《【書籍化&コミカライズ】私が大聖ですが、本當に追い出しても後悔しませんか? 姉に全てを奪われたので第二の人生は隣國の王子と幸せになります(原題『追放された聖は、捨てられた森で訳アリ青年を拾う~』》36 聖追放後 ~罰~2

やはりリアは護國聖だったのだ。それを思うとが震えた。

(罰がくだされた。この國は取り返しのつかないことをしたのだ)

レオンは確信する。

ニコライは護國聖を罪人として追放した。彼はその報いをけている。フリューゲルは、リアの追放劇に加擔し、プリシラの聖判定で不正を行ったのだろう。だから、霊から罰をけている。この二人が組んで、リアを追い出したのだ。

護國聖の背負っていた穢れが今二人にふりかかっている。

だいたいプリシラが聖とは思えない。彼は実の妹を庇うどころか公の場でひどく罵倒し、挙句の果てに追放先を西のいの森を決めるなどありえない。護國聖にしては行いが下品すぎる。

一方、リアの手柄を橫取りしたと思われるジュスタンはそれほど変わりがないように見える。もよく赤い髪も燃えるように鮮やかだ。ただその瞳はギラギラとを放ち、活力があると言うよりも狂気をめている様にも見えた。

(裏切り者のジュスタンとともに黒の森へと向かえとでもいうのだろうか? いや、この聖騎士はいったん黒の森へ向かったのではなかったか? なぜここにいる?)

レオンは警戒した。禮をして控えていると、ニコライが重々しく口を開く。

「レオン、ここにいるジュスタンとともに、リアを探し出し連れ戻してしい」

「はい?」

レオンはニコライの言葉に呆気にとられた。リアを連れ戻せることは願ってもないことだが、彼らは二月(ふたつき)ほど前に手ひどいやり方で、聖を追い出している。その舌のも乾かぬうちに連れ戻せとは開いた口がふさがらない。

やはり霊の怒りを買ったのだ。リアを連れ戻せば、許されるとでも考えているのだろう。自分たちの罪がそれほど軽いものだと思っているのか?

しかし、彼らのことだ。リアをすぐさま黒の森へ送るつもりなのかもしれない。追い出した彼を連れ戻し、再び森を鎮めさせる気なのだ。そこまで考えてレオンの顔は引きつった。勝手が過ぎる。

「レオン、陛下の前で不敬であるぞ!」

いつまでも沈黙するレオンにジュスタンの叱責がとんだ。レオンは我に返り、居丈高なジュスタンを睨みつける。しばし、ジュスタンとにらみ合いになり、場は迫した。

「まあ、良い。そのようなことより、神レオン、リアを探し出し、無事連れ戻したならば褒を取らせよう」

ニコライが言う。

しかし、今のレオンには褒などより大切なことがある。

「罪人として裁かれたリアは、護國聖としてこの國に戻って來られるということですか?」

黒の森が鎮まり、用が済めば、リアはまた同じように罪人として不當に裁かれるのだろうか? そんなことがあってはならない。

「レオン! 無禮であるぞ。口を慎め」

これまでのやりとりを苦々しく見ていたフリューゲルがついに聲を荒げた。しかしこれにも國王ニコライが「構わぬ」といって鷹揚に首をふる。

「神レオンよ。もとより、リアの刑は赦免している。出て行くことを選んだのは彼だ。

を見つけたならば、特別にこの國で優遇すると伝えてくれ、神殿でも高い地位を與えよう。それから生涯にわたる手厚い保護を約束しよう」

この手のひら返しは何なのだろう。自分たちが報いをけたからだろうか? それにしても相変わらず彼に対する謝罪の念はない。レオンは謁見の間で行われた斷罪劇以來、毎日のように罪悪に苦しめられていた。

「幸い、リアが生きていると思われる証拠もあるし、彼がいる地域はある程度絞られている」

それは初めて聞く話であるし、朗報だ。

「証拠とは何です? 聖リアはどこにいるのですか?」

レオンがことさら聖に力をいれて問うと、フリューゲルがイライラとした様子で口を開く。

「西の隣國、クラクフ王國のマルキエ領を中心に、効き目が異様に高いポーションが出回り始めた」

そう聞いた瞬間リアが無事にいの森を西へ抜けたとわかりほっとした。それと同時に人の好い彼はクラクフの神殿に利用されているのではなかろうかと心配になる。それとも自分から率先して民を助けているのだろうか?

レオンもアリエデの人間なので、隣國に対してあまりいい印象は持っていない。

「神レオン、聖騎士ジュスタンとともに、いの森へ向かってもらえないだろうか? もちろん護衛に小隊をつける」

いの森ですか?」

行き先がいの森とは驚いた。てっきり迂回して國境を越え迎えに行くのかと思っていた。

「忌々しい事にクラクフ王國では我が國の民が行く場所を制限している。マルキエ領にはれないのだ」

「つまり、國しろとおっしゃるのですか?」

そのうえ、兵士を連れてとは穏やかではない。

「レオン、いい加減にしないか。これは王命だ。聖騎士ジュスタンとともに向かえ!」

フリューゲルが怒鳴りつける。

いの森、リアを探しにった兵士が行方知れずになったという噂がある。そんな場所へジュスタンと行くとは……。功名心が強く、保に長けたジュスタンはこの命令に納得しているのか?)

しかし、ジュスタンの不遜な表からはが読めない。レオンは恭(うやうや)しく頭を下げる。

意。しかし、一つ質問をお許しください」

「レオン、貴様いい加減にしないか!」

フリューゲルはレオンのふてぶてしい態度に腹を立てた。レオンは神殿でも上位神に対して以前にもまして生意気な態度をとるようになっている。

しかし、今度もニコライがフリューゲルを制した。

「なんだ。いってみるがよい」

辛抱強くレオンに応じる。

なぜなら、ニコライにとって、レオンはリアを呼び戻すための切り札だからだ。リアはおそらくこの國でレオンだけを信頼している。

そのうえいの森は一度ると抜けられないと言われているが、過去に聖や神數人が通り抜け、無事隣國へ抜けた記録がある。もちろんこれは公にはなっていない。

恐らく信心深い者のみが通行可能なのだろう。ならば、レオンが先導すれば聖騎士ジュスタンを含めた小隊は抜けられるはず。クラクフ王國はリアを保護しているのに、アリエデに対してそれを匿している。力ずくで連れ帰るしかない。レオンはリア奪還に欠かせない人なのだ。

何としてもリアを連れ戻さなさければならない。霊の怒りをとき、一刻も早くリアに己のの不調を治させるのだ。ニコライは縋るような思いを無表の裏に隠していた。

リアを連れ戻せるものはレオンしかいない。聖騎士ジュスタンはレオンの見張りだ。とっくにジュスタンの本は知れている。保のためには己の妻すらあっさりと売る男。だが、この聖騎士は出世と褒をちらつかせれば決して裏切らない。

レオンがひたりとニコライに視線を據え、口を開いた。

「陛下、では遠慮なく。ジュスタン殿と私どちらが偉いのでしょう? 主導権が私にあるのならば良いのですが」

ぬけぬけと言うレオンにジュスタンは怒りで青ざめ、フリューゲルは卒倒しそうになった。

ニコライは心歯噛みする思いだった。

しかし、リアを連れ戻せるのもいの森をぬけられるのも、恐らく彼しかいない。

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