《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第七十四話
「あぁ! ハルさんにルナリアさん。いらっしゃいませ!」
二人の姿を見つけると、付嬢のランが近くにやってきて困ったような表で聲をかける。
「……これは、一?」
何やらおかしな空気が流れていることに気づいたハルが首を傾げながら問いかける。
「えっと、湖の問題が解決したばかりなのですが、今度は次の問題が出てきまして……」
前の依頼で大活躍の二人には是非力を貸してもらいたい。それと同時に、立て続けに問題を持ちかけるのは良くないのでは? という思いもランの中にはあった。その考えが表に出ている。
「何があったんだ?」
「もしかして、北の森の?」
レストランで、客が次々に寄せてくれた北の森の報。
もしかして、ギルドにも同じ報が集まっているのでは? ――そうルナリアは考えていた。
「え? いえ、森の話は聞いていますが、ギルドとしてはそれほど大きな問題としては捉えていません」
きょとんとしたランからの思ってもみなかった返答に、ハルとルナリアは面を喰らってしまう。
「じゃあ、何が?」
「はい、実はですね」
ランの話によると、例の魔族がいた島。魔族を倒したのち、崩壊したと思われていたが、同じ場所に島が再度現れているという話だった。
「それで、島に魔や魔族の姿は?」
真剣な表で質問するハルに対して、不安そうな表でランは緩く首を橫に振る。
「今のところはそういった話は出ていません。出ていないのですが……今までなかったものが、しかも魔族が陣を張っていた場所と同一の場所に現れたとなると、住民の間にも不安な空気が流れていまして……」
つまり、島がなんであるのか? 島は安全なのか? 島が現れたことによる影響は? それらの調査をしなくてはならない。
しかし、誰を派遣するかでギルドは悩んでいた。
湖の戦いは、依頼に參加しなかった冒険者にも報として伝わっている。
騎士団と冒険者ギルド、雙方の戦力を投して、なんとか湖の平穏を取り戻すことができた。
それほどに大きな戦力が必要となる戦いであったと。
「なるほど……。それで誰か島の調査依頼をける冒険者は?」
ハルのこの質問にもランは首を橫に振った。
「以前の依頼の時、かなりの魔の數がいて、しかも魔族の姿まであったことから島に近寄りたいという冒険者は未だ出てきていません」
ハルたちが、冒険者ギルドをあとにしてからすぐに冒険者ギルドとしても調査依頼を出したが、數時間で興味を示した冒険者の數はゼロであった。
「――ルナリア」
「はいっ!」
ルナリアは笑顔で頷く。ハルが名前を呼んだだけで、何をしようと思っているのかルナリアは理解していた。
「じゃあ、俺たちがその調査を引きけよう。とりあえずは魔も魔族の姿もないということだし、前回の依頼に參加した俺たちだったらランクは高くないが、信用はしてもらえるだろ?」
快い返事をもらえたことでハルは再びランの方を見る。
危険度が高い可能もあるため、低ランクの冒険者に依頼することはできない。
かといって、高ランク冒険者は危険であることを理解しているためけたがらない。
だからこそ、二人の申し出はギルドとしてとても助かるものであった。
「あ、あの、本當によろしいんですか? お二人は湖解放戦で疲れているのでは……それに、今回もそれほどうま味のある依頼とは言えないのですが……」
せっかくけてくれる人が出たというのになんで本當のことを! とホールにいる冒険者たちは思っていたが、ランは二人には正直に言っておきたいと考えていた。
「あぁ、別にいいさ。ランクも上がったし、魔と戦うのは俺たちにとって悪いことばかりじゃないからな」
それはスキルが手にることを意味しているが、それがなくてもハルならきっと依頼をけるんだろうな? とルナリアは見えないようにクスリと笑っていた。
「……あー、でもいくつか問題が」
「な、なんでしょうか?」
気が変わってしまうのではないか? そんな不安があるため、ランはハルの問題をすぐさま確認する。
「――船がない」
ハルたちはオークションで大金を手にれてはいるものの、さすがに個人で船を所有はしておらず、しかし今回の依頼をけるにあたっては最大の問題でもある。
「前回はみんなで依頼に臨んだから、船は用意してもらえたけど、俺たち二人だけってなるとそうもいかないんだろ?」
船を用意するとなると、船だけでなく縦する人も必要となり、魔がいたとなれば船に対して攻撃を加えられる危険も出てきてしまう。
ハルたちだけでなんとかできればそれに越したことはないのだが、すぐに行しようとなると自分たち以外の力を借りる必要があった。
「そう、ですよね……」
本來なら一番に考える問題ではあったが、島が再出現したというインパクトの大きさと、まずは依頼をけてくれる人の確保を考えていたため後回しになっていた。ランはすっかり失念していたことを反省してしょんぼりと肩を落とす。
「――船なら俺が出してやるよ」
それは、日焼けした鬼族の男の言葉だった。
鬼族とは、人族をベースにして頭部に角が生えている種族である。
また、そのは人族よりも大きく、人男であれば平均三メートルはあろう巨を持っている。
特徴だけ聞くと魔族に似通っているが、彼ら鬼族は魔法が使えず、皮のは人のそれと同じである。
鬼族は個數がなく、世界でも數百程度しかいないと言われている。
それゆえに、長命で人族の3~5倍の壽命を持つと言われていた。
この鬼族の男も例にれず、ハルが思わず見上げるほどの大きさをしている。
皮のは日焼けによるものか黒みがかっており、頭の左右に白い角が生えている。
「グーガさん、よろしいのですか?」
鬼族の男――グーガはランの質問に二カッと笑ってからどんとを叩いて頷く。
「知ってるんだ」
何を? と誰かが質問する前に、グーガはハルとルナリアに視線を送っていた。
「あんたたちが湖の問題を解決してくれたんだろ? ……あー、わかってる。他にも騎士団や多くの冒険者が參加していた、って言いたいんだろうけど。でも、あんたたち二人が中心だったってのも知っている」
あの依頼に參加したのは多くの騎士であり、多くの冒険者であるため、ハルたちの活躍を話す者もいたのだろうと想像できる。
「俺は船乗りだ。漁師でもある。なんにせよ、湖での仕事が俺の生業だ。だから、再び仕事ができることを心から謝してんだ。だったら、船を出すくらいの協力をしないと神様に怒られるってもんだろ?」
爽やかな笑顔で言う彼の言葉には、裏がないことがわかる。
「それじゃあ、頼む。依頼はすぐに出発していいのか?」
「えぇ、大丈夫です。今回の依頼はあくまでも調査なので、危ないと思ったらすぐに引き返して下さい」
再び街の問題にハルたちを巻き込んでしまって申し訳なく思っているランは不安そうな表で見送る。
「ありがとう、それじゃあルナリア、グーガ行こう」
「はい!」
「あぁ」
こうして、前回の依頼からほとんど時間が空いていないうちに、二人は次の依頼に出発する。
*****************
名前:ハル
別:男
レベル:3
ギフト:長
スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、竜鱗3、
耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、
氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、
皮化、腕力強化4、筋力強化4、敏捷強化2、自己再生
火魔法3、発魔法3、水魔法2、回復魔法1、解呪、
骨強化3、魔力吸収3、
剣4、斧2、槍1
加護:神セア、神ディオナ
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*****************
名前:ルナリア
別:
レベル:-
ギフト:オールエレメント
スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法2、雷魔法2、
水魔法1、魔法2、闇魔法1
加護:神セア、神ディオナ
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