《ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years》第3章 1983年 プラス20 – 始まりから20年後 〜 2 再會(2)
2 再會(2)
――智子……。
何度も脳裏でその名を呼びかけ、ついつい聲にしてしまいそうになる。が、そのたびに、元奧へと必死になって押し戻した。そしてこの時、剛志の顔はきっと普通ではなかったはずだ。
だからきっと、そのせいだろう。
「あの、わたし……」
不安げにそう呟くと、彼は急に押し黙ってしまった。
剛志から視線を外し、庭園の端から端まで目を向けていく。そうしてひと通り見やってから、再び殘りの階段を一歩一歩下り始めるのだ。
やがて地面に下り立ち、剛志に向けて今さらながら頭を垂れる。さらにさっきとは段違いに落ち著いた聲で、智子であろうは剛志に向けて聞いたのだ。
「あの、すみません……ここはいったい、どこなんでしょうか?」
しっかり剛志の目を見據え、不安な気持ちを悟られまいとしているのだろうか? その顔にはうっすら微笑みさえ浮かんでいる。そんな顔に見つめられ、
――どこって……?
とっさに、そう言葉にしたつもりだった。ところが元からは、かすれた聲と吐息だけ。言葉になるにはあまりに力ないものだ。
それでもそんな剛志の反応に、彼もきっとしは安心したのだろう。
さらにしっかりした口調になって、
「ついさっきまで、伊藤さんという方と一緒だったんです。すごく背の高い男なんですが、ご存じ、ありませんか?」
と、左右をチラチラ見ながらそんなことを聞いてきた。
本當なら、伊藤は死んだ……そう答えてやればいい。しかしあまりに突飛な現実に、そう聲にできるほど剛志の神経は図太くはなかった。
さっき、彼は言ったのだ。
つい今まで伊藤と一緒で、火事はどうなったかと聞いてきた。
正真正銘、智子であるなら、彼は剛志とおんなじ三十六歳。
なのに彼はあの頃の……まさに十六だった桐島智子そのものなのだ。
「あの、あなたは……?」とだけ聲にする。
「あ、すみません、桐島智子と申します。勝手にお庭にってしまって、でも、わたしもどうして、こんなところにいるのかわからなくて……」
そう言いながら、智子であろうはペコンと頭を下げるのだ。
とにかくこの段階で、疑う余地など微塵もなかった。
こんなことが現実に、あっていいかどうかは別としてだ。目の前のこそ、剛志の知っていた桐島智子に違いない。であるなら、すぐに何か言わなければ……。そう思えば思うほど、この場に見合う言葉がまったくもって出てこなかった。
そのうちに、智子の顔がどんどん不安げになっていく。
智子が俺を、怖がっている? そんな印象に慌てまくって、大丈夫! とかなんとか剛志は言いかけ、思わず足を一歩だけ踏み出した。もちろん威嚇しようなんて気はなかったし、何か言わねばという焦りがそんな形で出ただけだ。
だがその時、彼はそうは思わない。
いきなり、「失禮します!」とだけ聲にして、クルッと背を向け走り出そうとするのだった。
ところがすぐに、片方の腳がカクンと崩れる。そのまま倒れ込むようにして、彼はその場にしゃがみ込んでしまった。
剛志はとっさに大聲をあげ、
「剛志! 児玉剛志を知っている!」
思わずそうんでから、心で力いっぱい念じ続けた。
――俺だよ! 俺が剛志だよ!
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