《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第六十九話

シュターツの足が止まったところにハルが思い切り剣を振るう。

先ほどのシュターツに撃ち込んだ一撃――あの時はシュターツは自らも飛んで威力を軽減させていた。

しかし、今度は足を固定されているため自ら飛ぶことはかなわず、ハルの橫薙ぎの一撃を直撃することとなる。

「ぐはああああっ!」

その一撃にはもちろん炎を宿らせて、更に全力を込めた攻撃。足元の牙ごとシュターツを吹き飛ばしていく。

「ぐっ、はあはあ、くそっ!」

剣が當たった場所は焼け焦げ、皮は斬られ、が滴っている。

「どうだ、完璧な手ごたえだったぞ」

ぐっと力のこもった表で睨むハルは油斷せずに剣を構え直してシュターツに視線を送る。

「なるほど確かに強いな。なるほど仲間というのもお前たち人間の戦い方の特徴なのだろうな」

シュターツは興味を持っていない様子で心したように目を伏せた。

魔族は魔を部下として、駒として使うことはあるが、他の魔族と共闘して、ましてや仲間として戦うなどという発想自なかったのだ。

「あぁ、それが俺たちの戦い方だ。たまに単獨でとんでもない戦い方をするやつもいるけどな……――おい、お前の怪我塞がってないか?」

が滴っていたはずの場所が何事もなかったかのように綺麗になっていることに気づいたハルの質問にシュターツはにやりと笑う。

「あぁ、悪いな。俺の特は回復力――しくらいの怪我ならすぐに治る」

しかし、その返答にハルは首を傾げた。

しくらい? さっきの攻撃はかなりのダメージだったと思うけど……」

「ハルさん、あの方、魔法も使うみたいです」

そっとルナリアに言われてハルは慌てて『鑑定』をシュターツへと使用する。

*****************

名前:シュターツ

別:男

ギフト:自己再生、回復魔法3、槍6、剣

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「お前、まさか!?」

ハルはステータスを見て驚く。

彼がここまで使ったのは剣。であるならば、彼が得意とする戦闘方法は剣である――そう思い込んでいた。

「ほう、わかるようだな!」

そう言った瞬間には薄く口元だけで笑ったシュターツは再びハルとの距離を詰めていた。

彼がいつの間にか手にしていた武は、剣ではなく槍。

しかも、見る限り魔槍といわれる類のもので、強力な魔力を帯びて淡く輝いている。

「ホラホラホラホラ!」

昂るをそのままにシュターツは連続で突きを放ってくる。

これが彼のもっとも得意とすべき武であり、あまりの猛攻に気づけばハルは防戦一方になる。

そして、ハルはじ取っている。

この槍による攻撃。

おそらく本気の一撃になったら、自分が今持つスキルを総員しても無傷というのは難しいということを。

「どうした? し本気を出したら、けるだけで一杯なのか?」

シュターツはハルを嘲笑うように問いかける。しかし、攻撃の手を止める様子は全くみられない。

むしろ自分の優位に、気分が高まっているようにさえ聞こえた。

「くっ……確かに、お前の槍はすごい。でも、手はあるぞ!」

「“ライトアロー”!」

ハルの言葉に合わせたかのように、ルナリアが魔法で攻撃をする。

「予想済みだ!」

一度された攻撃をもう一度喰らう程シュターツは優しくなかった。

右手に槍を持ち、そして左手にこれまたいつの間にか剣を持って剣の腹で魔法を防いでいた。

視線はハルからかさないまま魔法を防いだシュターツ。

しかし、ほんのしだけ、長さで言えば一ミリ以下、重さで言えば一グラム以下。

そんな些細な隙ともいえないものであるが、ハルはその瞬間、攻撃に転じる。

のけ反りそうな勢いで大きく息を吸ったハルが使ったのは氷のブレス。

「なんだと!?」

おおよそ人から放たれるとは思えないほどの冷気を帯びたブレスによって、シュターツの槍を持つ手が凍り付く。

警戒を抱き、距離をとろうとするシュターツ。

しかし、ハルも前に走り出していた。

「まだだ!」

そして、次のブレスを吐き出すモーションにる。

「くっ、また氷か!」

今度の狙いは左手。剣を持つ手を凍らされては、きが限定されてしまうため、シュターツは即座に剣を手放す。

だがハルが口から吐いたブレスは炎。

渦を巻くようにうねりを帯びた炎がシュターツへと襲い掛かる。

「ぐおおおお!」

まさかの攻撃に戸うシュターツの左手に炎が向かい、絡みつくような炎によって火傷を負ってしまう。

「“エアカッター”!」

