《妖刀使いがチートスキルをもって異世界放浪 ~生まれ持ったチートは最強!!~》12:天叢雲剣
さっきの武屋の中で気になったことがあったからギルドに行く前に宿へと戻ってきた。勿論この妖刀についてだ。
俺はティナもつれて部屋へにる。
(おまえ、俺の言葉が聞こえるか?)
俺は試しに、この刀に対して呼び掛けてみた。
〝うん〟
おっ返事が返ってきた。やっぱり、鑑定してスキルを認識來たことで話せるようになったみたいだ。
頭に響く聲は、明らかにエルとは違って、いような聲。
(お前がこの刀ってことで合ってるか?)
〝あってるけど、お前って名前じゃない。ムラクモっていうちゃんとした名前ある〟
(そうか、わかったムラクモだな)
俺の言葉を聞いてもなかなか返事が返ってこない。しばらくすると弱々しい聲でつぶやいた。
〝刺してごめん……なさい〟
(あれはお前のせいじゃないだろ。お前はただ使われただけだ)
俺はめるように、優しく優しく聲をかける。でもこうやって俺たち頭の中で會話しているのはティナにとってとても不思議なものだ。まず話していることすらわからないだろう。ティナとしては用事があると宿に戻ったのに、その肝心な俺がぼーっと部屋で立っているだけなのだから。
「やっぱりティナには聞こえてないよな」
俺は確かめるようにティナへと問いかける。
「なにがですか?」
まぁ當たり前の反応だ。いい加減説明してやろう。まぁエルについては置いておくとしてムラクモについて教えとこうかな。
《……》
エルが何か言いたそうだが今は無視だ。というかエルについては説明しにくいしな。
(怒んないでくれよ。いずれ機會があったら話すから)
《ますたー 私は別に怒ってなんてないですよ?》
明らかにいつもより冷たい。
(とりあえず今は、二人だけのだ。いいか?)
《……ますたーが、そう言うなら。これは二人だけ・・・・のです》
ようやく機嫌が直った。二人だけって単語に無駄に協調してたけど、反応はしないでおこう。
よし、次はティナにムラクモを紹介しないとな。
「えっとな、今こいつ、ムラクモと會話してるんだ」
そう言って左手で柄をさわると、案の定ティナは。何を言ってるんだみたいな目を俺に向ける。まぁ俺も、ティナと同じ立場だったら、同じ顔をしていただろう。
手っ取り早く説明するために、鑑定の時に気になったスキルを試そう。まぁ最初からそれを実験したかったから部屋まで戻ってきたんだけどな。
(さっき鑑定したとき<人化>ってあったんだけどできそうか?)
〝たぶん〟
多分かよ。まぁは試しだ。で、どうやってやるんだ?
《解析終了、刀を床に突き刺して名前を呼べばできるそうですよ。ますたー》
俺の問いに、適切な回答を述べるエル。
頭の中でムラクモとエルの聲も聞こえるごちゃごちゃしそうだな。これが脳會話の怖さか。
えっと、たしかムラクモを床に突き刺して名前を呼べばいいんだっけか?
俺は靜かに刀の柄に右手を置き、ムラクモを抜刀する。
いきなり刀を抜いたせいでティナがびっくりしている。落ち著かせるために左手の手のひらをティナに向ける。
そしてスキルを使うために右手で持ったムラクモを部屋の床へと突き刺す。しが開くだろうが仕方ない。許せ。
そして俺は、ムラクモを突き刺した後に名前を呼ぶ。
「ムラクモ」
すると刀が黒い霧に包まれた。それは俺の手を、刀を中心にして渦巻いた。ふと、右手の手のひらから柄のが消える。霧はし前に進むと1カ所に集まる。
しして、黒い霧が晴れたと思ったらそこには一人のがいた。俺の近くにも、の近くにも天叢雲剣も見當たらなかった。それはつまり、あのが<人化>のスキルを使用したムラクモであることを示していた。ムラクモは、あの黒い刀の刀の擬人化とは思えないほどの純白の髪。のように赤い目。見た目12.3歳ぐらいのが全で立っていた。
綺麗だったのでつい見とれてしまった、すると頬がし赤くなっていた。しは恥心があるみたいだ。
ようやく狀況を理解したティナが後ろから俺の目を手のひらで覆う。すると次は後ろからティナのが背中に押し付けられる。それは俺の背中に當たり形を変えた。ご褒かな?
「ななな、なんでいきなり刀がこんなになるんですか!しかもなんで全?」
ティナは訳が分からんとぶ。にしたのは俺だが、全なのは知らない。
「とと、とりあえず何か服を……」
あわあわと、慌てるティナ。それとは別にムラクモは無表で指示する。
「鞘、とって」
から発せられた聲はさっきまで頭の中で聞こえていた聲と全く同じものだった。ちなみに俺の目はまだティナの手によって覆われたままだ。それでも腰に差してある鞘をとることぐらいはできる。ベルトから外した鞘をムラクモに渡す。
また黒い霧が出たようで、しの風を頬にじた。しするとやっと目隠しが外れた。目の前にはさっきまでのように全ではなく、ちゃんと服を著たムラクモがいた。袖は長くひらひらと、だが裾はミニスカートみたいに短い、そんなじの黒い著、そして髪のに近いニーソを履いていた。靴は下駄だった。完ぺきなほどの和風だ。
ムラクモは俺の顔をしっかり確認すると、
「ユウ!」
俺の名前を呼びながら俺に突進してくる。こんな狹い部屋でよけれるわけもなく、俺はムラクモを真正面からけ止めた。腕の中からムラクモの聲が聞こえる。さっきよりも、弱々しい聲が
「ごめん、、ごめん」
腕の中で謝るムラクモの顔を見ると目からは涙が流れていた。
俺を刺したことを、殺してしまったことを、まだ後悔しているみたいだ。さっきもいいって言ったのにな。だからまた聲をかけてやる。今度は頭をなでながら。
「あれはお前のせいじゃないだろ。あと俺は悔しいが後悔はしていない。おかげでこの世界に來れた。で、こうやってお前と話せるんだしな」
俺はムラクモに笑顔を向ける。ムラクモは俺ので泣きながら対抗してきた。
「だからお前じゃない。ちゃんとムラクモって名前がある」
「そうだったな、けど今はとりあえず泣いとけ」
そういうとムラクモは俺の腕の中で「ユウ、ユウ」と泣きながら俺の名前を呼び続けた。
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