《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》新星座【悪魔】座?!―衛星コンステレーション

宇宙居住船【ブリタニオン】のなかに警報が鳴り響く。

「また何かきやがったのか!」

苛立ちを込めてぶバルド。自ら戦って死ぬのではなく、実戦も経験した事のないような子供が戦っているのだ。

無力を紛らわすかのようだ。

『ライプラス後方から高速飛翔を確認しました。敵の本命かもしれません』

「ブリタニオンの中に突可能なのか?」

『通常では不可能です。アンティーク・シルエットの熾天使級程度のスペックなら裝甲を貫通されることもありません』

「熾天使級以上のものがあるってこったな?」

『ウーティスもよく存じているはず。星開拓時代の戦闘用シルエット――アナザーレベル・シルエットなら可能でしょう』

「可能はある。――しかしヒトでしかかないはずだ。ヒトとして認められたバルバロイがいるということか?」

『否と申しましょう。ヒトであるならば今回のトラクタービームによる引はオケアノスの忌にれ、何らかの処置が施されているはずです』

「幻想兵のように意思を持った可能は?」

『獨自行を起こすことは極めて希です。しかし何事も例外があります。あなたの五番機のように』

「そうだな……」

五番機もかつて乗り手がいないにも関わらず、マーダー相手に戦闘を行ったシルエットだ。それゆえに廃棄場に捨て置かれたのだ。

『しかしあえてその可能を否定しましょう。バルバロイに――もはや機械にMCSが寄り添うなどありえません』

あのプロメテウスが作ったシステムが、機械などに與するとはありえない事態だ。

『アナザーレベル・シルエットがブリタニオン攻略の鍵でしょうね。裝甲に孔さえ空けてしまえば、大量のライプラスが部からブリタニオンを躙するでしょう』

「あの數は無茶だな……」

何機いるか不明なほどの數だ。マーダーの群れ以上で、かつ単の戦力は現行戦車以上だ。

『一時間もあれば到著します。こちらのレーザーは実に無力ですね』

ヘスティアが自らの弱さを嘆く。超AIヘスティアは人間の生活を守るための爐床の擬神化がモチーフである。その特ゆえに戦闘能力などあるはずがなかった。

『ヘスティア。聞こえる?』

『聞こえるわ。アシア』

『一時間で接敵するね。ではオイコスたちを格納して防に極振りして。あなたの得意技でしょう?』

『羽蟲如きとはいえ、ファイティングマシンに取り付かれます。このままでは【ブリタニオン】の周囲に取り付いて、星アシアを侵攻するための拠點にする可能も高いのです!』

『わかっているわ。だからその羽蟲を一網打盡にするのよ。一匹殘らず絶やしにしてやるの』

『何を使うのですか?』

『宇宙専用自走雷【悪魔】を使うのよ。能はそこにいるウーティスに聞いてごらんなさいな』

「悪魔か。確かにあれなら……」

コウとアシアが構築した宇宙自走雷だ。コウ自能は理解している。

ライプラスには有効なはずだと信じたい。

『私が託したあれで、あなた格が変わってない?』

『ちょっとだけね?』

アシアが冷酷に笑った。コウも初めて見る表だった。

「ヘスティア! 何をアシアに託したんだ!」

『安心してコウ。私は私のままよ。侵略者に対する怒りが顕在化しただけだから』

「無理するなよ。アシア」

『うん! コウはそうやっていつも心配してくれるのね。――あー。羨ましかったわ。最初のわたしぃー』

自分自に対して嫌味を言い、通信が途切れた。

『ケアしてから渡したかったんですが、劇薬でしたね……』

やらかしてしまったことを実しているヘスティア。如実に後悔のが籠もっている。

「アシアに何を託したんだ! ヘスティア! いつものアシアとまったく違うぞ!」

『本人に聞いて下さい。のちほど【悪魔】の詳細を教えてくださいね』

ヘスティアの通信も途絶えた。

言い様のない不安を覚えるコウだった。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

軌道エレベーターを駆け上がる車の列は壯観だった。

ホイールカバー部分が半球形狀になっているが、パンジャンドラムそのものだ。

サイズは13メートル。パンジャンドラムにしては大型だ。

「なにあれ……」

「あれが【悪魔】よ。合計72輌の【悪魔】を連続して軌道エレベーターのてっぺん――10萬キロ以上の地點からブリタニオン方向へ放り投げるだけ」

「すぐに第二宇宙速度まで到達するよね?」

「よく勉強しているねエメ。星アシアの自転を利用するから投時から第二宇宙速度を。ロケットで加速してすぐに第三宇宙速度も超えるわ」

「でもそれならロケットでも良かったんじゃ?」

「ロケットではダメなのよ」

アシアは再び冷笑を浮かべる。

「あの羽蟲ども。――おっといけない。これはヘスティアの表現だからね? ライプラスも秒速數十キロでいている。そんなものをロケットミサイルで正確に命中させることはできないわ」

