《【書籍化】世界で唯一の魔法使いは、宮廷錬金師として幸せになります ※本當の力はです!》48.特効薬の効果

慌ててアトリエに戻った私は、できたての上級ポーションがったフラスコを手に取る。

「フィーネ、何をしているの?」

「さっき生した『特効薬』をミアさんに……!」

レイナルド様にそう告げて、床に寢かせられたミア様の脇に膝をついた。顔が悪くが紫になっていて、意識がない。呼吸もすごく苦しそうで、手が震える。クライド様を待つ時間がないのはひと目でわかった。

そのままミア様にできたての上級ポーションを飲ませる。ミア様にはいろいろ言いたいことがあるけれど、今は元気になってほしい。

フラスコを直接ミア様の口につけてポーションを注ぎ込む。意識がないのでうまく飲み込んでくれなかったけれど、しずつ口にるだけでも効果はあるはずだった。

特効薬とも呼ばれることがある、私が生する上級ポーション。お願い、効いて……!

祈るような気持ちでミア様を見つめて、數秒後。

「……まっずい」

ミア様のぱっちりした目が天井を映し、遠慮のない言葉がアトリエに響いた。よかった!

「ミアさん、大丈夫ですか⁉︎ 今お醫者さんが來ますから!」

「アンタ何飲ませたのよ⁉︎ 毒⁉︎ これ毒でしょねえ⁉︎」

毒ではないです。

むくりと起き上がったミア様は、さっきまで気を失っていたとは思えないほどにピンピンして怒鳴っていらっしゃる。おいしくはないみたいだけれど、とにかく効いてよかった。

「これが、特効薬か」

レイナルド様の息を呑むような聲が耳に屆く。私も目の前で効果を見たのは初めてだったので、驚きと安堵に包まれた。

ホッとしたら、自然と意識がこのポーションを作っていたときのことに遡る。

そういえば、生しながら私はお兄様の結婚式で食べたサラダとおの煮込みのことを考えていたような……! ウェンディ様をエスコートするレイナルド様を見た後に食べたあれはなぜか味気なくて、飲み込むのが大変だった。

とにかく、フラスコに殘った上級ポーションをちらりと見た私は、これを処分して作り直すことを決意する。効果は確かだけれど、味はひどいものらしい。

「フィーネ、ポーション、よく効いたみたいだね」

「レイナルド様、あの、殘りを鑑定……」

と思ったけれど、これは鑑定してもらわなくても『味1』に違いなかった。ずっと表が固かったレイナルド様も笑いを堪えているのが見えて、途端に恥ずかしくなってしまう。

『おいしくじられなかったご飯のことを思い出しながら生するのは』、これも、研究ノートに書き加えなきゃ……!

一方のミア様は私の手元にある特別にき通ったポーションの殘りを見て、驚いた表をした。

「すごく苦しんで気を失った人間を回復させるポーションなんて滅多にないわ。それにそんなきれいな……工房でも見たことがない」

「そ、そうかもしれません。これがここにあったのはまったくの偶然で、運が良く」

「偶然あったポーションを私に飲ませたってわけ⁉︎ 怖すぎるわよ! ていうかこれ本當に毒なんじゃないの⁉︎」

「そ、そうかもしれません」

味が不味くて本當によかった。ずっとその勘違いをしていてほしい。

けれど、ミア様は何かを思い出したように顔を変えた。

「違う……見たことがあったわ。アドラム男爵家に引き取られたばかりの頃、男爵が大金をはたいて弟に買ってくれたポーション……」

ぎくり、と私の肩は震える。

そうだった。さっきミア様のお話に『ごきょうだいが特効薬で回復した』というエピソードがあったような……!

焦り出した私を見て、レイナルド様が間にってくださった。

「このアトリエは俺のものでもある。今、『特効薬』は俺の手配でしか王宮にらない。それを考えたら、ここにそのポーションがあってもおかしくはないだろう」

「……でも、フラスコにっているってことは生したてですわよね……?」

訝しげなミア様に、レイナルド様が心したように呟く。

「変なところで勘がいいな」

私もそう思います……!

けれど、私が錬金師として生きていくなら、遅かれ早かれ明らかになることなのかもしれない。たとえば、簡単な構造を売りにして量産する予定だった魔力空気清浄機は、想像以上に反響を得てしまった。

一年位に商業ギルドに自分の名前で商品を登録したいという目標は葉ったけれど、私を取り巻く環境は急激に変わっていく可能があるのだ。

いまさらながら怖くなって、私は隣のレイナルド様を見上げる。すると、大丈夫、という風に笑ってくださった。

言葉はないけれど、なんとなくわかる。レイナルド様はずっと私の味方でいてくれるって。

周囲の見る目が変わっても、一緒にこのアトリエで研究をして、私が好きなものを守ってくださると。

お兄様の結婚式でレイナルド様と踴ったときに告げられた決意が思い浮かぶ。私は強くなりたいけれど、共に歩んでくれる人がいるのなら、し頼ってもいいかもしれない。

――もちろん、私だってレイナルド様やクライド様を助ける。

決意を固めた私は、大きく息を吸った。

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次回の更新は11/6の20時を予定しています。

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