《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第六十五話
翌朝、ハルとルナリア、そしてザウスが冒険者ギルド前にやってくると既に冒険者たちが集まってきていた。
それに合わせてを張って堂々とした様子の騎士団も隊列をしてギルド前にいた。
「すごいな……」
ハルが思わず言葉をらす。
冒険者たちの雑然とした様子とは違い、騎士団は綺麗に整列して毅然とした表で無駄口をたたかずにいる。
「俺たち冒険者と違って、騎士は規律ってやつを重んじるからな。だが、それだけに連攜が上手い。腕に覚えのある冒険者だとしても、隊を組んだ騎士にはかなわないだろうさ」
ザウスは何か思うところがあるらしく、騎士たちを見ながらハルに説明する。
「なるほど、あんたは騎士出か何かか」
ハルがそう言うと、ザウスはジロリと鋭い目つきで睨む。
「俺が騎士だと? そんなわけがないだろ。ただ、知り合いが別の街で騎士になったから知ってるだけだ」
何を馬鹿なことを、と嫌そうな表でし不機嫌そうに言うザウス。
「そうか、まあ今回は騎士とは共同戦線だから、彼らの力をアテにさせてもらおう」
ハルはその反応を気にも留めてない様子で、今回の湖解放戦に意識を向けていた。
「――お、また演説が始まるか?」
ハルの言葉のとおり、ギルド前に作られた臺の上にギルドマスターが登壇する。
その隣には歴戦の勇士という言葉がしっくりくる男が立っている。
鍛えた筋をじさせるがっしりと大柄な人族の彼は、その鋭い眼で集まっている冒険者と騎士をひと睨みする。
それだけで、先ほどまで騒然としていたこの場所が靜まりかえった。
「昨日、あの場所にいた者には話したけど、今回の作戦は過去最大の戦力。負けは許されないよ! 冒険者、騎士団と、それぞれ思うところ、戦いに臨む気持ちは違うかもしれない。でも、今日はそんなことを言ってられない……全力をお出し!」
ギルドマスターが再度冒険者たちに発破をかける。
「おおおおお!」
「うおおおおおおおお!!」
その聲に反応して冒険者たちが気合をれ、雄たけびを上げる。
しばらくそれは続くが、あるとき、ピタリとやむ。
理由は、ギルドマスターの隣にいる騎士が右の手を軽く上げ、再度ひと睨みしたためだった。
「私は、騎士団の団長カイセルだ。冒険者の中には私を知らない者もいるだろうから自己紹介をした」
名前を告げただけである。
それだけなのに、冒険者たちは彼が持つ迫力に押され思わず息を飲む。
その反応を騎士の一人がニヤリと笑う。
しかし、その態度はカイセルには見えており、これまた鋭い視線で貫かれ、その騎士はすぐさま姿勢を正す。
その顔にはだらだらと多量の冷たい汗が浮かんでいた。
「君たち冒険者の中には我々騎士のことを快く思わない者もいると思う。しかし、今回の作戦はこの街の存亡にかかわるといっても過言ではない。だから、細かいことにはこだわらずに全力で作戦に挑もう」
ギルドマスターの煽るような口調とは違い、カイセルのそれは落ち著いた低い靜かな聲だったが、それは水面にできた波紋のようにこの場にいる面々の心に響いていた。
「う、うおおおおっしゃあ!」
「騎士でも冒険者でも関係ねえ! 本気だ!」
「全力でいくぞ!」
そして、から熱くなった冒険者たちが聲をあげる。
それに同調するように騎士たちも、剣を持っているものは抜剣して空にかかげ、槍を持つものは柄の部分で地面をカンカンとついていた。
それも、しばらくの後、カイセルの合図と共に靜まる。
「では行こう。皆の戦に期待する」
「船は用意してあるよ! 港に向かうんだよ!」
カイセル、そしてギルドマスターの指示で騎士団と冒険者たちが同時にき始める。
港に到著すると、騎士団と冒険者はそれぞれ別の船に乗船して現地へと向かう。
しかし、妙なことに騎士団長のカイセルは冒険者側の船に同乗していた。
「よう、ザウス」
そして、あろうことかザウスに聲をかけてきた。
その表は未だに厳しいままだが、聲音からは親しみをじる。
それを見た冒険者たちは一様に驚いている。
「あぁ、久しぶりだなカイセル」
そして、ザウスもまたにっと歯を見せて笑い、友好的に反応する。
二人の會話から知り合いであることはわかるが、この二人に一どんな繋がりがあるのかと、周囲にいる全員が興味津々だった。
「……し、話しづらいか」
じろじろと好奇の視線をじたカイセルが近くにいる冒険者たちにぎろりと視線を送る。
それだけで冒険者たちはそそくさと自分のやるべきことに意識を無理やり持っていくが、どこかカイセルたちの會話に耳を傾けている様子だった。
「――ルナリア、風の障壁を作れるか? 強力なやつじゃなくていいんだが」
「わかりました!」
そっと言うハルの指示に従って、ふわりとほほ笑んだルナリアが冒険者たちと自分たちの間に風の障壁を張る。
「これで、會話はあいつらに屆かないはずだ。もっと別の場所に隠れて盜み聞きしていれば別だけどな」
さあどうぞとハルが二人に話を続けるように促す。
「はっ、やるじゃねえか。やっぱりお前さんらはなかなかに面白そうなやつだよ」
ザウスはハルの指示の早さ、そしてそれを容易に実行できるルナリアの魔法のセンスに面白いと笑う。
「ふむ、彼らはお前の仲間なのか? ならば、話を聞かれても?」
「まあ、一時的にパーティ組まされてるだけだが、別に構わんさ。お前たちなら、話したらダメそうなことをわざわざ吹聴するような趣味はないだろ?」
ザウスのその問いかけにハルはひょいっと肩をすくませ、ルナリアは笑顔で大きく頷いた。
「ならいいだろう。ザウス、久しぶりだな。お前が今回の作戦に參加してくれてるとは驚いたよ。前にあったのは私がまだ副団長だったころになるか?」
「あぁ、懐かしいな。まだ今ほどの貫祿はなかったな、それでも一生懸命部下を率いようとして空回りしてるのは面白かったぞ?」
二人が楽しそうに昔語りを始めたため、ハルとルナリアは障壁にとどまってはいるものの二人から距離をとった位置に座り込むことにする。
Aランク冒険者と騎士団の団長というそれぞれ別々の立場にいるが、それでも互いのことを認め合っている――そんな空気が二人からはじられていた。
*****************
名前:ハル
別:男
レベル:2
ギフト:長
スキル:炎鎧3、ブレス(炎)2、ブレス(氷)3、竜鱗2、
耐炎3、耐土2、耐風3、耐水2、耐氷3、耐雷2、耐毒3、
氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、
皮化、腕力強化2、筋力強化2、
火魔法3、発魔法2、解呪、
骨強化2、魔力吸収2、
剣3、斧2
加護:神セア、神ディオナ
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名前:ルナリア
別:
レベル:-
ギフト:オールエレメント
スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法2、雷魔法2、
水魔法1、魔法1、闇魔法1
加護:神セア、神ディオナ
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