《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》13
「…なにか、用かしら?」
怒りが収まっていない元義母は、ナタリーを睨みつけながら言葉をかけてきた。付近に視線をやれば、會場にユリウスの姿がないことがわかる。きっとこれも、元義母の行を大膽にしているのかもしれない。ただ、いたとしても…抑止力があるかはわからないが。
また、「あたくし、今…この令嬢のせいで、ドレスがダメになってしまったの!そのことを話しているから…邪魔しないでくださる?」とも。元義母の態度によって、件の令嬢は委してしまっているようだ。
「…そのお怒り、この場にはふさわしくないと思いまして」
「…な、なんですって?」
元義母はしたじろぐ。まさかナタリーが、自分に言い返してくるなど思ってもみなかったようだ。そして、ナタリーは以前の記憶と違う存在に目を向ける。それは、元義母のドレス――床にあふれんばかりのシフォンをひっかき、くつろぐ存在。
「にゃあ」
「王家のシンボル――國獣(こくじゅう)の獅子様が楽しんでおられます。今回の一件も、獅子様の戯れによる部分が大きいでしょう」
ドレスの下にいたのは、王家の象徴である獅子の子どもだ。大きくなれば、國が管理する場所へ運ばれるが――小さい頃は、王城の至る所で放し飼いにされている。國獣は、王家にとって繁栄の象徴。だからこそ、他國でも王城で放し飼いにしている所は多い。
ビリビリビリ―――
黃金の並みをもった獅子は、元義母のドレスが相當気にったようだ。かなりの勢いで破いている。それを見た元義母は、「なっ」と驚くのみ。
國獣は、神聖であるため…「その行」は基本的にありがたいもの、良いものだと考えなければならない。もちろん人の命を脅かすことは看過できないが、遊びでを壊してしまうのは仕方ないとされている。
むしろ近づかれるのは幸運だとも――。
今回のドレスのシミは、の衝突の他に…この大きな子貓(獅子)の力も関係しているだろう。子どもながら、ひっかく力があり――元義母がついをぶつけてしまうほどに。
「ですから、獅子様の幸運として…今のお怒り、鎮めてくださりませんか?」
「な、な…」
最後に元義母の耳元で、「これ以上は、お心の狹さが明るみになってしまいますゆえ」と忠告する。それを聞いた彼は、みるみるうちに顔が赤く染まっていく。過去の記憶で、見なかった獅子はナタリーにとっても幸運を運んでくれた。
(未來が確かに変わっている…ということなのかしら…)
ふと、顔を獅子から外せば――こちらからし離れた場所で、エドワードが楽しそうにこちらを見ている。ナタリーの行が周りに目立ってしまったかもしれない。件の令嬢も、張の糸がほぐれた様子だ。
大事になっていく前に、「寛大な心、謝いたします」と言って離れようとした――が。
「あ、あなた…よくも…あたくしに、このあたくしに恥をかかせてくれましたわねっ!」
「…え?」
「ゆるさないわっ!」
顔を赤らめながら、元義母はナタリーに怒りのを発させる。理がなくなったのか、散らばったガラス…特に大きなものに対して手をかざした。その瞬間、まるで意思を持ったかのように大きな一片のガラスがく。魔法の力でっていることは明白だった。
そして素早いきで、ナタリーの方へ突き刺さろうとする。あまりに突然だったため、対処ができず、避けきれない…もうダメだと目をつむった――その時だった。自分の前から鈍い音がする。
(…でも、痛みはやってこない…わ)
おかしな音に、恐る恐る目を開ければ…逞しい手がガラスを摑むように握って――鋭い切っ先が深く食い込み、赤いが滴っていて――。
「そん、な」
「…っ、大丈夫か」
息を切らしながら、そのガラスを摑んでいたのは…ユリウスだった。周囲に事態の理解が及んだのか悲鳴があがる。ユリウスは勢を整えながら、元義母に向き合って。
「…母上、この狀況は許されませんよ。ご理解していますか」
「…っああ!ユリウスっ!手が…あなたの手が…」
元義母はサーッと青ざめ、その場にへたり込む。その衝撃にびっくりしたのか、獅子は逃げ出し――その最中、元義母は気絶してしまった。
「…まったく、マルク!母上を、馬車に」
「えっ!わ~!大変なことになってるね~。ユリウスのお母様、失禮しますよ~」
ユリウスに呼ばれたマルクが、元義母を運んでいく。そしてユリウスは、怪我をした手をサッと隠し。件の令嬢に「母上が迷をかけたようで、追って謝罪を」と言えば、令嬢は首を左右に振り「大丈夫ですので」と答えて…足早に走り去った。
よほど怖かったのだろうか…と令嬢の後ろ姿を見送っていれば、ユリウスはナタリーに向き直って。
「すまない…大丈夫か」
「…え?ええ。それよりも、あなたの手…」
「それなら…よかった。ご令嬢の屋敷に謝罪を送るので…」
「い、いえ…その別に…」
ナタリーの返事に対して、ユリウスは眉をしかめて…何かに耐えるような顔をした。それから、周りへ聲を出す。
「…お騒がせして、申し訳ございません。失禮いたします」
そう言って彼は、會場から出て行く。それに続いて國王が、「獅子様が元気にはしゃいでいたようだ…みな、引き続き、舞踏會を楽しんでくれ」と聲を出した。それによって、貴族たちはまた華麗な空間で談笑を再開していく。
散らばったガラスやドレス素材を、城の使用人たちが掃除し始める中――ナタリーはユリウスが出て行った扉を見つめる。今日は舞踏會、醫者はほとんど見かけない。また王家の醫者に至っては、第一王子にかかりきりだ。
そうしたら、彼はどうやって…あの酷い怪我を治すつもりなのか。
止をして、屋敷まで処置をしないつもりなのか。
考えを頭に巡らせた瞬間、衝的にドレスを両手でたくし上げて…ナタリーはユリウスが消えた扉の先へ走り出した。
お読みくださりありがとうございます!
