《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》最終話

ハルとルナリアはエミリと別れて旅をしていく。

彼らは次の目的地を特に決めていなかったため、それから様々な場所に向かっていく。

あてのない旅は、彼らに時に苦難を、時に喜びを與えた。

世界では魔族の暗躍、魔化、そして魔王の復活などが起きており、冒険者としての責務と好奇心からハルとルナリアはその戦いの中にを投じていくこととなる。

古龍との戦い、新たな魔族との戦いなど多くの強敵を倒していくことでハルは多くのスキルを手にれることとなった。

同じくルナリアも戦いの中で數々の魔法を駆使し、スキルが長したことで多くの魔法を習得するにいたった。

その旅の途中で二人はエミリと同様にそれぞれが火の霊、風の霊と契約をし、霊魔法まで使えるようになる。

そんな二人が、數年ぶりにエミリに會いに中央大森林へとやってくると手紙があった。

「……二人ともそろそろくるかな?」

「あの二人のことだから絶対に來るわよ。シルフェウス様は全てわかっているんだから、好きに行きなさい」

「うん! ミスネリア、ありがとう!」

の正裝をにまとい、やれやれと肩をすくめて追い出すような口ぶりのミスネリアに、きやすく改造された巫服姿のエミリは禮を言うと、神殿を出てあの日二人を見送った場所へ向かって走りだす。

走っている途中、ふわりと吹き付ける風をじてエミリは不意に空を見た。

「――なに……?」

何かはわからないが、エミリは空に異変をじていた。

まだ音は小さかったが、空で何かと何かがぶつかり合う音が聞こえてくる。それが徐々に近づいて生きていた。

「音――この気配は、魔

數年前に戦った古龍、あれと同等の力をそこからじている。

そして、その姿も徐々に近づいてきていた。

最初は豆粒のような小さな影が次第に大きくなっていくのが眼でもはっきり分かる。

「まさか、ハルたちが久しぶりに來てくれるこんな日に!?」

伝説とも言われる古龍の一が、よりにもよってこんな日に現れた。

そのことは、エミリに思わず歯ぎしりをさせる。

「……えっ?」

しかし、次の瞬間、エミリは別の意味での驚きの聲をあげる。

空に見えたのは、件の古龍が空から墜落する様だった。しかも街に被害がないような位置で倒していた。

倒した人は古龍とともに空から地上へ降りてくる。

「あれは……ハルとルナリア!?」

二人がゆっくりと空から降りてくる。自由落下ではなく浮遊落下であるため、速度は軽減されている。

久々の二人を近くにじたことで沸き起こる溫かい気持ちに背中を押されるようにその著地點に向かってエミリは走りだした。

道は関係ない。たとえ屋の上であろうと、狹い路地だろうと、人混みだろうと関係なく一直線に走り続ける。

(早く! 早く二人に會いたい! いっぱい頑張ったね、って褒めてほしいの!)