今のアシアは素で羽蟲と言い切ったと察知したエメ。融合していたのでアシアを理解しやすい。

「宇宙なら!」

「かつてパンジャンドラムは試作1號は16基のロケットを搭載していたというわ。直進せず暴れ回るため、開発者はジャイロを搭載するのではなく、ロケットを倍々に増やして最後は66基ものロケットを備え――さらにでたらめに転がり自軍を恐慌に陥れた。【悪魔】は72基のロケットを搭載してる」

「ゴエティアの悪魔數に合わせたんだね」

「私はギリシャ神話由來だからタロットの悪魔(デビル)ではなく、ギリシャの霊(ダイモン)が由來の魔霊(デーモン)を採用してゴエティアに倣ったかな。英國の歴史家オーウェン・デイヴィスによれば原典は古代中東と歐州であると述べているの。ゴエティアはフランス語の魔書(グリモワール)だけど、エジプトのパピルス紙で記載されたものを古代ギリシャ語で記録した偽典にまで遡ることができるんだよ」

「アシア。やっぱり英國面に墜ちてない?」

「墜ちてないよ? 悪墜ちをいわれることは覚悟してたけど、英國面に墜ちるってひどくない!」

「ごめんなさい」

しだけ膨れっ面になったアシア。英國面は心外だったのだろう。

悪墜ちの自覚はあるのだと安心したエメだった。

「ゴエティアはそんなに古い言葉だったんだね。【悪魔】は古い由來を活かしたものなんだ」

話題を逸らすように悪魔の話題に戻すエメだった。

「宇宙では自在にけることが重要よね。360度ける球形を活かしたロケットがあること。パンジャンドラムの真価は宇宙でこそ発揮されるの。あの球狀は軸が無くなれば、アルキメデス相対――三角形の72辺48面になるように作ったの!」

「數字遊びだね。聖數3――悪魔を封じる魔方陣三角形に、1からスタートする3つある正の偶數を総乗した48。――悪魔を解き放つつもりなんだね」

「エメは頭がよいね」

アシアが優しくエメの頭をでる。いつものアシアをじるエメ。

「でも、あのパンジャンドラムの數だと足りないんじゃ」

「安心してね。【悪魔】なら大丈夫」

安心と大丈夫を連呼されると余計に不安になってくるエメだ。

何らかの前フリにしか思えなくなっている。

「あの72の【悪魔】は協調した軌道を描くの。【ブリタニオン】を中心に、衛星コンステレーションを形する。星座(コンステレーション)だから悪魔座なんてどうかな」

「怖いよ!」

「地球から見た星にはアルゴル――アラビア語の悪魔の頭(ラス・アルグル)と名付けられたものがあってね。ペルセウス座のメデューサの頸にあたる部分の星。不自然に點滅する様子から最も不幸で危険な、兇兆を意味する星と言われたそうよ」

「もっと怖いよ!」

「怖がる必要はないわ。陸上で使えない兵裝だもの。電子勵起薬も搭載しているよ。金屬水素以外の元素も使ってね」

「え?」

「數字遊びよ。原子番號72の核異を使ったの。大気圏では使用止兵だけど、オケアノスの許可も下りたしね?」

アシアが嬉しそうににっこりとエメに笑いかける。

笑い返していいか判斷に迷うエメだった。

原子番號72――ハフニウムだとすぐに理解したのだ。

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!

悪魔の全容が判明しました。ぶち切れアシアによる衛星コンステレーション方包囲結界殺です。

悪魔と數字は相がよく、數字に関連付けて意味を持たせると把握しやすいですね。

72辺48面は出來過ぎかなと思いました。

そしてオチは例の弾です。手榴弾サイズで小型戦核程度なので、一部隊程度破壊できます。

ネメシス戦域ではマヘムでおなじみのDARPAが2008年頃まで研究していました。

毎回奇想天外兵を発案するこの米國組織ですが、インターネットの基礎であるARPANETを英國科學者ドナルド・ワッツ・デービスのパケット換(通信)をもとに大學と造り上げ、

GPSなど我々の日常にも関わる発明をしていたりします。

急展開続きますよ!

七巻の執筆がんばります!

アシアのブレーキがいない! アルキメデスという単語まででてくる始末! 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。

大変勵みになります! 気軽に想等もお待ちしております!

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