《ニジノタビビト ―虹をつくる記憶喪失の旅人と翡翠の渦に巻き込まれた青年―》第93話 ホットサンドともやし
「おはよう、キラ。なんか眠そうだね?」
「おはよう。あー、いやほら、なんかちょっと考えちゃって」
「……そっか」
キラが言った「ちょっと考えちゃって」というのは決して噓ではなかったが、実際には「レシピを書いていた」という方が眠気に大きな影響を與えていた。ただこれはまだサプライズにしたいという気持ちがあったので、星メカニカに著実に近づいていることで々と考えたことにした。
しかしそれに対するニジノタビビトの反応にすぐに失敗したと思った。ニジノタビビトも自らとの別れを惜しんでくれているであろうことは察していたのに。しかし、まだ完していないレシピのことを今伝えることにも躊躇って結局言えなかった。
「あ、ほらレイン今日の朝何が食べたいとかあるか?」
「えっ、そうだなあ。……あ」
キラが慌てて話題を変えようとして発した言葉にニジノタビビトは悩んでから何か思いついたような聲を上げた。
「何? 何が食べたい?」
「いや、ホットサンド、食べたいなと思ったんだけど、流石にホットサンドメーカーがないから……」
ニジノタビビトは頻度は減ったものの、タブレットで食べたいものや作ってしいものを検索するという習慣が殘っていた。その中でこの前食べたフルーツサンドから派生して、サンドイッチの種類を検索してみたときにホットサンドが出てきて気になったことを思い出したのだ。しかし、ホットサンドを作るにはホットサンドメーカーという卓上で電気を使うものか、直火式の四角いフライパンが二枚くっついたようなものが必要ということは調べたときに知っていたため、言うのに躊躇ったのだった。
「ああ、ホットサンドか。食パンは確か冷凍のだけど四枚はあったからできるよ」
「えっ、でも道が……」
「大丈夫、ちょっと邪道かもしれないけど方法はあるよ」
キラはを教えるみたいで楽しくなって、ウインクなんてしてみせた。ちなみに、彼がウインクを誰かにして見せたのは出來るかどうか試したときの鏡の中の自分以外は初めてである。
「まず必要なのは食材と、食パンが丸々るフライパン、小鍋、それからクッキングシートだな」
ニジノタビビトはキッチンに立つキラの半歩後ろから手元を覗き込むようにした。キラはこれもレシピに書き出すかと思いながら、実際に手順をよく見ておいた方がいいだろうと思ったので整然と並べて説明をしながら作ることにした。
「食パンが六枚あったから、三種類できるとして……、材はベーコンとレタス。それから甘いの、チョコも作るか。あと俺のおすすめもやっていい?」
「うんもちろん! キラ、ベーコンレタスの方はチーズもれたいな……」
「おっ、いいなそうするか!」
キラはフライパン二つに鍋も二つ取り出して冷めないようにするためにもホットサンドを二種類同時に焼くことにした。
ただその前にまずベーコンを先に焼いてカリカリにする。ベーコンをカリカリにしたいときはひとつまみだけ砂糖を散らしてから焼くといいなんてちょっとしたコツをニジノタビビトに教えたりもした。
次にキラが取り出したのは冷凍していたもやしだった。なんとびっくり、食料補給した星で急速冷凍した期限の長いもやしなんてものが売っていたので々使えるかと買っておいたのだ。
それをキッチンバサミで半分か三分の一くらいの長さにしながらフライパンにあけて、ざっと炒めて塩胡椒を振った。それから醤油を周りにかけてからし焦がしてからもやしと絡めた。
「キラ、おすすめってもやし?」
「そうだけど、これがびっくりするぐらいうまい。まあ期待しててよ」
キラは自信ありげにそう言ってもやしを一度小皿の上にあけた。
ここまで読んでいただきありがとうございます! 次回更新は明日を予定しております。
こちらの小説が気にってくださった方、続きが読みたいとしでも思ってくださった方は、よろしければ想やブックマーク、この下の広告の下にあります ☆☆☆☆☆ をクリック、タップで塗るなどしていただけますと、とても嬉しく、何より読者様の応援、反応が一番のモチベーションに繋がります。よろしくお願いいたします。
