《【書籍化&コミカライズ】私が大聖ですが、本當に追い出しても後悔しませんか? 姉に全てを奪われたので第二の人生は隣國の王子と幸せになります(原題『追放された聖は、捨てられた森で訳アリ青年を拾う~』》39 靜寂を破る クラクフ ヴァーデンの森

ここから先、R15殘酷な描寫が予告なくります。苦手な方はご注意ください。

ルードヴィヒはここのところずっと調子がいい。

最近ではマルキエ領の仕事を手伝い始め、執務室で仕事をする姿も見られるようになった。

彼が生きる気力をとり戻しているようで安心した。本當に不思議だ。とても強い呪いにかかっているのに、穏やかに微笑む彼には悲壯や影がじられない。

初めて會ったときは儚げな印象だったが、最近では生き生きとしている。本當にこの人は長生きするのではないかとリアは思い始めていた。

きっとずっと一緒いられる。彼は約束を守る人なのだから。

その日は午後からルードヴィヒと森へイチゴを摘みにいく約束をしていた。

イチゴをたくさん摘んだら、じっくりと煮詰めて味しいジャムを作るのだ。リアは楽しみだった。味しいものを食べればルードヴィヒだって、もっと調がよくなるだろう。

しかし、その日森にったルードヴィヒはいつもより足を引きずっているように見えた。リアは心配になる。

合が悪いのですか?」

リアがあまりにも楽しみにしていたので、ルードヴィヒは無理をしてついてきてくれたのかもしれない。

しかし、彼の穏やかなまなざしと微笑は変わりなく

「大丈夫だよ。リアは心配のし過ぎだ。合が悪ければすぐにベッドに橫になるよ」

イチゴの群生地までは足場が悪い。リアは寄り添うようにルードヴィヒの橫に立つ。

「リア、私はゆっくり後から行くから、先にいって摘んでおいで」

「まさか。私はルードヴィヒ様と一緒に行くのです」

むきになって言うリアを見て、ルードヴィヒがくすくすと笑う。

その時、ふとリアは誰かが自分の名を呼んだ気がして振り返る。

「リア、どうかしたのか?」

察しのいいルードヴィヒが聲をかける。

「いま、誰かによばれたような気がして」

耳を澄ますが何もきこえない。

「気のせいみたいです」

そうは言うものの気になる。騒ぎがするのだ。そのとき森の奧でガサリと葉れの音が響いた。そして微かにの臭いが漂う。近くに傷ついた獣でもいるのだろうか。

「リア、気になるのなら行ってみてきてごらん」

「ルードヴィヒ様を一人にするわけにはいきません」

リアの言葉にルードヴィヒが苦笑する。

「心配するな。第一ここは森の口だ。私の足でもすぐに森から出られる。森をでれば屋敷も見えるし、フランツもいる。心配はいらないよ」

確かにルードヴィヒの言う通り、リアが來る前、彼はもっと森の奧まで一人で散策していた。

「わかりました。ちょっと見てきたらすぐに戻ります」

「くれぐれも無理はしないように。どうやらただ事ではないようだ。私は屋敷に戻るとしよう」

勘の良いルードヴィヒも森の異変に気付いているようだ。

「はい」

いちご狩りの中止、殘念だったが仕方がない。リアは強い騒ぎに急き立てられるように森の奧へ走った。

とても嫌な予がする。どくどくと心音が鳴り響くようだ。森の奧へ行けば行くほど、の臭いが濃くなる。は魔を呼ぶ。

もし、命を失ったばかりの亡骸があるのならば、の臭いを消して弔わねば。

ひと際の臭いが濃い茂みに分けるとまみれの男が倒れていた。リアは驚いて走り寄る。

「どうしました!」

聲をかけるがピクリとも反応しない。

にまみれた服は法のようだ。地は白く獨特の銀の刺繍に見覚えがあった。あれはアリエデの神が著る法。艶やかなサラリとした黒い髪。

「レオン!」

リアは取りすより冷靜になった。まずは彼がなぜここにいるかではない。レオンに息があることを確認し、リアは急ぎヒールをかけた。

彼は腕とわき腹に深い傷を負っており、はらわたが覗いている。がとめどなく溢れ、傷が塞がる前に彼の命が盡きてしまう。

以前ならば、すぐに癒せたのにやはり時間がかかる。

リアが必死で治癒し続けるとレオンの長いまつげがき、ふわりと彼の瞳が開く。

しばらく辺りを彷徨っていたレオンの視線がリアを捕らえる。

彼が微かに口をかした。

「駄目です。レオン、話しては」

「リア……ずいぶん、綺麗になったな……」

息も絶え絶えに掠れた彼の聲を聞くと涙がこぼれた。助けられないかもしれない。それなのに、彼はリアを初めて褒めた。

「黙って。しゃべっちゃダメです」

リアの言葉が屆いたのかレオンの目がカッと開かれる。

「リア、行くな。アリエデに行ってはダメだ。私のことはどうでもいい。今すぐ逃げろ」

「え?」

彼は命にかかわる大けがだと言うのに、それだけをはっきりというと、ゴボリとを吐き、意識を失った。

がとまりかせる狀態になるとリアはレオンを屋敷まで擔いで行くことにした。何とか命はとりとめた。

それにルードヴィヒも気になる。今日は足の調子がよくなさそうだった。

屋敷にまみれのレオンを運び込むと、使用人達がすぐにを清めてくれた。早くも土気だったレオンの顔に赤みが差してくる。彼にも多の神聖力があるせいか傷の治りが普通の人よりずっと早い。

一息ついたところに、コリアンヌが回復薬をもってきてくれた。

「ルードヴィヒ様を見ませんでしたか?」

「え?」

コリアンヌの言葉に驚いてリアが顔を上げる。辺りは暗くもうすぐが落ちる。彼はあの後すぐに屋敷に帰らなかったのだろうか。嫌な予がする。

するとそこへフランツが慌てて駆け込んできた。その手にリアあての書狀が握られている。封蝋の文様には見覚えがあった。アリエデ王家のものだ。

「ルードヴィヒ様がお戻りにならないので、森へ探しに行ったのです。杖が落ちていてそのそばにこれが……」

リアは震える手で封書を破り、中にある手紙をあらためた。かたずをのみフランツとコリアンヌが見守る。

「……どうしよう」

リアの聲が震え、膝の力が抜けた。フランツが倒れそうになるリアを慌てて支える。こんな弱々しい姿を見せる彼は初めてだ。彼は勇敢でとても芯が強い。それが恐怖にガタガタと震えている。

「リア様、どうなさいました。手紙には何とありましたか?」

フランツが騎士らしい冷靜な聲で彼に聞く。コリアンヌも宥めるようにリアの背中をさする。

「どうしよう。ルードヴィヒ様が攫われてしまった。私のせいで、どうしよう、どうしよう!」

リアは絶した。が苦しく、怖くて、気が狂いそうだ。

この展開なので10/20分まで毎日投稿。予約投稿済みです。

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