《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第百六十一話
実力が拮抗している両者の攻撃の応酬は、見る者が手に汗握るものだった。
しかし、全力の攻撃を続けることはどちらにも負擔であり、一度距離をとることとなる。
「はあはあ……ふう、強いの……」
「ふう……子どもと思って舐めていました」
一息ついた二人は、互いに相手の実力を認めていた。
先ほどのように攻撃の応酬をしたのでは、いたずらに力を消耗するだけであり、どちらも決め手にかける。
呼吸を整えながらも、次の一手を二人は考えていた。
どちらが先にくか、同時にくか、それとも後の先を突くか。
どんな戦いが繰り広げられるのかを観客は楽しみにしていた。
しかし、その戦いを邪魔するものがいた。
「――なに?」
「……なにかしら?」
エミリとミスネリアが訝しげな表でほぼ同時に上空に視線を向けた。
太を背にし、大きな影とともに上空から飛來してきたのは、ドラゴンだった。
予選で戦ったような弱い個ではなく、巨大で魔力に満ち溢れた強力な力を持った本のドラゴン。
降り立ったその場には大きな砂ぼこりが巻き起こり、その中でドラゴンが大きな口を開け、けたたましい聲でうなりを上げる。
「いいぞおお!」
「やれやれー!」
観客もそれに気づき歓聲をあげる。全員がこれは運営側の演出だと思っている。
これに対して、司會も審判も驚いている。
つまり、これは完全にイレギュラーな事態だった。
『み、皆さま! あれはこちらの仕込みではありません! お逃げ下さい!』
この場アナウンスが響くと、驚愕した観客は一斉に席を立って會場から逃げ出そうとしている。
満員の客が同時にいたため、転ぶ者、押し合う者、罵聲をあげるものなど阿鼻喚の狀況に陥っている。
「――く、くふふふ……これはいいきっかけができたみたいだね」
この狀況にあって、ただ一人その場に殘って口元を押さえ、喜び楽しんでいるのはシルフェウスだった。
「あれは……敵?」
「の、ようですね」
エミリの呟きに、彼の隣にやってきていたミスネリアが答える。
「あっ……」
つい先ほどまで戦っていた相手。
そして試合はまだ終わっていない狀況にあって、隣り合っていることにエミリはどうしたらいいかわからず、ただ聲を出してしまう。
「今は試合どころではないと思います。あのドラゴンをなんとかしないと」
「うん」
ミスネリアの言葉にエミリも気持ちを切り替えて対ドラゴン戦に意識を向ける。
互いに手合わせをするうちに、実力をじ取った二人はこの場を乗り切るためには爭っている場合ではないと理解できた。
「エミリ、俺たちも手を貸すぞ」
「私もです!」
そんな二人に駆け寄ってきたのはハルとルナリアだった。
このような狀況にあっては、ミスネリアが言う様に試合どころではなくハルたちが加勢することをとやかく言う者もいない。
場は逃げう職員と観客の悲鳴じみたざわめきとドラゴンの唸り聲にすっかりパニック狀態だった。
「GAAAAAAAAAAAAAAA!!」
自分に向けられる敵意に気づいたのか、ドラゴンが雄たけびをあげ、空気がビリビリと震える。
ハルとルナリアはこれまでに強力な魔との戦闘経験があるため、ドラゴンの聲にもひるむ様子を見せることはない。
その二人が隣にいてくれることにエミリは心強さをじていた。
「えっと、ミスネリアさんだったか? そういうわけだから、俺たちも協力する。あんたのお仲間は観客の導に回ってくれたみたいだ」
ミスネリアが観客席に視線を向けると、そこには導に奔走している彼の仲間の姿があった。
「と、いうわけでルナリア、頼む!」
「はい! “フリーズライン”!」
前回の戦い同様、上空にいるドラゴンまでの道をルナリアが作り出しそこをハルが駆け上がっていく。
「GUOOOOO!」
自分のもとまでやってこようとするハルを見たドラゴンは、炎のブレスを吐きつける。
「危ない!」
単ドラゴンへと向かっているハルを援護できる者はいないため、彼の実力を知らないミスネリアは思わず聲をあげてしまう。
「炎鎧、竜鱗、アイスブレス!」
炎の鎧をまとい、皮を竜の鱗で覆い、氷のブレスで威力を軽減させる。更にハルには耐炎のスキルがある。
ゆえに、強力なブレスをけてもその中を駆け抜けることができる。
「うおおおおお!」
ブレスを道か何かのように走り抜けるハル。
「――あの人……本當に人間なの……?」
それを見たミスネリアが思わず呟く。炎を自ら纏い、鱗を表出し、ブレスを吐く。そんな人間に今まで出會ったことがなかった。
「ふふっ、あの人はちょっと特別なんです。でも、すごく強いですよ! “フリーズライン”! “フリーズライン”!」
らかく微笑んだルナリアはそう言いながらもドラゴンに燃やされて消された道を補う様に複數の道を作り出す。
その一つをエミリが駆け上がっていく。
「うおおおお!」
ハルがブレスを抜けてドラゴンへと斬りつける。
刀には炎鎧の炎を宿してあり、更にはエアブリンガー本來の風の魔力も発させている。
左の前足あたりを狙った一撃は鱗を數枚切り裂く――が、それ以上深くは刺さらずはじき返される。
「せやあああああああ!」
エミリがドラゴンへ追撃する。狙った場所はハルが鱗を切り裂いた場所。
「GUUUU!」
この一撃は確実にダメージを與える。
剣のように表面にダメージを與えるものではなく、魔力によって部にダメージを與えるものであるためだった。
しかし、それだけで倒せるほどこのドラゴンは弱くなかった。
本日11月22日(金)
才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~3巻発売です!
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名前:ハル
別:男
レベル:4
ギフト:長
スキル:炎鎧4、ブレス(炎)4、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、ブレス(闇)1、
竜鱗5、鉄壁4、剛腕3、統率1
耐炎4、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、
氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、
皮化、腕力強化6、筋力強化6、敏捷強化5、自己再生
火魔法4、発魔法3、水魔法3、回復魔法1、解呪、
骨強化5、魔力吸収3、
剣5、斧3、槍1、弓1、短剣1
開錠1、盜み1、霊契約
加護:神セア、神ディオナ
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名前:ルナリア
別:
レベル:-
ギフト:オールエレメント
スキル:火魔法4、氷魔法4、風魔法4、土魔法5、雷魔法4、
水魔法3、魔法4、闇魔法3
加護:神セア、神ディオナ
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名前:エミリ
別:
レベル:-
ギフト:2、格闘2、魔闘1、先読みの魔眼
加護:武神ガイン
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ブクマ・評価ポイントありがとうございます。
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