《ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years》第2章 1983年 プラス20 – 始まりから20年後 2 二十年前(4)
2 二十年前(4)
剛志は正直、智子の行方不明が一番こたえた。だから時間を見つけては、林やその周辺を捜し歩いた。そんな彼の姿がさらなる話題の種となって、
「例のほら、やきとり屋の息子、なんだかおかしくなっちゃったみたいでね、いつもブツブツ言いながら歩き回ってるのよ。お宅、あの林のすぐ近くなんだから、夜なんか気をつけなさいよ! 最近の高校生ってのはね、ホントに怖いんだからね」
なんてことを、酒屋の房がやたらと客に言いふらしたりする。
一方、両親の店も、彼の逮捕後売り上げが一気に落ち込んだ。いつもなら満員禮って時刻でも、常連客だけってこともある。
以前から、剛志の父、正一は、閉店間近になると決まって常連客と酔っぱらった。後片づけは母、恵子に任せっきりで、翌日は晝頃まで寢こけている。
ただ本人も、多まずいとじているらしく、今日は酒だ! と斷言してみたり、本當に一滴も呑まない夜もたまにはあった。それでもいつものメンバーが揃い踏みで、
「おい正一! 何が今夜は呑まないだよ! もう客は俺たちだけなんだ! さあこっち來いって! 乾杯するぞ! 乾杯だ!」
そんな聲が二、三度続けば、正一は前掛けを外して彼らと一緒に呑み始める。
日頃から、面倒なことはすべて恵子任せで、週一の休みだって常連客らと出かけてしまう。
釣りだなんだと言ってはいるが、結局のところいつも最後は酔っ払いだ。だからやきとり屋のことさえなければ、正一がいなくなっても家はぜんぜん困らない。きっと自分の家族より、店の客たちが大事なんだと、剛志はここ數年で正一のことが大嫌いになった。
そんなだからアブさんら、常連客のことも好きにはなれない。
ところがだ。ここに至っての売り上げ不振は、紛れもなく剛志自のせいだった。さらにそうなってから、常連客の來店が、以前より目に見えて頻繁となった。
「あいつらだけは、今も毎日のように來てくれる。なんともありがてえ話じゃねえか」
そう言って喜ぶ正一に、剛志もさすがにああだこうだと口にはできない。
ただし心の奧底では、もちろん喜んでなどいなかった。
――なに言ってるんだ! 村井酒店は、ぜんぜん來なくなったじゃないか!?
現れなくなった客の中で、常連だったムラさんだけは許せない。剛志がそう思うのには、彼なりにちゃんとした理由があった。
酒屋のムラさんは婿養子で、結婚してからずっと房のに敷かれっぱなしだ。
だからそうそう児玉亭で呑む金もなく、いつも足りない分をアブさんやエビちゃんに助けてもらった。奢ってもらうこともけっこうあって、正一の裁量によるものだってなくない。
なのに事件後、彼はピタッと來なくなる。
――やっぱり、酒呑みなんて信用ならねえよ!
そんな剛志のムカツキをよそに、事件から半年ほどで店の客足もほぼほぼ戻る。そしてその頃偶然、剛志は店から響くアブさんの聲を聞いてしまった。
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