フロンたちはヘイルたちに案され伯爵の館へと案された。フィリアの腕の中には丸まって収まっているノワールがいた。し張している様子。

「大丈夫。私たちはちゃんとわかってるから、一緒に謝りましょ？」

フロンはノワールにそう聲をかけると頭をやさしくでた。

ヘイルの後をついていくと、応接室という文字が見えた。ヘイルがドアをノックすると、ドアの向こうからの人の聲が聞こえる。

「どうぞ」

「よし、俺の案はここまでだ。それじゃ」

厄介ごとに巻き込まれたくないヘイルはそそくさと、その場を離れようとする。だが、それをノワールは阻んだ。いつの間にかフィリアの腕から抜け出し、ヘイルの退路を絶っていた。

「ヘイルさん。ノワールはあなたにも話を聞いてしいそうよ？」

フィリアの言葉にヘイルは肩を落とし、仕方ないといった表でしぶしぶ了承した。ノワールはご機嫌のようだった。

「失禮します」

ヘイルが先にドアを開け、フロンたちを中に導する。中には伯爵と思われる男が一人用のソファーに、先ほどの聲の主であろうが一人その斜め後ろに立っていた。向かい側には三人が座れるソファーとテーブル。テーブルの上には人數分の紅茶が用意されていた。

「ささ、座ってくれたまえ」

伯爵に導されるまま三人と一匹は席に著いた。突然の訪問にも関わらず、伯爵は優しそうな表をしていた。

「話は先に聞いておる。ツキカゲの使者ということでいいのかな？」

「はい。お久しぶりです伯爵様。改めまして私はフロンと申します。ユウ様からは伯爵様宛の伝言を預かってまいりました」

「改めまして私の名前はフィリア。そしてこの子はノワール。私からの要件はこの子の話を聴いてしいだけです」

「よし分かった。ツキカゲからの伝言は後の方が良さそうじゃな」

伯爵は二人からの要件を快く承諾してくれた。ノワールを見るとやはりブルブルと震えていた。親に怒られることが分かっていて話し掛けにいくようなものだ。怖いのも、もちろんわかる。だがそこを押してやるのも役目なのだ。フィリアが今回の付き添いを決めたのもこれが理由だからだ。

「ノワール大丈夫よ。頑張りなさい」

ノワールは優しく微笑むフィリアの顔を見て決意を決めた。仔竜のから人型へ姿を変える。その狀況に書は驚きの表を見せるが伯爵は微だにしない。ヘイルも同じくその景を眺めていた。

「私はノワール……なの。私が今日ここに來たのは、前この近くの森で暴れた事について謝りたかったの。ほんとーにごめんなさいなの。私が悪く言われるのはいいの。でもご主人に迷が掛かるのは嫌なの!! だから、だから……」

すでに涙を流し始めているノワール。伯爵は泣きながらも頑張って謝罪を口にしようとするノワールの頭を優しくでた。

急にでられ訳の分からないノワールはキョトンとしてしまう。

「大丈夫じゃよ。確かにあの時は大変じゃったが、幸い死者なども出ておらん。何かあった時にはそこにおるのがなんとかするじゃろうて」

そう言ってシウテ伯爵はどこぞの元炎帝さんを見て笑っていた。當の本人は「えぇ、俺任せですか？」と言いたげな表をしていた。

伯爵はそのままノワールをでながら言葉を続けた。

「安心せい、ツキカゲに我らから何かすることはない。むしろいい関係を続けていきたいぐらいじゃ。ティナが選び、我らが認めた男じゃからな」

「ほんとに？　私がした事でご主人に何も迷かからないの？」

「大丈夫だよ。ギルドからもあの事件は黒龍を撃退したということで話が決著してる。あとから掘り返すようなことはないよ。ギルドマスターとして保証する」

ノワールの問いにヘイルは答え、伯爵は自分の席へと座り直した。フロンはポケットからハンカチを取り出し、すでに頰まで垂れていたノワールの涙を優しく拭き取った。

ほんのし時間が経ち、安心もしくは泣き疲れたからか、ノワールはそのままフィリアのの中で眠りについてしまっていた。

ノワールが眠りについたあと、フロンは伯爵とヘイルへとユウから請け負った伝言を一言一句間違える事なく伝えた。

その容に一番驚いたのはヘイルであり、肩を落として嘆いていた。伯爵はというと突飛な提案に笑いながらヘイルの肩をバシバシと叩いていた。

「それではユウ様からの伝言は伝えましたので、私たちはここで」

フロンは伝えることを伝えると、フィリア、ノワールをつれ部屋を後にしようとする。

「まてまて、気づけばもう日も落ちそうな時間じゃ、そなたたちの移手段はノワールじゃろう？　宿はこちらで用意しよう。ノルンの宿じゃ、前も使用していたじゃろ？　今日は休んで行くといい」

「いや、しかし頼みごとをしに來たのはこちらです。そこまでお世話になるわけには」

「いいですか？　できることならお願いします。伯爵様」

「容易い用じゃ」

斷ろうとしたフロンの聲を遮り、フィリアは伯爵の提案に乗る。フィリアも伯爵もノワールのを案じているのがわかるため、自分の意見を押し通すことができなかった。

「すいません。お世話になります」

「早く主人様に會いたいのはわかるけど、たまには我慢しないとね」

「うっさいです。わかってますよ」

「あら、こわいこわい」

そのまま紹介狀をけ取ったフロンたちはノルンの宿へと足を進めた。