《【書籍化&コミカライズ】創魔法の再現者 ~『魔法が使えない』と実家を追放された天才年、魔の弟子となり正しい方法で全ての魔法を極めます。貴方の魔法は、こうやって使うんですよ?~》127話 カルマ

生まれた時から、何をするべきかは知っていた。

それはひどく曖昧なものだったけれど、方向を間違うことは絶対にないんだろうなということも不思議と確信できるもので。

最初から進むべき場所が決められていて、それになんの疑問も抱かずに従うことができて、しかもそれがこの上なく楽しみをじられるものであったのなら。

それは──きっと、とてもとても素晴らしい一生であると言えるのではないだろうか。

故に、彼は。

今日も何一つ疑問を抱くことなく、己の生を謳歌し。

何も躊躇うことなく、貪に魔法を蒐集して他の命を踏み躙り。ありとあらゆるものの頂點に立つべく何もかもを見下すだけの力を得る。

その、覚悟と呼ぶ必要すらない確信をに抱き。

彼は今日も──自分を生み出した魔法の名前(カルマ)を己の個名と在り方に定め、全てを躙しにかかるのだ。

このままでは、自分は死ぬ。

絶え間ない魔法の雨にさらされながら、カルマはそう確信した。

エルメスの分析はこの上なく正しい。自分の対応能力の限界を超える魔法をひたすら叩き込むことで適応前に削り切る。魔力量など諸々のキャパシティを把握しきってきっちり削り切れるだけの魔法を用意してきたのも見事としか言いようがない。

故にこのままでは、自分は消し飛ばされて死ぬ。

そう、このままなら。

よって、カルマは考える。

(──じゃあ(・・・)、今進化すれば(・・・・・・)良いだけだよね(・・・・・・・))

なんてことのないかのように、そう結論づけて。

続けて考える、どう進化すれば良いかと。

向こうは今、自分の対応能力──つまりは自の最大の特である『進化』、その速度の限界を超える速度で攻撃を繰り返すことで自分を殺しにかかっている。

ああ、ならばやるべきことは簡単だ。

──それより速く進化すれば良い。

今までよりもっと、素早く的確に何もかもに適応し、魔法を學習できるようになれば良い。それが(・・・)できる(・・・)生に(・・・)今(・)この(・・)瞬間に(・・・)生まれ(・・・)変われば(・・・・)良い(・・)。

まさしく、子供の発想。

それができれば誰も苦労はしないと誰もが一蹴するような機上の空論未満の戯言だ。

なのに。

彼は、おそらく現時點で世界で唯一。それができてしまう。

カルマは想うだけで良い。それだけで彼のは、原初の魔法によって生み出された至上のはそれを葉えるべく勝手にき始める。

より的確に、より強靭に。

今まで以上に素早い進化を可能にするためにが変化を重ねる。に刻まれた魔法──と言うよりは、を構する細胞一つ一つに至るまで魔法そのものである彼のが、その解に程なくして辿り著く。

そもそも進化に時間がかかるのは、細胞が通常狀態では止まっているからだ。変化しない靜止の狀態であるからだ。急に最高速度まで加速できる生が存在しないように、止まったものが急な速度で変化をすることはできない。

なら、逆転の発想。──常に変化を続ける狀態であれば良い。

一秒一瞬たりとも止まることなく、常にき続けて進化を重ねる魔法となれば良い。靜止の點ではなく、無限の循環を重ねる円環の如き存在となれば良い。そういう魔法での全てが構された生となれば良い。

どくり、と細胞が躍する。絶え間なく押し寄せる魔法にも負けないほどに凄まじく変化を繰り返す。

その試みが功することを、カルマは疑わない。自分がそう言う生であることの確信を些かも衰えさせない。

彼を倒すためにエルメスたちがどんな苦労をしてきたなんて、何も知ったことではない。

彼に敵対するものがどんな想いでいるかなんて、何一つ考慮することはない。

まさしく、子供が砂の城を容易く壊すように。カルマはそれを思うがまま、み通りにする。

自分に従うものが生き殘って、自分に逆らうものが速やかに退場する。この世界はそういう風にできているし、自分のはそれを葉えるようにできているのだから。

(……ああ、そう言えば。これまで殺した人間たちの一人が、素敵なことを言っていたなぁ)

