私は、目の前で倒れたに駆け寄る。

「大丈夫ですか！　醫師のサクラと言います聞こえますかー」

は首の位置を押さえて苦しそうな息をしている。

「サクラさん、彼は？」

「チアノーゼを起こしています。すぐに気管挿管しないと。ライムントさんすみません、手を貸してもらえますか？」

「もちろんです。人命が最優先です」

チアノーゼとは、中の酸素不足が原因といわれる。

皮や粘が青みがかった紫になってる。

しかし、呼吸困難に陥った原因って他にあると思われる。

「こんなこともあろうかと」

私は、カバンの中を漁る。

そこには、醫療セットがっている。

帰還挿管するには頭鏡でを開いてチューブを通す必要がある。

「頭鏡なんて持ってきてませんよね」

チューブはあるが、頭鏡なんていう醫療は私のカバンにはっていない。

「の向きを変えます」

「はい」

のの向きを仰向けに直す。

「し、落ち著きましたね。ちょっとるよー」

私はの腹部を診する。

「これは……」

彼の腹部にはわずかな膨らみがあった。

「そこの衛兵さんたちも手を貸してください！」

「「はい！」」

衛兵二人に聲を掛ける。

「あなたは、呉服店でハンガーを借りてきてもらえますか？　できればくて丈夫なものを」

「分かりました！」

「あなたは、擔架をお願いします。ここで応急処置をしたらすぐに病院に運びます」

「了解！」

私の指示で二人の衛兵はすぐに走っていく。

誰かの命を救いたいという思いはみんな一緒なんだろう。

「サクラさん、ハンガーなんて何に使うんですか？」

「頭鏡の代わりにします。それでを開いてチューブを通します」

「なるほど。さすがです」

この手の応急処置なら何度もやってきた。

「すぐ楽になるからね。絶対二人とも助けるから大丈夫だよ」

「二人って彼……」

「ええ、妊娠しています」

先ほど診した時に確信した。

彼は妊娠している。

「ハンガーです！」

その時、頼んでいたハンガーが衛兵によって屆けられた。

「ありがとうございます」

そのハンガーをけ取り、私はの頭の上に移する。

「もう一度橫になるよー。し苦しいけど我慢してね」

そう言って、ハンガーでゆっくり舌を持ち上げる。

「よし、見えた。チューブを」

「はい」

そのまま、チューブを通して、固定する。

すると、呼吸困難が落ち著いた。

チアノーゼも収まってきていた。

「擔架です！」

「ありがとうございます。すぐに病院へ運びましょう」

の隣に擔架を置く。

「123、で行きます。せーの、123！」

を擔架に乗せるとそのまま病院へと運ぶ。

「ここから一番近い病院は？」

「確か、市場を抜けたところに総合病院があります！」

「じゃあ、そこに運びます。手を貸してください！」

ライムントさんと衛兵二人の力を借りて病院へと急ぐ。

しかし、そこでもトラブルが発生した。

「ちょっと待ってください！　うちは未診妊婦さんのけれはしない決まりです！」

「狀況が悪化すれば急帝王切開になります。しでも早く処置しなければいけません！　あなたも醫者ならそのくらいのことわかるでしょ！！！！」

私は珍しく聲を荒げた。

それに、ライムントさんは一瞬驚いた表を浮かべる。

「未診妊婦さんは胎児も母もリスクが高くなる。だからけれられないんです！」

「今はそんなこと言っている場合じゃない！　私が処置します！　どいてください」

私はそこを強行突破しようとする。

「だめです！！」

「いい加減にしてください！」

醫師や看護師にそこを止められる。

その時だった。

「その患者はうちで引きける！」

その場をピシッと引き締めるような聲。

それは、何度も聞いてきた聲だった。

「相変わらずだなサクラ、患者のこととなると平気で無茶をする」

「師匠！　相変わらず病院のルールは無視ですか」

「院長権限で許可する！　早く運べ」

「ありがとうございます！」

私は院長の先導の元、を処置室へと運んだ。

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