《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》4
ふと目線をやれば…輿れの時に持ってきた鞄の隅に手紙があったのだ。シンプルながらも、丁寧な宛先の筆跡にピンときた…ミーナからの手紙だと。
公爵家から私以外の人を連れて行くことを許されず、ミーナはペティグリュー家に殘ることになった。ただ輿れした數年後、病によって倒れたと連絡がきてーー。
ナタリーが去った後のペティグリュー家がどうなったかは知らないが、きっと楽しかったあの頃とは違うのだろう。
しかし、ミーナのことを思うと…なにもかもが億劫だった手が本能的に、その手紙を取る。
「親なるお嬢様へ
鞄の中へ不作法にれてしまい申し訳ございません。別れの日に、渡す時間が取れそうもなく…このような手段を強行しましたことお許しください。
突然の戦爭にペティグリュー家は巻き込まれ、全てが変わってしまいましたね。あの日がなければ、きっと皆様で笑い合える日常があったかと思うと…悔しくてなりません。
そしてお嬢様も、同盟國へ行ってしまい…。
しかし、ずっと後ろを向き続けてはいけない…できることをしようと、私は思います。
お嬢様が最後に命令して下さった…旦那様と奧様の墓石を作る手配が完了致しました。
お二人の墓石を、私はずっと守っております。だから、もし生活が落ち著きましたら墓參りに來てくださいませ。
きっと天國にいる旦那様も奧様も…お嬢様にお會いしたいと思ってらっしゃいます。
どうかナタリー様に幸せが訪れますよう。
を込めて ミーナ」
(…會いたいよ、お父様、お母様、ミーナ)
ナタリーの頬を熱いものがつたう。とめどなく、溢れるように止まらなかった。近くにあった窓を見やれば、庭先の風景が見える。秋空に寂しく咲くコスモスがあってーーそういえば、お母様はコスモスが好きだったとーー懐かしさを覚える。
手紙をぎゅっと握り、ナタリーは決心した。ユリウスに離縁を申し込もうと、どうせなどなく…こちらを悪者にする公爵家にとってナタリーなど要らない存在なのだから。
(分なんていらない。あの故郷に帰りたい。そこで死のうが関係ない…大切な人たちが待つあそこへ)
そう思えば、ナタリーの行は早かった。納屋のような部屋の扉を開けて、ズンズンとしっかりと踏み出す。目指すべきは、もうほとんど顔も合わせないあの男の元へーー。
◆◇◆
十數年も住めば、覚えたくなくても屋敷の間取りはわかるようになった。だから、この時間に必ずいるであろう執務室へ向かう。
ノックをせずにバンと勢いよく扉を開いた。禮儀などもう、どうでも良いと思ったからだ。むしろそれを理由にさっさと離縁してくれるのであれば、儲けだと思うくらい。
「……無禮だな、なんだ」
「……」
室には二人の存在。一人は目當ての公爵でもう一人は、きちっとした禮服を著込むジュニアだ。ジュニアは、見ない間に隨分とユリウスの貌と似てきていた。
「その…っ!」
「はぁ、まあちょうどいい…お前のことについて苦がきている。改めるように今から伝えよう」
「私の話を…!」
ユリウスの口から出たのは、ナタリーの行を制限する言葉だった。栄養失調ぎみだったナタリーの聲を遮るように、今後屋敷で暮らすためのルールを命令される。
部屋から決して出ないこと、子どもの教育に文句を言わないこと、公爵家の資産に手をつけないこと…もうどれもナタリーにとって目新しくないことばかりで。公爵家の人間たちが、ナタリーを敵視しユリウスに言ったのかもしれない。
しかし、そんなことはどうでもよかった。自分の言いたいことを言おうと…聲で遮られないように…ユリウスの言葉が終わるまで待ったのだ。
そして待ちに待ったその瞬間ーー。
「ほら、今後の生活に関する予定表だ。お前の意思など考慮に値しない。口答えは決してするな」
窘めるようなその視線に、ナタリーの中でプツンと何かが切れる音がした。しかしナタリーの表なんておかまいなしに、ユリウスは続ける。
「公爵家のものを與えすぎたから、お前は禮儀も弁えない人間になったのだろう。…このままの暮らしが、どれだけ優遇されているか理解しているのか」
私の意思は見ないーーそれは、離縁をしてくれない…どころかナタリーを縛り付け、両親、ミーナのところへ行くことなんて…夢のまた夢になる。もう我慢がならなかった。
「…死んだほうがましですわ」
だから…そう、言ったのだ。そして、短剣で自分のを一思いに…刺した。
◆◇◆
(あれほど切していた…お父様とお母様の笑顔がこんなに近くにあるなんて…)
そして、朝食を食べるナタリーの側には…微笑むミーナがいる。
本當に夢みたいな瞬間だと思った。しかし、先程じた頬の痛みや一口ずつ噛み締めて食べる食事が…ナタリーが確かに“ 生きている ”という実を與えてくれる。
談笑しながら食事ができる大切な時間…この時間をもう無くさないように。自分で守りたいーーなにより、もうあの地獄のような日々は勘弁なのだ。
(だからこそ、お母様の不調と戦爭をどうにかしなければーーいけないわね!)
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