《吸鬼作家、VRMMORPGをプレイする。~日浴と料理を満喫していたら、いつの間にか有名配信者になっていたけど、配信なんてした覚えがありません~》23.なんて甘な響きでしょう

ここから二章突となります!

後片付けとギルドとの會話も終わったし、無事ログアウトした僕は、詰め終わった荷を見つめ、しばし考。さすがにこれは持って行ける量ではないのでは……? かと言って、改造に時間がかかるなら荷は比例して増えるし、なによりVR機がないと篠原さんと合流が出來ない。

あと、いい加減洋士から連絡がないんだけど、部屋の模様替えの方はどうなったんだろうか。電話で聞いてみるのが早いかな。

「もしもし洋士? あのさあ、そっちに持っていく荷なんだけど……服が和服しかなくてかさばるんだよね。あと、期間がどれくらいかかるかわかんないからVR機ないと仕事出來ないんだけどって言う……」

『洋服とコクーンはこっちで既に用意済みだ。言ってなかったか?』

「聞いてないよ馬鹿! 聞かなかった僕も悪いけど!」

『そうか、悪いな。それで? いつなら良い? こっちの準備は整ったぞ。ちゃんと遮ばっちりの部屋を用意した』

「ああ、うん……服とVR機の心配が要らないなら、僕の方もいつでも大丈夫」

『じゃ、今日にするか。善は急げと言うしな。夜にはそっちに著くはずだ』

えっ……切れたんだけど……善ってなに? いや、いつでも良いって言ったけど今日ってさ……それ以前に準備整ってたのに連絡くれなかったの? てか、服のサイズ知ってるの……? あいつやっぱり馬鹿なんだな? いやいや、ソーネ社にも迷掛けてるし、送迎して貰う立場だし、こんなこと考えちゃ駄目だな。落ち著け僕。

「荷はともかく、冷蔵庫の中の料理はどうしようかな……誰も食べる人いないし、捨てるのも勿無いし……」

ご近所さんに配ったらけ取ってくれるかな? 夜には洋士が來るらしいから、夕方ならギリギリ歩けるかな。幸いなことに、今日は天気が悪いし。

パウチは洋士が來てから保冷剤毎クーラーボックスにれれば良いか……、もしかしたらそれもあっちにあるから要らないって言うかもしれないし。

待った、パウチ不要だったら荷らしい荷、ほとんどないのでは……?」

未読書籍となんかアメニティーグッズ的な?ものしか要らないんじゃないかな。となると迎えに來て貰わなくても良かったかもしれない。前回集會に顔を出したとき同様、夜行バスとカプセルホテルをはしごすればどうにかなった気が……。

そう思ってパウチについて確認する為に洋士に電話してみたけれど、出なかった。え、もしかしてもう移してる? いやいやそれはいくらなんでも……、あ、でもここまで來る時間を考えたら出ててもおかしくないのか……。

仕方がない、パウチがあってもなくてもお世話になろう。

「昔はともかく、今じゃもう洋士にお世話になりっぱなしだし返せるものがなにもないなあ……」

あいつは武らしい武はついぞにつけなかったから、昔はいつも僕が守ってたんだけど。いつの間にか武なんて必要のない世の中になっていたし、本當僕って……時代に取り殘されてるなあ。

§-§-§

「うわぁ……最上階が見えないほど高いんだけど……」

洋士の自宅に辿り著いた僕は、ちょっと引き気味で呟いた。地下駐車場にる前に一瞬見たじが既にもう想像以上だった。絶対高いだろうなとは思っていたけれど……これは億ションと呼ばれるもののなかでも絶対桁違いの建だ。

「ところで、なんで洋士はタワマンに住んでるの? 々デメリットも多いって聞くけど。それにメリットの一種の日當たりの良さって僕らにとってはメリットじゃないよね? あ、言いたくないなら無理にとは言わないけど」

「別に、誰かさんと違って日當たってもチリチリする位だしな、慣れれば全然平気だ。デメリットは確かに多いらしいが、俺らにとってもデメリットかと言うと、実はそうでもない。

停電時の水・食料の備蓄は一切必要ないし、いざと言うときに階段で上り下りするのも苦じゃない。

管理費や修繕費やらが高いと言えば高いが、その分コンシェルジュも常駐しているし、近隣には利便の高い施設が多い。マンションにも娯楽施設から店までたくさんあるぞ。スーパー・ジム・シアター・図書室……とかな」

「シ、シアター! 図書室! なんて甘な響き……」

「はは、絶対そう言うと思ったよ。お前の住人登録は済んでるから施設はいつでも自由に使える。二十四時間解放されてるから、夜中にでも行けば良いさ」

「じゅ、住人登録……?」衝撃の響きに僕はちょっと固まってしまった。僕住人になるつもりは一切ないのですが。

「ゲスト登録だと々制限があるんだよ。まあ別に常時住んでなきゃいけないわけでもないし、住人登録のが手っ取り早かっただけだ、深い意味はない。ま、ここが気にったら住み続けたって良いんだぞ? 俺としてもその方がなにかやらかすんじゃないかと心配せずに済むしな」

「失禮な! まるで僕が常時やらかしてるみたいじゃないか……」

抗議してみたものの、ここ最近のやらかし合は正直かなり自分でも問題があると思っているので強く言えない。いっそのこと作家業をやめて昔みたいに太と友に寢起きする生活になれば誰にも迷をかけずに済むのかな……。

「そう言えばさ、準備整ったときになんで連絡くれなかったの? 洋士の格考えたら絶対忘れないと思うんだけど」

「ん? それはお前がイベントだなんだと忙しそうだったから……」

ん? イベントの話って洋士にしたことあったっけ?