シュターツの再生能力は先ほど見てわかっていたからこそ、その左手に向かってルナリアが風の魔法を放つ。

名前のとおり、風の刃が火傷し、更に黒く焦げ付いている手首に命中した。

「ぐおおおお!!」

手首を斬り落とすまではいかなかったが、手首の半分あたりまで切れてしまう。

噴き出したは止まることを知らず、彼の腕を汚した。

「もう一歩!」

魔族相手に油斷はできないと、更にハルが剣を振り下ろして、手首をぶった切る。

「まだまだああ!」

そして手首の切り口に再度炎のブレスを吐き、焼くことで再生できないようにする。

「“ライトアロー”!」

そこに向かってルナリアが再度魔法を放っていく。

「ぐっ! そこまでやらせるかよ!」

防戦に転じたシュターツはこのままやられっぱなしではプライドが許さず、素早く後方に飛んで距離をとる。

「はぁ、このままじゃ左手は使えないか……なら」

シュターツは槍の穂先を使って一気に左手を肘のあたりから斬り落とす。

が噴き出すが、切った場所から徐々にボコボコとうごめき、再生していくシュターツの腕。

「自分で手を斬るとは思わなかったな……判斷の早さには服するよ。再生速度もさすが魔族といったところか」

「そういう貴様こそ、魔が使うブレスを使うとはな……本當に人間か?」

ハルがシュターツを褒めると、シュターツはにやりと笑う。

二人は不敵に笑い合ったまま対峙する。

「俺は人間さ――し他とは違うけどな」

「なるほど、それはなかなか面白い」

二人とも余裕を見せるが、ハルは手詰まりじている。

一方でシュターツの回復には力を使うため、見た目以上に疲弊していた。

「うおおおおお!」

そこに新たな人が參戦する。

大剣を持って、シュターツへと斬りかかる。気配を消していたため、シュターツはその存在に気づかなかった。

「なにっ!?」

そして、振り下ろされた剣によってシュターツの右手はすっぱりと綺麗に斬り落とされ、その反で槍も遠くに弾き飛ばされていた。

「ハッ!! 楽しそうな相手と戦ってんな、ハル!!」

大剣片手に颯爽と現れたのはザウス。

「いい攻撃だ!」

ザウスの參戦は狀況を変える大きな手となると判斷したハルもすぐにき出していた。

「“サンダーボルト”!」

それはルナリアも同様で、右手を失ったシュターツに向かって魔法を放つ。

「ぐああああああああ!」

直撃をけたシュターツのは痺れてしまい、再生の力を回せる余力がない。

「“フレアボム”!」

ハルは船から飛び降りた時と同様に発魔法をブースター代わりに使ってシュターツとの距離をめる。

「くらええええええ!」

ハルは自分が持つ最大の攻撃を放つ。

炎を宿らせた剣、筋力強化、腕力強化――更に剣速を上げるためにここでも発魔法を使用する。

「……なかなか面白かったぞ」

最初にハルと対峙した時からは想像できないほどの戦い振りに、シュターツは安らかな表で目を伏せてその言葉を最後にハルの一撃で真っ二つになる。

さすがにここまでのダメージをけては再生能力も役には立たないようだ。

加えてハルは油斷せずに追撃となる攻撃を放っており、その攻撃はシュターツの心臓ともいえる魔核を破壊していた。

「はあはあ、やったか……」

「やり、ました」

ハルとルナリアは大きく息を吐いて、塵となっていくシュターツを見ていた。

そして、ハルの頭の中にはレベルアップのメッセージが流れていた。

*****************

名前:ハル

別:男

レベル:3

ギフト:

スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、竜鱗3、

耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、

氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、

化、腕力強化4、筋力強化4、敏捷強化2、自己再生

火魔法3、発魔法3、水魔法2、回復魔法1、解呪、

骨強化3、魔力吸収3、

4、斧2、槍

加護:神セア、神ディオナ

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*****************

名前:ルナリア

別:

レベル:-

ギフト:オールエレメント

スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法2、雷魔法2、

水魔法1、魔法2、闇魔法1

加護:神セア、神ディオナ

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