そんな強い思いをに抱いて、エミリは走る。走る。走る。

「よっと、ルナリアありがと。以前戦った時ほどの強さはないものだな」

「ですね! あっ、でも私たちが強くなったからかもしれないですよ?」

魔法で速度を落としながら降りていく二人は古龍を倒したというのにけろりと日常會話でもするかのようにそんなことを話している。

今回倒した古龍は個としての力は以前戦ったものと同等のものだったが、やはり二人の力が強化されていたことが大きかった。

「そんなもんか、確かに技だけは増えたかもしれない」

「なんだか懐かしいですね。今よりも手札がない中で三人で頑張って倒しましたね」

ハルが自分の手を見つめながら言うと、ルナリアは笑顔で過去の戦いを思い出していた。

「ハルー! ルナリアー!」

そんな二人の名前を呼んで、著地予想地點へと走って行くエミリ。

「……あれって、もしかして」

「エミリ、さんでしょうか?」

二人は聲の主を怪訝な表で見ていた。

まさかここまで駆けつけるとは思っていなかったようで、表は変わらず、そのままゆっくりと地面に降り立った。

「ハル! ルナリア!」

再度名前を呼んだエミリは力いっぱい走ったそのまま、ルナリアに飛びつくように抱き著いた。

「エ、エミリさんですか?」

「そうだよ! エミリなの! 私、とっても、とっても頑張ったんだよ!」

ルナリアは戸いながらも抱き著く彼け止めた。

「いや……エミリ、長しすぎだろ!」

ここにきてハルが突っ込みをれた。

數年前、エミリと別れた時には、ルナリアのほうが長が高かった。

しかし、今は二人に長差はなかった。

以前は小さなだったエミリは今では立派な長を見せ、的なさはほとんどない。

「ハル、そうだよ! 頑張って長したんだよ!」

そう言うとエミリはハルに抱き著こうとする。

「い、いやいや、昔のように抱き著くには……こう、長しすぎだろ!?」

からになる過渡期にいるエミリ。

そんな彼と無邪気に抱き合うのはハルとしても、倫理的にどうなのかと考えさせられるものがあった。

「えー? じゃあ、前みたいにでてよ!」

「まあ、それならいいか……」

抱き著かれるよりはいいかと困ったような表のハルは彼の要に応えて、優しく頭をでていく。

「んー!」

久しぶりのにエミリは目を細めて喜んでいた。

は大人に近づいているが、いころ一緒だった二人の前では子供っぽいところを見せてしまうようだ。

「……エミリ、手紙に書いたからもう知っていると思うけど」

ハルはでる手を止めずに、しかし真剣な表で聲をかける。

「いいよ!」

「「えっ?」」

ハルとルナリアは揃って驚きの聲を出す。

「だから、私の力も必要なんでしょ? 二人が困っているならどこにでも行くよ!」

手紙では強い敵と戦うことになる。危険な戦いが待ちけている。

そのあたりを書いただけだったが、エミリの力も必要だということをエミリは手紙の行間から読み取っていた。

「いや、でも巫はいいのか?」

「いいの! あの時二人は私の選択を最優先に考えてくれた。そんな二人が困っているなら、力を貸すのが私の選択なの! ……それに言ったでしょ? 長した私を見てほしい、って」

として経験を積み、多くを學んだエミリだったが、ずっとハルたちのことを気にかけていた。

一人ぼっちになってしまったエミリのことをれて、呪いを解除して、旅をしてくれた二人のために何かをしたいと考えていた。

手紙をけ取って、役に立てる機會が近づいているとわかるや否や、シルフェウスとミスネリアに自分の想いをぶつけた。

そして、二人もエミリの意見を尊重してくれた。

「もう、シルフェウス様にもミスネリアにも、お世話になった人たちにも挨拶はしてあるから大丈夫。だから、また一緒に旅をしよ!」

決意は固く、もう曲がることはない。その強い意志をハルとルナリアはじ取っていた。

「……よし、それじゃ行くか」

「はい! 行きましょう!」

「おー! ……どこに行くの?」

二人の言葉に元気よく続いたエミリだったが、ハルとルナリアとまた一緒にいられることばかりを考えており、目的はわからずにいた。

「ちょっと待ってろ――ピー!」

ハルは、笛を取り出すとそれを思いきり吹いた。

しばらくすると、空から大きな白いのグリフォンがやってくる。

「紹介するよ。こいつは俺たちの仲間のグリフォンで、名前をエリクシル。なんでもできる萬能のグリフォンだ。エリク、こっちは仲間のエミリだ」

「ピー!」

「エリクシル、よろしく!」

二人の意思疎通に問題はなく、エミリはエリクシルの顔を優しくでている。

「さて、それじゃ乗ってくれ。目指すは空に浮かぶ雷の魔王の城だ!」

エリクシルの背中に飛び乗った三人は、そのまま北の空に浮かぶ魔王城へと向かっていく。

ギフト――この世界の神から與えられる最初で最高の才能だ。

の力を使う”魔人ハル”。強大な魔力を持つ”九尾ルナリア”。そして、魔導拳の最高峰”魔拳エミリ”。

最初はその才能に恵まれなかった三人が様々な困難を乗り越えたさきに才能を開花させ、世界中を旅し、Sランクを超える冒険者を目指す語だ――。

お読みいただきありがとうございます。

二年前の4月に投稿を開始して、ついに完結となります。

たくさんの方に読んで頂き、たくさんのブクマ・評価して頂きとてもありがたく思っています。

書籍化することもでき、つい先日4巻発売となりました。

Web版と書籍版でも違いがありますので、合わせてお楽しみ頂ければと思います。

また、最後となりましたので、↓の☆マークより評価をして頂ければ幸いです。

長らくありがとうございました。

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