凄まじい勢いで変化する自分の。その流に心地よくを委ねながら、カルマは最後に思考を紡ぎ、一つの言葉を思い浮かべる。

(──『信じるものは救われる』。……ああ、全く(・・)もって(・・・)その通り(・・・・)じゃないか)

自分は、信じるだけで良い。

それだけで、何もかも全て自分の都合の良いように進んでいく。

だからこそ──魔法は素晴らしいんだと。

その思考を最後に、自分のが全く別の新しい領域にったことを確信し。

その、果てに。

「……」

全ての魔法を撃ち切った。

エルメスという存在が現時點で持ちうる中で、今扱える全ての魔法を余すところなく叩こみ切った。

正真正銘、今この瞬間に絞り出せる全てを出し切った。

だから。

「……ああ」

魔法を叩き込んだ後の土煙から、聞こえてはいけないカルマの聲が聞こえた瞬間に。

エルメスの敗北は、確定していた。

「ありがとう、って言えばいいんだよね。こういう時、誰かのおかげで何かができた時。

今回の場合は──きみのおかげで、ぼくが今まで以上の素敵な存在になれた時」

そう告げて。

砂煙の中から登場したカルマを見た瞬間──戦慄と共に、確信を得た。

ありえない(・・・・・)ものが(・・・)、目の前にいる(・・・・・・)。

まさしくカルマが今告げた通り、今までと全く別のものに彼は変質していた。

は、あんな魔力を発して良いものではない。あんな魔法を包して良いものではない。構造も、存在も、考えうる何もかもが今まで見たものの常識を遙か彼方に置き去りにしている、それこそ生きかどうかも怪しい領域の存在として眼前の年はある。

そして、何より。

そんな存在であるのに──姿形自は今までと何一つ変わらない。そのたった一點のちぐはぐが、尚更不気味、異質、何より超越を強調している。

「だから、お禮に」

そのカルマが、口を開いて。

「──きみにもらった魔法、ぜんぶ返すね?」

同時に、魔力を高め。唄うことすらせずに。

エルメスがこれまで放った魔法を全て同時に(・・・・・)、なんのモーションも無く撃ち放った。

「──」

抵抗などできるはずもない。

苦し紛れに展開した結界の魔法など、その圧倒的な量の前であっという間に飲み込んで。彼と同じ、けれど彼よりも段違いに強力な魔法群が、なすなくエルメスに殺到した。

「エルメス君ッ!」

視界の先で起こった出來事に、ルキウスもぶ。

信じられないものを見た、けれど今やるべきことは明らかだ。策が失敗した以上ここにとどまる理由はない、彼の生存に一縷のみをかけて回収、速やかに制を立て直して次を──

──なんてことを実行することも、どころか思考する暇を貰うことさえも。

あれを前にしては、絶的なまでに贅沢すぎた。

「きみに関しては」

気がつくと、カルマが目の前にいた。

自分を遙かに超える速度で、視認さえ許さない俊敏さで。

言い直すと──王國最速のルキウスでも反応すらできない速度で距離を詰めたカルマが、無造作に致命の拳を腹に叩き込んで。

「──かッ」

「単純に腹立たしかったなぁ。だってあの子と違ってぼくに見せる魔法をなんにも持ってないのに、そのくせ強いんだもの。だから殺すよ、だってさ」

そうして。

悍ましいほどに無邪気で傲慢な口調で、手向けとして告げる。

「──ぼくより足の速い生きがこの世に存在して良いわけがないよね?」

冗談のような速度で、遙か彼方まで吹き飛ばした。

一撃。

エルメスは魔法で、ルキウスは拳で。互いにそれぞれの得手、それぞれ最強であるはずの分野で尚一撃のもと打ち倒したカルマは。

そのまま周囲を、つまりこの戦い以外の戦況を見渡して告げる。

「……うん」

全てが思い通りに行っている、満足げな微笑みと共に。

「ちゃんと(・・・・)、魔たちが(・・・・・)優勢だね(・・・・)。

……これなら、他の人間たちもそんなに遠くないうちに皆殺しにできるかな。……まぁ、ぼくも暇だしお手伝いに行こっか」

そう言うと、無造作な振る舞いで尋常ならざる速度で地を蹴って。

──躙が、始まった。

次回は11月5日(土)更新予定。

決戦は出來る限り一気に書けるように頑張るので、ぜひ次回以降も読んでいただけると!

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