ニセモノ聖女が本物に擔ぎ上げられるまでのその過程
借金返済のために紹介された話に飛びついたが、それは『聖女様の替え玉』を務めるというお仕事だった。 職務をほっぽり出して聖女様が新婚旅行に出かけちゃったので、私が聖女様に扮して代わりに巡禮の旅に行くだけの簡単なお仕事です……って話だったのに、ふたを開けてみれば、本物聖女様は色々やらかすとんでもないお人だったようで、旅の護衛には蛇蝎のごとく嫌われているし、行く先も場合によっては命の危険もあるような場所だった。やっぱりね、話がうますぎると思ったんだよ……。 *** 主人公ちゃんが無自覚に聖女の地位を確立していっちゃって旅の仲間に囲い込まれていくお話です。多分。 司祭様→腹黒 雙子魔術師→ヤンデレショタ兄弟 騎士団長さん→椅子
8 175貞操観念が逆転した宇宙人の軍隊でエースパイロットの俺だけが唯一男な話【書籍化決定!】
『戦場は女のものだ。男は引っ込んでいろ』そんな言説がまかり通ってしまう地球外知的生命體、ヴルド人が銀河を支配する時代。地球人のエースパイロットである北斗輝星は、その類稀なる操縦技能をもって人型機動兵器"ストライカー"を駆り傭兵として活動していた。 戦場では無雙の活躍を見せる彼だったが、機體を降りればただの貧弱な地球人男性に過ぎない。性欲も身體能力も高いヴルド人たちに(性的に)狙われる輝星に、安息の日は訪れるのだろうか? カクヨム様でも連載しています。 皆様の応援のおかげで書籍化決定しました。ありがとうございます!!
8 77俺、異世界でS級危険人物に認定されました
ある日の事、不慮の事故で死んでしまった主人公のハルは、神様から特別な力を授かる。 その力で、連れてこられた異世界、通稱セカンドワールドで、猛威を振るう。 だが、その力を恐れた異世界の住人は、ハルを危険視し、S級危険人物に!? 主人公最強系冒険物語!!
8 151神眼使いの異世界生活
鳴神創真は女神様の間違いで死んでしまった。 女神様はお詫びとして異世界に転生させてくれるらしい。女神様からもらったスキルは7種類の神眼だった。 超王道のファンタジー物語! 題名はまだ安定しません! 書いているのがただの高校生で初めての作品なので下手くそで読みずらいかと思いますがよろしくお願いします!
8 78永遠の抱擁が始まる
発掘された數千年前の男女の遺骨は抱き合った狀態だった。 互いが互いを求めるかのような態勢の二人はどうしてそのような狀態で亡くなっていたのだろうか。 動ける片方が冷たくなった相手に寄り添ったのか、別々のところで事切れた二人を誰かが一緒になれるよう埋葬したのか、それとも二人は同時に目を閉じたのか──。 遺骨は世界各地でもう3組も見つかっている。 遺骨のニュースをテーマにしつつ、レストランではあるカップルが食事を楽しんでいる。 彼女は夢見心地で食前酒を口にする。 「すっごい素敵だよね」 しかし彼はどこか冷めた様子だ。 「彼らは、愛し合ったわけではないかも知れない」 ぽつりぽつりと語りだす彼の空想話は妙にリアルで生々しい。 遺骨が発見されて間もないのに、どうして彼はそこまで詳細に太古の男女の話ができるのか。 三組の抱き合う亡骸はそれぞれに繋がりがあった。 これは短編集のような長編ストーリーである。
8 161歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~
極々平凡なサラリーマンの『舞日 歩』は、駄女神こと『アテナ』のいい加減な神罰によって、異世界旅行の付き人となってしまう。 そこで、主人公に與えられた加護は、なんと歩くだけでレベルが上がってしまうというとんでもチートだった。 しかし、せっかくとんでもないチートを貰えたにも関わらず、思った以上に異世界無雙が出來ないどころか、むしろ様々な問題が主人公を襲う結果に.....。 これは平凡なサラリーマンだった青年と駄女神が繰り広げるちょっとHな異世界旅行。 ※今現在はこちらがメインとなっております ※アルファポリス様でも掲載しております
8 144