元S級冒険者である『紅鬼』シドがとある冒険者に敗北した。そんな噂が流れた。『紅鬼』の名は王都中、王國中に広まっている。しかも元S級と言っても貴族のお抱えとなるため冒険者を引退したため、未だその強さは現役當時のままであることは周知の事実である。そんな『紅鬼』を下した冒険者に人々は興味を示した。しかしその名前が流れてくることはなかった。

當事者であるメイリーはそんな事になっているなど知らず、この頃常習化している學院への無斷侵した際、テイルからその話を聞く。

「へー、そんな事になってるんですか。どこがそんな噂を？」

「第一王子の陣営だろう。リュート陣営の中心人の影響力を削ぐ狙いだな。それなら『紅鬼』敗北の噂に倒したメイリーの名前が無い理由も説明がつく。他の貴族はメイリーを俺のお抱え冒険者だと思っているから、リュートの近くにいる俺の評価を上げずにパトライ侯爵の評価だけ落とす。悪い手ではない」

「ほー」

興味無さげに相槌するメイリー。彼の自己分析では自の実力はまだS級には及ばないと考えていた。

彼にとって『紅鬼』との一戦は罠に嵌めた狩猟的なイメージが強い。結果としてそれほど苦戦せず勝利を収めたが、真っ向勝負であればもっと苦戦しただろう。それでも回復手段に富み、高火力の魔法を惜しみ無く放てる程の魔力を保有する自分の方が有利であると考えるが、それは相が良い所でのゴリ押しによる有利だと自覚していた。

「興味はないんだな。だが分かる者にはメイリーが『紅鬼』を下した事は分かるからな。これから勧や刺客が増えるかもしれないぞ」

「そうですか。まあ今回みたく強いのが來てくれるなら歓迎しますよ。今回の一件で得た課題もありますし」

「そうか…負けられないな」

そのためメイリーは自が長する養分が來る機會を逃すつもりはなかった。

そんな彼を見て起するテイル。このファモール國立學院でも指折りの実力をに付け、第二王子の右腕として貴族社會でも存在を示しつつあるが、彼のメイリーに釣り合う男になるという目標にはまだまだ遠い。事実は兎も角、テイルのお抱えとして認知されているメイリーに勧が続いているのがその証拠である。テイルも凄い早さで長しているが、それ以上にメイリーが長しているという事であるが。

「ああ、それとメイリーに直接ではなくステンド家やメイリーの家族を説得するという手法が取られるかもしれない。父やラカン殿は大丈夫だと思うが…」

「兄、ライルですか？」

「父からも聞いているが、跡継ぎ候補から下ろされ相當荒んでいるとのことだ。ゴロツキと共に良からぬ事を企んでいるという噂もな」

「…まあアレと誰が約束しても、それを私が守る義務はありませんし、義理もない」

「…そうだな」

口では冷たい事を言うが、面はついつい関わりがある人を助けてしまうお人好しであることを知っているテイルは、し心配しつつあえてそれを指摘はしないのであった。