⭐︎の評価を下さると、勵みになります。
よろしくお願いします!
【書籍化決定】公衆の面前で婚約破棄された、無愛想な行き遅れお局令嬢は、実務能力を買われて冷徹宰相様のお飾り妻になります。~契約結婚に不満はございません。~
「君に婚約を申し込みたい」 他に想い人がいる、と言われている冷徹宰相に、職務のついでのようにそう告げられたアレリラは。 「お受けいたします」 と、業務を遂行するのと同じ調子でそれを受けた。 18で婚約を破棄されて行き遅れ事務官として働いていた自分の結婚が、弟が子爵を継いだ際の後ろ楯になれるのなら悪くない。 宰相も相手とされる想い人と添い遂げるのが、政略的に難しいのだ。 お互いに利があるのだから、契約結婚も悪くない。 そう思っていたのだけれど。 有能な二人の、事務的な婚約話。 ハッピーエンドです。
8 80腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが
授業中によくある腹痛によりトイレに行こうとした主人公の高校生藤山優。しかしドアが何故か開かない。なんかこれ神様の結界らしい。しかしもう漏れそうなので結界ぶち破ってトイレ行っちゃった。 ふぅ…スッキリ。―――あれ?誰もいなくね? オタクの主人公からしたらとても楽しみな異世界生活。しかし待っていたのは悲慘な現実だった。 イチャイチャ×王道最強主人公×復讐のクラス転移ものです! ※ハーレムはないのでご注意を 2018年 8月23日 第1章完結 2019年 1月7日 第2章完結 2019年 6月9日 第3章、物語完結。 作者の別作品 「美少女転校生と始める學園生活」 「クレイジークラスルーム」 Twitterやってます。 @harakuda4649 フォローの方お願いします。
8 134Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜
全校集會で體育館に集まっていた人間達が全員異世界に召喚された!? おいおい冗談はよしてくれよ、俺はまだ、未消化のアニメや未受け取りのグッズを元の世界に殘してきてるんだ! え、魔王を全て倒したら元の世界に返してやる? いいよ、とっととやってやるよ! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 學校関係者全員が勇者召喚されたとある高校。 〜元の世界に殘してきた、あなたの大切な物の數だけ、代わりにチートスキルを付與します〜 神のその言葉通りに全員が、それぞれ本當に大切な所持品の數だけチート能力をもらうことになる。 全員がだいたい平均2〜4くらいしか付與出來なかったのだが、重度のコレクション癖のある速水映士だけは1000ものスキルを付與できることになっていて!? しかも最初に極運を引いたことで、後に付與されたスキルが超再生、超成長、更には全屬性特攻etc,etc……というあからさまに強そうな能力たち! 元の世界ではただのヲタクソ野郎である彼がこの世界では英雄! しかし、彼は英雄の座には興味を一切示さず!? 「魔王なんてサクッと全員倒してやる。俺には、さっさと地球に戻って未消化のアニメを消化するっていう使命が殘ってるからな!」 ギャグ要素強めな情緒不安定ヲタクソ野郎×チート能力の組み合わせによる、俺TUEEEE系異世界ファンタジー! ※小説家になろうにも投稿しています 《幕間》噓つきは○○の始まり、まで改稿済み 2018/3/16 1章完結 2018/6/7 2章完結 2018/6/7 「いや、タイトル詐欺じゃねぇか」と指摘を受けたため改題 第63部分より3章スタート 第2章まで完結済み 2月3日より、小説家になろうにて日刊ランキングに載せていただきました! 現在作者都合と病弱性により更新遅れ気味です。 《番外》は一定のテーマが當てられてます。以下テーマ。 2018バレンタイン→初めてのチョコ作りをするシルティス 2018ホワイトデー→理想の兄妹の図が出來上がるエイシルコンビ 2018エイプリルフール→策士な王女様と騙された勝気少女 ◇◇◇ ご不明な點がございましたらコメントかTwitterのDMにどうぞ 7/9 追記 公開しようと予約した一括投稿のうち最終話のみ、予約ではなく後悔にしてしまっていたので削除しました。 全體的な更新はまだ先になります。
8 156天才の天災
天才で他に興味があまりない主人公である氷上 蓮の異世界で自由気ままな旅物語
8 61クラス転移はts付きで
教室にいきなり浮かび上がった、魔方陣、それを認識すると僕は意識を失っていた。 僕が目覚めるとそこには美少女と爺が抱き合いながら「勇者様を召喚できた!」と喜んでいるのが目にはいった。そして僕は思った。――なんだこの混沌とした狀態は!?―― この話は異世界にクラス転移(全員ts付き)で魔王を倒すために連れられてきた勇者達の物語。 基本コメディ(グロいのが入らないとは言っていない)で軽い文章です。暇なときにはオススメ?
8 129極限まで進化した頂點者の異世界生活
主人公の黒羽海斗は他の人間とは違うものを持っていた。完全記憶能力、そして、絶対なる力・・・破壊と創造の力を・・・ これは人間が進化をした先にもつ頂點の能力だった・・・ 力を使い、大切な物を守り抜く。 これはそんな主人公の異世界生活の物語。 注意無雙はしません。 応援お願いします。 更新は進みしだい更新します。 不定期の更新だと思います。
8 174