戦いに向けて気持ちを改める。
ハルと一緒なら、とルナリアも笑顔で武を握り直してついていった。
それから二人は、しばらくの間平原で魔たちを倒していく。
そのかいもあって、ハルは耐スキルをいくつか上げることができ、ルナリアも氷魔法のギフトレベルが上がっていた。
二人は馬車に戻って、これからどうするかを相談する。
「そろそろ、平原は卒業するか。本當の目的地は古城だからな」
ハルが一番倒したい魔は古城にいる。
そのため、視線をそちらに向けて佇むが、そんなハルのことをルナリアはジト目で見ていた。
「別に平原で戦わなくてもよかったんですか?」
そう言ったルナリアの表はにっこりと笑顔だった。しかし、目の奧は笑っていない。どこか言葉からも棘をじる。
「あ、あぁ、ついでというか。せっかくだから、いくつか能力が手にったらいいなあ、とか、思って――あの、ルナリアさん?」
最初は普通に答えていた聲音がだんだん小さくなり、もやや引き気味になって、ルナリアの様子をそっとうかがうハル。
「だったら……だったら、ここで蛇と戦わなくてもよかったじゃないですかあああ!」
不満発といった様子のルナリアの聲が平原に響き渡った。
「いや、ほら、でも今後戦うことになった時のためにいい練習になったんじゃ?」
「確かに、確かにそうですけどおおおおおお!」
必要はない場面で必死の覚悟をした自分が、ルナリアは恥ずかしくなったようで顔を真っ赤にしていた。
恥ずかしさをこらえるように尾をギュッと抱き、顔を隠している。
「ま、まあ、その、ごめん……」
ハルは何を言ってもだめだと考えて、素直に頭を下げた。
「うぅ、いいですけどぉ……今度はちゃんと考えて下さいね?」
大きな狐耳をぺたんと倒しながら悲しそうな顔で言うルナリアを見て、ハルは頷いた後、もう一度頭を下げた。
その後は日が落ちてきたので、平原の魔がいるエリアからし離れた場所で野営をすることにする。
魔退治の最中に水辺も発見していたため、そこで軽く水浴びをしたり、飲料水を確保しておいた。
翌朝は日が昇って食事を終えると、すぐに古城へと向かうことにする。
古城というだけあり、室での燈りは期待できない。
ならばなるべく明るいうちに到著したいというのが、二人の考えだった。
平原の中央に整備されている道では、あまり魔は現れずたまに屬スライムが出るくらいであり、それはルナリアの魔法による撃であっさりと倒されていく。
「はあ、魔法すごいもんだなあ。見事に命中、完全に氷漬けとは……魔法の練習をしていた時はもっと大雑把だったのに、すごい長だな」
確実に魔法をコントロールしているルナリアにハルは舌を巻いている。
「うふふ、かなりの回數魔法を使いましたからっ。特に氷魔法は何十回使ったかわからないですからねえ」
スライム系は凍らせてくしたほうが倒しやすいため、ルナリアは元々の魔力量もあいまって連発してその技を使っていた。
そのために、氷屬だけランクが上がっている。
「そして、俺はありがたく頂戴しますよっと」
ハルはルナリアが凍らせたスライムを剣で真っ二つにする。
氷漬けになっても、スライムは即死するというわけではなく、核さえ無事なら復活も可能であるため、ハルがそこをとどめをさすことでスキル上げにもなっている。
「やっぱりあれですよね。私がとどめをさしたのでは、ハルさんのスキルにはならないんですよね?」
ルナリアの何気ない質問にハルは腕組みをする。
「それは俺も思っていたんだが……試したことがないからわからないというのが一つ。二つ目に、同じパーティメンバーといえども、個人個人におこることだから、ならないんじゃないかなあ? というのが俺の予想だ」
気になってはいるが試していないと言うハルの返答に、ルナリアも何か考えている。
「あの、だったら今度ハルさんが持っていない能力を持っている魔がいた時に、私がとどめを刺して見てもいいですか? もちろん複數いる魔に限りますが」
「是非に!」
それはハルにとっても願ってもない申し出だった。
もしそれが確認できれば、ルナリアも全力で魔法攻撃ができることになる。
今はハルのスキル獲得のために加減してもらっている部分があるため、彼自も気にしていた。
「それじゃあ、今度見つけたら即実踐してみよう!」
新しいことを試すのが楽しみな様子のハルは、どこか無邪気な子どものようでもあり、ルナリアはらかな笑顔でハルのことを見ていた。
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名前:ハル
別:男
レベル:1
ギフト:長
スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、
耐炎2、耐土1、耐風2、耐水1、耐氷2、耐雷1、耐毒2
氷牙2、毒牙1、帯電1、甲羅の盾、鑑定、皮化、腕力強化1、
火魔法1、発魔法1、解呪
加護:神セア、神ディオナ
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名前:ルナリア
別:
レベル:-
ギフト:火魔法1、氷魔法2、風魔法1、土魔法1、雷魔法1
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