《真の聖である私は追放されました。だからこの國はもう終わりです【書籍化】》31・久しぶりの再會
「あ、あの時のドラゴンですか!?」
男に向かって、私は大きな聲を出してしまった。
……はっ! しまった!
「ドラゴン?」
門番の方が、怪訝そうな目つきで私を見る。
「わ、わわわ! ち、違います! この方は……」
「この方は?」
私は男に指を差し、こう続けた。
「ドラゴン研究家の方です! 私が昔住んでいた街で、この方はドラゴンについて調べていたんですよ。それで四六時中『ドラゴン、ドラゴン』と言っていたせいで、あだ名が『ドラゴン』になってしまって……」
正直苦しい言い訳だと思った。
だっていきなりこんなところで出會うとは思っていなかったですもの……しどろもどろになってしまうのも仕方がない。
しかし門番は、
「そうでしたか! エリアーヌ様のお知り合いでしたか!」
と納得してくれたみたいだ。
良かった……この方、あんまり考えるタイプじゃなかったみたいだ。
「我はドラゴン研究家ではな——んぐぐぐっ!」
男が余計なことを口走る前に、私は彼の口を塞いで門番からし離れた。
「……どうしてこんなところにいるんですか? しかもどうして人間の姿なんかに……」
門番に聞こえないように小聲で言う。
そうなのだ。
この男……というかドラゴン、私が王國にいた頃の數ない話し相手だったのだ。
——あれは私が王城に幽閉されて、暇してた頃。
ろくに外出も出來ない憂さ晴らしで、試しに遠くへ念話を飛ばしてみたのだ。
とはいえ念話を信することの出來る者は、相當ない。念話に対応出來るだけの魔力を持っていなければならないからだ。
だからほとんど暇潰しの覚でやってみたんだけど……。
『誰だ? 人の分際で我と話そうとする愚か者は?』
と答えてくれる人が現れた。
まさか答えてくれる人がいるとは思わず「え!?」と驚いてしまったが、すぐにその方と信を始めた。
「あなたは誰?」
『我か? 聞いて驚くがいい。我は世界の覇者、ドラゴンである』
えっへんとばかりにドラゴンがを張った気がした。
いや念話では相手の姿が見えないので、気がしただけだけど。
最初は冗談だと思った。
だけど彼と會話を続けていくうちに、どうやら冗談ではなく本當にドラゴンであることが分かった。
どうやらドラゴンも暇だったらしく、私達は文通友達ならぬ『念話友達』となって、他もないことを話していた。
「聞いてください。婚約者のクロード王子ったら、私のことをゴミを見るかのような目で……」
『うむ。前々から思っていたが、そのクロードとかいう男は本當にクズだな。我には汝の辛さがよく分かるぞ』
なーんて。
最初は「怖いドラゴンなのかな?」と思っていたが、意外や意外。話してみると聞き上手で話しやすいことが判明した。
そして現在。
そういえば王國を追放された時、ドラゴンに伝えるのをつい忘れていましたわね……。
まさかこんなところで再會するとは。
「まさか本當の姿になって、街の前に姿を現すわけにはいかないからな。混させないように、人の姿になっているのだ」
なるほど。ドラゴンの言うことにも一理ある。
でも……どうしてこんな形の男子に!? こんなイケメンと話すと、張しちゃうじゃないですか。
「それにしてもエリアーヌよ、我がドラゴンであることがすぐに分かったのだな」
「當然です。あなたのような膨大な魔力、そうそういません。私、魔力で人や魔の個を判別することは、得意なんですから」
「なるほどな」
うーん……信じがたいけど、やっぱりあの時のドラゴンですわよね。
人の姿になって力が抑えられているとはいえ、魔力はそう簡単に変えられるものではない。
「で……もう一度聞きますが、どうしてここにいるんですか? あなたは確か王國近くの竜の巣で暮らしていたはずでは?」
「うむ……そのことだが……」
その後、ドラゴンから簡単に話を聞いた。
どうやら私が追放されてから、ドラゴンは結界が消失していることに気が付き、王國に向かったらしい。
そこで私の追放を聞き、怒ったドラゴンは気晴らしに世界中を旅していた……ということだ。
ドラゴンですからね。高速で飛び回ることも可能だろう。
それにしても「ちょっと今日の晩飯、買いに行ってくるわ」と言わんばかりの気軽さで、世界旅行をするんですね。
「そしてこの近くを通りがかった時、街をすっぽりと覆い盡くす結界に気付いたのだ。こんな結界を張ることが出來る人間、エリアーヌしかいないからな」
「ああ……そういうことですか」
まさか結界が、こういう効果を生むとは思っていなかった。
「けど、ドラゴン。久しぶりにお會いすることが出來て、私も嬉しいですよ。元気そうでなによりです」
「それはこちらの臺詞だ」
でも……念話友達のドラゴンが、擬態しているとはいえこんなイケメンだなんて……。
ちょっと混しちゃう。
「立ち話もなんだ。エリアーヌよ、久しぶりに語り合わないか? つもる話もあるだろう」
「ふふ、それはナンパですか?」
「ナンパ……?」
「好意のあるの子をデートにう行為ですよ」
ドラゴンと久しぶりに顔を合わせて、この時の私は上機嫌だった。
だからこんなガラにもない冗談を言ってしまったのだ。
しかしドラゴンは顔一つ変えず、
「うむ……好意のあるの子か。ならばナンパで間違いない。我はエリアーヌのことが好きなのだからな」
とんでもないことを口にした。
え……? ドラゴンが私のことを?
って私はなに本気で考えているんでしょう!
今はイケメンに擬態しているけど、目の前の男はドラゴンなのだ! そもそもドラゴンと人じゃ種族が違う!
きっと彼の好きというのは、『話し相手として』という意味に違いない。
「あ、ありがとうございます……まあけど、せっかくドラゴンがおいしてくれているんですから、無下には出來ませんね」
と私はなんとか返すことが出來た。
深呼吸深呼吸。
自分のペースに戻そう……。
「ですが、適當な喫茶店にってというのは無理です」
「どうしてだ?」
「そりゃあ……あなたは人間ではないのですし、々と問題があるのでしょう」
いくら相手が良いドラゴンだからといって、私の一存で街にらせるわけにはいかない。
「ナイジェルに聞いてみます」
「ナイジェル? それは何やつだ?」
「信頼出來る人ですわ」
ナイジェルには恩義もありますし、隠し事が出來ませんわね……。
それにしてもナイジェル、ドラゴンがやって來たと言えばどんな顔をするだろうか。
彼のことだから、私が丁寧に説明すれば悪いようにはしないと思うけどね。
私はひとまずドラゴンを門番の方に預け、王城へと戻った。
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