《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第六十八話

ザウスとキマイラ。

両者が衝突した瞬間、衝突した場所を起點に周囲に衝撃が広がる。

「GAAAA!」

「うるっせええええ! このデカイ貓やろうがあああ!」

爪と剣がぶつかり、そこから押し合いになる。

の大きさでいえば圧倒的にキマイラのほうが大きい。

しかし、ザウスは顔を真っ赤にしながら、気合をれて大剣を両手で押し込み、キマイラを徐々に後方にかしていく。

「GRRR!?」

小さな人間が、しかも一人で自分に向かってきたことに苛立ちを覚えるキマイラ。

しかし、今は自分が押し込まれていることに、驚きと揺を隠せずにいた。

「俺は、ザウス様だぞおおおお!」

そして、周囲にとどろくほどの雄たけびと共にキマイラは勢いよく弾き飛ばされた。

「GYAUUUUU!」

が力負けしたことに驚いたキマイラは、視線をザウスから外してしまう。

「そういうとこが甘いんだよ! 死んどけええええ!」

気合をれた表で大剣を振るうザウスは既に追撃の姿勢にっており、キマイラが顔を上げた瞬間には既に剣を振り下ろしていた。

跳躍して、重をかけた大きな大剣による攻撃はキマイラの獅子の顔を見事に真っ二つにする。

「ハッ、手をやかせんな。俺もあいつらの後を追いかけないとだからな……」

そう言い捨てると、くるりと背を向けたザウスはハルたちの後を追いかける。

しかし、彼は気づいていなかった――キマイラの尾がまだ小さくいていることに……。

「――キシャアアアアアアアアア!」

「っ……なに!?」

そして、尾が足をからめとってザウスの態勢を崩す。

ぬらりとばした蛇のでザウスの自由を奪い、毒滴る蛇の口がザウスへと襲いかかる。

「ぬおおおお!」

眼前まで迫る蛇の口――絶絶命のピンチという言葉がふさわしい狀況にあった。

一方でハルとルナリアは順調に島の中央にやってきていた。

キマイラ以降は強力な敵はおらず、恐らくあれが防衛の最終ラインということなのだろうとハルは予想している。

「っ、ハルさん!」

そして、先に何かを見つけたのはルナリアだった。

「あれは……なんだ? いや、誰?」

目を細めながらルナリアがさす方向を見てハルもそれに気づいたが、それがなんなのかは、離れたこの位置からではわからず、ひとまず警戒しながらも走る速度をあげていく。

「……貴様らは何者だ?」

靜かな聲音でハルとルナリアに問いかけるのは、腕を組んで目を瞑っている人だった。

しかし、人と言うには皮が緑であり、頭部の左右には角が生えている。

そして質素であるがちゃんと服を著ており、先ほど指摘した二つの部分以外は、ハルのような一般的な人と同じタイプだった。

「そういうお前は――魔族?」

思い當たる外見の特徴からそう結論を導いたハルの言葉に、ルナリアは目を見開いて驚いてしまう。

魔族とはこの世界にいる種族の一つであり、個數はないと言われている。

だが獣人族よりも力が強く、きも早い。エルフ族よりも魔力が強い。

単純な戦闘力でいえば、世界でも上位に存在する種族だった。

「あぁ、俺は魔族だ。そしてもう一度尋ねよう。――貴様らは何者だ?」

うなづいてゆっくりと肯定した魔族はすっと目を開いて、ハルとルナリアを視界に捉えて質問をする。

その目のはどろりとした銀を読み取ることができない。

「……俺の名前はハル。あんたたち魔族が知っているかわからないが、いわゆる冒険者というやつだ」

警戒しながらも毅然とした態度でハルが名乗っても、魔族はただ黙っている。

「わ、私の名前はルナリアです。ハルさんと同じく冒険者です」

じりにルナリアも同じく名乗るが、二人の回答は魔族がむものではなかったらしく、不満げに目を細めた魔族が改めて二人のことを視界に捉える。

「なるほど、ハルとルナリアか。俺の名前はシュターツ。さて、それでは質問を変えよう。貴様らは何故この場所に來た? 島には多くの魔がいたはずだし、魔霧をださせていたはずだが?」

その霧が止み始めた時點で何かが起きていることはシュターツもわかっていた。

しかし、自分の場所に辿りつくまでの者がいるとは思ってもいなかったようだ。

「なにゆえ? それはこんな島ができあがって、これだけの魔がいて、あれだけの霧が立ち込めているからだろ。湖を元々の狀態に戻すために俺たちはやってきた」

何がおかしいのかわからないという様子のハルの話に、腕を組んだままなるほどとシュターツは頷く。

「理解した――ならば、お前たちは俺の敵ということだ」

これもわかっていたことだったが、シュターツは改めて確認することで自分の行拠を固めていた。

淡々とした口調で噛みしめるようにそう告げた。

「それでは、さらば」

再びハルたちを視界に捉えたシュターツはそれだけ言うと、あっという間にハルとの距離を詰めて、いつの間にか手にしていた剣を振り下ろしていた。

「くそっ!」

剣は鞘にしまったままであったため、ハルは咄嗟に左手で剣を防ぐ。

「馬鹿なことを……」

人間の細腕でシュターツの剣を防げるわけがないと、無表のままだったが、彼はハルのことを蔑んでいた。

しかし、思ってもいなかったカキーンという金屬音が響き渡ったため、シュターツは驚き、わずかに目を見開いてきを止めてしまう。

ハルはいつものごとく、複數の能力を使って腕を強化して剣による攻撃を防いでいた。

「隙あり!」

一瞬の停止はハルが攻撃に移るのに十分な時間を與えており、剣を引き抜くと思い切りシュターツのを薙いだ。

しかし、剣はシュターツのを吹き飛ばすだけで、皮一枚程度でしか斬ることができなかった。

「お前……」

「貴様……」

ぎろりとにらみ合って二人の視線が差する。

「「強いな!」」

二人の言葉がかぶる。そして、二人は不敵に笑った。

それぞれが武を改めて構え直して、走りだす。

二人の剣と剣がぶつかり合う。二人とも両手で剣を持ち、つばぜり合いをしている。

ここまでに數舜しか間違わってない二人だったが、互いに相手を強者と認めあっていた。

「“ライトアロー”!」

きが止まった隙を見逃すルナリアではなく、シュターツの橫っ腹目がけて魔法を放つ。

「むむっ! 卑怯だぞ!」

「卑怯じゃない! 俺たちは仲間だ!」

不満げに文句を言うシュターツにハルは苛立ちをじつつ強く反抗する。

ハルはシュターツの力を認めていた。認めていたからこそ、パーティとして全力で戦わなければならないと考えていた。

それをルナリアは理解していたため、瞬時に魔法を放つという判斷を下していた。

「“アースバイト”!」

そして、魔法は止まらず、土魔法によってシュターツの足に噛みつく牙を生み出して、そのきを止めていく――。

*****************

名前:ハル

別:男

レベル:2

ギフト:

スキル:炎鎧3、ブレス(炎)2、ブレス(氷)3、ブレス(毒)1、竜鱗2、

耐炎3、耐土2、耐風3、耐水2、耐氷3、耐雷2、耐毒3、

氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、

化、腕力強化3、筋力強化3、敏捷強化1

火魔法3、発魔法2、水魔法1、解呪、

骨強化2、魔力吸収2、

3、斧

加護:神セア、神ディオナ

*****************

*****************

名前:ルナリア

別:

レベル:-

ギフト:オールエレメント

スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法2、雷魔法2、

水魔法1、魔法1、闇魔法1

加護:神セア、神ディオナ

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