「あれ、イベントがあるって言ったことあったっけ?」

「いや、ほら、ソーネ社の人に聞いたんだよ。シヴェフ王國民だから今は忙しいって、うん」

「あ、なるほど……」吸鬼代表として先に洋士がソーネ社とのやりとり・データ提供をしてくれていた訳だし、そこ経由で聞いたなら納得だ。

「あれだ、お前。獨り言には気を付けろよ。ゲームとかでも運営が見てる可能は十分にあるんだし。お前のこと知ってるのは上層部とコクーン改造グループの一握りだけなんだから」

「あ、うん。分かった。もしかしてソーネ社からなんか言われたり……?」

「いや、別に。お前が普段から獨り言多いから俺が勝手に心配になっただけだ」

話しているうちに、洋士の部屋の玄関まで辿り著いた。いやあ、時代の流れって凄いな……。五十九階まで登るのにエレベーターですぐだし、なにより六十階建ての建が存在するのが凄い。とにかく凄いしか言えない。

部屋にって一通りの間取りの説明をけたあと、いよいよ間借りする部屋とのご対面。

「お、お邪魔します……」

そっと扉を開けてるとそこは――、

「えっ和室!?」

「ああ、元々和室なんだ。お前が一番違和じないだろうからここにした。嫌なら別に洋室もあるが」

「いや、ここが良い! ありがとう。まさか東京に來てまで和室で過ごせると思わなかったからびっくりしただけ」

「そうか。見て分かると思うがコクーンは勝手に置いておいた。ああ、改造するのもその筐(きょうたい)だから、好きに使って良いぞ。それから布団は押しれの中にってる。洋服の類いは全部そこの簞笥の中だ」

「あ、うん……。って言うかコクーン代金は!? ちょっと待って、払うから口座番號……」

「要らねえよ」

「いや、そんな訳にはいかないでしょ、これものすごく高いし」

「こんなの、俺の養育費用に比べたら微々たるもんだろ?」

「あの當時の生活でこんな金かかる訳がないでしょ……」

「赤ん坊のときから人するまでだぞ? どう考えても超えてる。たまには親孝行させろ、良いから黙ってけ取れ」

確かにタワマンほぼ最上階に住んでる洋士からしてみれば端金なのかもしれないけれど、いくらなんでもなあ。でももし洋士が、僕が洋士を育てるまでにかけたお金を気にしていたのだとしたら、彼の気持ち的にけ取った方が良いんだろうし……。

「今まで一度もそんなこと気にしたことなかったじゃないか」

「気にしなかったんじゃない、恩返しをする機會がなかっただけだ。東京に住めってずっと言ってたのに無視して、気付けば勝手にど田舎に家を買ってるし、機械音癡過ぎて家電を買うことも滅多にない。今回だってゲーム始めたなんて俺は聞いてないぞ! 摂取問題がなかったら相談すらしてこなかっただろう」

「なんだよ、なにか言う度に面倒臭そうな態度取るくせに相談すれって?」

「そりゃお前が面倒な事態になってから相談してくるからだろ! もっとこまめに相談してこいって言ってるんだ!」

「ええ……」これはあれなの? 親孝行したいって言う息子の気持ちに気付けなかった僕が悪いじですか? と言うか、最近は家にも來なかったし、普通に嫌われてるのだと思ってたんだけど?

「と、とにかくだ。口減らしで山に捨てられた俺を育ててくれたんだから、謝の証としてせめてこれくらいは払わせろってことだ。……こんなこと言わせんなよ、くそ」

顔を赤くしながら洋士は部屋を出て行ってしまった。人の機微に疎い僕が悪いのだろう。我ながらこんなんでよく作家なんかやってるとは思う。

「そうか、洋士は僕に謝をしていたのか……。てっきり恨まれてるものだとばかり」

赤ん坊から人まで育てたと言っても、結局そのあと彼が危険に巻き込まれて命を落としかけたとき、いずれ洋士が後悔するだろうことを分かっていたにもかかわらず吸鬼に転生させてしまった。しかも僕は、自分が罪悪に囚われないよう、死に直面した洋士にどうするのか選択させたのだ。恨まれこそすれ、普通謝は絶対にしないだろう。

「あ、ソーネ社からなにか連絡あったか聞くの忘れた……でも今洋士のところに行ったら絶対空気読めない人だよなあ。

とりあえず、ほとぼりが冷めるまで部屋の中見て……本でも読むかな」

部屋の中を確認中、本當にジャストサイズの洋服が大量に用意されていることを確認した僕は、そっと簞笥の扉を閉めたのだった。息子がストーカーみたいで怖いです。

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