《【書籍化/コミカライズ決定】婚約破棄された無表令嬢が幸せになるまで〜勤務先の天然たらし騎士団長様がとろっとろに甘やかして溺してくるのですが!?〜》十八話 他の男を意識するのは気に食わない
◆◆◆
ついに迎えた合同軍事演習の當日。
セリスは自分が何かをするわけではないけれど、張で早く目が覚めた。
(……ついに今日……)
合同軍事演習のことを知ってから、今日までセリスはナーシャとミレッタにも協力を仰ぎ、団員たちのサポートに回った。
ナーシャもミレッタも第四騎士団が第二騎士団にだけは負けたくないと思っていることは知っているので、快く協力してくれたのだった。
そして今日、セリスたちは朝食の準備と洗濯が済み次第、演習場に向かって団員たちの頑張りをこの目で見るつもりだ。ジェドからも許可をもらっており、そのために出來る仕事は事前にしておいたので準備は萬端だった。
「し歩こうかしら……」
外はまだ薄暗い。けれどもう心臓が高鳴って寢られそうにもなく、セリスは著替えてから部屋を飛び出した。
食堂や談話室を通り抜けて外に出ると、敷地をゆっくり歩く。
どこに行くわけでもなかったが、何だかじっとしていられなかった。
しかしそんなとき、訓練場から僅かに音が聞こえるとセリスはふと足を止め、そして今度は明確に意思を持って歩き始める。
ちら、と覗くと鍛錬に勵んでいるジェドの姿に、セリスは「あ……」と小さく聲を上げた。
「セリス?」
「おはようございますジェドさん。……すみません、その、邪魔をしてしまいましたね」
本當に小さな聲だったが、神経を研ぎ澄ませて鍛錬をしているジェドには聞こえたのだろうか。
振り向いた瞳はいつものらかなものではなく、しだけ滾るような鋭さを孕んでいる。
ジェドが早朝に鍛錬をしているということは団員から聞いていたので知っていたものの、実際目にしたのは初めてだった。
普段は指南役に回ったり指示を出したりしていて、今のように真剣な面持ちで剣を振るう姿を見たことがなかったセリスの心臓は、ドクンと音を立てた。
「早いな。眠れなかったか?」
「は、はい。何だか張してしまって」
「ははっ、それなら俺と話でもしよう。そろそろ終わるつもりだったから」
そう言ったジェドは近くに置いてあったタオルを手に取ると、雑に頭や顔を拭いていく。
もベトベトで気持ち悪いのか、お腹辺りを拭こうとするジェドの服がし捲くり上がり、まるで彫刻のような腹筋にセリスは無意識に目を奪われた。
(なんてしい腹筋……って、私は何を見てるの)
ふと我に返り、セリスはジェドのしいからぱっと目を離す。
それからジェドに座ろうとわれたので、セリスは続くように腰を下ろした。
「もう後數時間もすれば、第二騎士団の奴らが來る。セリスは大丈夫か?」
「私ですか? 私より皆さんの方が張しているのでは」
「俺を含め団員たちはやれることはやったってじだからな。結果は自ずとついてくるだろうさ。それよりもセリス──俺はお前が心配だ。元婚約者も、多分來るぞ」
「……そういえば、そうでしたね…………」
會いたいか會いたくないかで言えば、間違いなく會いたくはないのだが。
それでもセリスはここ數週間、団員のサポートに盡力していたからか、一度もギルバートのことを思い出したことはなかった。
會ったら気まずいだろうけれど、まあ、話すこともないでしょう、くらいな軽い気持ちである。
セリスの反応が薄いことでギルバートのことをほとんど意識していないことを察したジェドは「心配だ……」とポツリと呟くので、何がだろうとセリスは小首を傾げた。
「ギルバート様は私のこの冷たい瞳が嫌いだそうなので、別に會っても話しかけて來ないと思いますよ?」
「……待て。そんなことを言われたのか?」
「はい。婚約破棄のときに。母譲りの瞳なので多ショックでしたが、まあじ方は人それぞれですしね」
平然と話しながらも僅かに眉を下げるセリスに、ジェドは怒りが込み上げてくる。
婚約破棄をするだけでは飽き足らずセリスを傷付けるような言葉を並べるとは、頭がおかしいんじゃないか。しかも推薦狀に、セリスの悪口まで書いてあったのだ。
セリスは関わってこないだろうと高を括っているものの、ジェドは嫌な予がした。
「セリス、やっぱりギルバートには気をつけろよ。話しかけてきても無視だ。近くに來ただけでも逃げろ」
「えっ。そうなると、ギルバート様がどこにいるか常に意識していないといけませんね」
「意識────」
ジェドは、セリスのアイスブルーの雙眼とばちりと目が合う。
この瞳が、ギルバートを常に追いかけるのかと思うと。
「気に食わねぇな。お前があんな男を意識すんの」
「え──」
し間を空けて座っていた二人だったが、ジェドがし腰を浮かせて距離を詰める。
肩と肩がコツンとれるような距離に近づくと、セリスのアイスブルーの瞳の奧がゆらりと揺れた。
同時にジェドの淡紫の瞳が、先程の鍛錬中とはまた違う熱を帯びていることに気付いたセリスが咄嗟に顔を引っ込めようとすると、ジェドはそれよりも早いきでずいと顔を近付けたのだった。
「っ、ジェドさん──」
鼻と鼻の先がくっつきそうなほどの至近距離に、セリスはけず、を直させると。
──コツン。
「……?」
額と額がコツン、と音を立てる。痛みはないが、いきなりのことにセリスが目を白黒させると、ジェドは勢いよく立ち上がった。
「……セリスの前髪に汗ついちまったかも。ごめんな」
「い、いえ」
「服著替えたいから自室に戻る。風邪引かないうちにセリスも室に戻れよ」
「はい。分かりました……」
去っていくジェドの姿が見えなくなると、セリスは膝を抱えてそこに顔を押し當てる。
(何さっきの……キスされるのかと……いや、そんなはずはないのに私ったら……)
ジェドは初めから、比較的距離が近い人だった。そもそもが優しい上に、ときおり妹扱いをされ、何度ドキドキしたことだろう。
けれど今までだったら、こんなにを締め付けられるような気持ちになることはなかった。あの距離に驚くことはあっても、離れた瞬間安堵していたことだろう。それなのに。
──あんなに熱を帯びた瞳で見つめるなんて、反則だ。
(嫌じゃなかった……あのまま……って、もう! あれは偶然顔が近付いただけよ。うん、そう、よね)
セリスが自らのに困する中、足速に部屋に戻ったジェドは扉を閉めると、その場にずずず……としゃがみ込む。
片手でぐしゃぐしゃと髪のをすと、これ以上ないくらいに大きなため息をらした。
「何しようとしてんだ俺は……妹扱いしてるにすることじゃねぇだろ…………」
切なげに呟いたジェドは、もう一度「ハァ……」と大きくため息をらしたのだった。
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