しばらくハルたちが穏やかに談笑していると、部屋にノック音が響き渡る。

「失禮します、巫様の使いです。伝言を預かってまいりました」

「はいはーい、今あけますね」

ルナリアが返事をして扉を開ける。

そこには表なくたたずむエルフのがおり、巫のシルフェウスと同じような服裝をしている。

「失禮します。巫様からの伝言を持ってまいりました。もし話がひと段落して、方向が決まったら巫様の部屋へ來てほしいとのことです」

なんのもない淡々とした聲でそれだけ伝えると、使いは小さく禮をして部屋をあとにしようとする。

「あー、待って下さい。もう気持ちは決まっているので……だよな？」

「うん！」

ハルの確認にエミリが力強く頷く。

「……承知しました。エミリ様、とてもいい表をしてらっしゃいます」

それまで何の表もなかったが、今のエミリを見たは目を細めていて、幾分か優しげな雰囲気が見えた。

使いのはハルが目覚めるまでの數日、エミリのことを遠くからそっと見てきていた。

ルナリアやミスネリア、そしてシルフェウスと話をしている時は笑顔だったが、その後に必ずと言っていいほど暗い表になるエミリ。

そのことは使いの彼の眼にも悲しく映っていた。

「ありがとうなの！」

自分でじる変化、仲間から見た変化だけでなく、他人から見ても変わったというのがわかる。

そのことはエミリにとって嬉しいことであり、素直に笑顔で謝を口にした。

「っ……いえ、私はただ想を述べただけですから。それよりも、巫様のお部屋へ向かいましょう。お二人も同行して下さい」

「えっ、いいんですか？」

「てっきり巫候補しかダメだとばかり……」

ハルとルナリアはてっきりエミリが一人で話に行くものだと思っていたため、驚いていた。

「エミリ様にとってお二人はとても大事な方だと巫様がおっしゃっていました。そのため、大事な決斷をエミリ様がされる時には、お二人がいたほうがいい、と」

シルフェウスはハルたち三人の関係を理解しており、三人そろって話を聞くのがベストだと判斷していた。

「うん、二人にはいてほしい！」

「……わかった、俺たちも行こう」

「はい！」

仲のいい三人の様子を見た巫の使いは長い時を過ごしたせいでどこか冷え切った心に、溫かな気持ちが芽生えたのをじた。

神殿の中を進んでいき、巫の部屋へと案される三人。

外から巫の使いが聲をかけると、三人はすんなり中へと通される。

「――どうかみなさまに、良きお導きがあらんことを」

巫の使いはそう言って一禮すると、自分の持ち場へと戻っていった。

「失禮しまー……あれ？　ミスネリアさん？」

ハルが聲をかけて部屋にると、そこでは巫候補のミスネリアと巫のシルフェウスが話をしていた。

「三人ともよく來たね。まさかこんなに早く決めるとは思わなかったよ」

シルフェウスは笑顔の中に驚きをえた表をしている。

ミスネリアはちらりとハルたちを見ると靜かに會釈をする。

「適當に座っていいよ……さて、それじゃ話を聞かせてもらおうかな」

ハルたちがそれぞれ手近な席についたのを確認すると、エミリに話を促す。

答えを知っているのか、どんな結果でもいいと思っているのかシルフェウスは笑顔でいる。

「うん、私は――巫候補になります！」

「……へっ？」

いきなりこんな宣言から來ると思っていなかったシルフェウスは間抜けな聲を出してしまう。

もし、神が近くにいたとしたら咳ばらいをして注意したであろうことは容易に想像ができる。

「えっと、二人といっぱい話したし、ハルが目覚める前にミスネリアさんからも々とお話を聞けたの。それでね、決めたの、巫候補になって頑張るって！　ミスネリアさんのほうがきっと優秀で々できて、々知っているし、私なんてまだまだまだまだ全然ダメだと思うけど……」

一度は決心したこととはいえ、自分で言いながら自信が揺らいだエミリは肩を落とす。

しかし、次の瞬間ぱっと顔をあげた。

「でも、それでも頑張って巫になれるように努力していきたいと思ってるの！　で、巫として長した姿をハルとルナリアに見てもらいたいの！」

強い決意、抱えている思い、そして未來を見據える目。

それまで庇護されるべき小さなだったエミリが初めて自分で決めて踏み出した一歩だった。

「ふふっ、いいね。うんうん、君たち三人の間には何か特別な絆があるようだ。それが頑張る気持ちの糧になっている。とてもいい！　そして、巫を目指すという気持ちもすごく真摯に思っているというのがわかった。私は大歓迎だよ！」

シルフェウスは笑顔で両手を開き、エミリを迎えていた。

その隣に座っていたミスネリア。ツンと澄ました表で座っていた彼もここで初めて口を開く。

「エミリさん、私の話があなたに影響を與え、その結果巫になりたいと思ったというのであれば……とても栄です。私もまだまだ未ですが、あなたと切磋琢磨して一人前の巫を目指そうと思います！」

「うん！」

もしかしたら、ミスネリアはライバルであるエミリをけれてくれないかもしれない――そんなことをどこか不安に思っていたエミリだった。

だがその不安も吹き飛び、笑顔で返事をする。

前代未聞の巫候補が二人という狀況だったが、シルフェウスはそれを楽しんでおり、ニコニコと二人のことを見比べていた。

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