《TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―》魔の手

「――お疲れ様でした!」

雑誌の一ページを大きく飾る寫真、その撮影を何度もお世話になっているスタジオで終えた私、皆原祐里香は攜わった全ての人に挨拶をして回る。

蕓能界は人脈が大切とお母さんが言っていたから、スタッフ皆さんに良い子、今度も一緒に仕事したい子と思われるように頑張っているの。

「お疲れ様、祐里香。それじゃあ事務所に寄ってから家に送るわね」

「お疲れ様です、篠田しのださん。分かりました」

「車回してくるから、此処で待っててね」

私のマネージャーさんである篠田さんは、事務所でも敏腕と噂のよ。

子役を始めた最初の頃はお母さんがマネージャー擬もどきをしてくれてたんだけど、事務所にってからはずっと篠田さんにお世話になっているわ。

駐車場へと向かった篠田さんの背を見送って、私はスタジオのロビーにあるベンチに座って。

「ゆーりかちゃんっ!」

「うひゃっ!? ちょ、ちょっと、ことな!」

ベンチに座った私の背に突然抱き著いてきたのは、私の先輩優の佐崎ささきことな。

ことなは中學一年生で、私と同じ事務所に所屬している先輩よ。

先輩の筈なんだけど、何故か気にられて呼び捨てまで許されている狀態。

仕事中じゃないときは敬語も駄目って言われてるわ。

「祐里香ちゃんは撮影終わったの?」

「う、うん」

ことなは私の隣に座って、満面の笑みを浮かべた。

は天然アイドルだから仕事外でも抜群の笑顔を見せてくるのよね……。

これまではこの笑顔に負けないようにと思っていたのだけど、あれね。

……千佳の笑顔の方がなんていうか、輝きは上かもしれないわ。

「そっか、お疲れ様。私はこれから撮影なんだよね」

「そうなの。頑張ってね」

「ありがとう。……それで祐里香ちゃん、噂で聞いたんだけど転校したの?」

「ええ。社長さんの知り合いが學園長をやっているらしくて、勧められたのよ」

「友達は出來た? ちゃんと勉強について行けてる?」

「お母さんかっ! ま、まぁ大丈夫よ」

……千佳たちは友達よね? うん、多分友達。

濁した回答にことなは首を傾げたけれど、デリケートな容だからそれ以上の追求はしないみたい。

天然なのにそういう所は空気読めるのよね。

「でも社長の知り合いなんて凄いねー。何て言う學校なの?」

「桜學園よ」

「……え?」

私が學校の名前を答えると、ことなの表が固まった。

何か変なことを言ったかしら?

「……かちゃん」

「何か言った? ことな」

「……千佳ちゃん、見たの?」

「……へ?」

ことなは私の両肩を持って、これまで見たことの無いギラギラとしたマシマシの眼差しを向けた。

まさか。

「ち、千佳を、知ってるの?」

「當たり前じゃない! まさか、千佳ちゃんと同じクラスとか?」

「そ、そうだけど」

「う、うううう、うううううう、羨ましいっ!!」

ことなが私を摑んだまま前後に揺らし、う、うっぷ、やめ、揺らさないで。

「だって千佳ちゃんだよ!? もう既にファンクラブのメンバーが一萬人を超えてる、今話題の超絶可い小學生!! の人しかファンクラブにれなくて、學園長でありファンクラブスポンサーの桜架さんが男を完全シャットアウトしてて、裏に警備員で組まれたボディーガードたちが守っている千佳ちゃん!」

「ボディーガード!?」

な、何よそれ!?

私の肩から手を離し、ロマンチックに瞳を輝かせて両手を握ったことなから衝撃的な言葉が飛び出しました。

あの子ボディーガードなんているの!?

「私も千佳ちゃんナデナデしたいし、あの聖母みたいな眼差しとらかいでナデナデしてしいよぉ……。なんで私は中學生なの!? 小學生だったら無理言ってでも転校してたのに!!」

「な、なんてに塗れた転校理由……」

ことなが中學生で良かった……。

「ち、千佳ちゃんを呼び捨てってことは、もしかして、もしかして祐里香ちゃん!! 千佳ちゃんとお友達だったり!?」

「そ、そうだけど」

「ずるいぃいい!! わ、私も紹介してよ!! ほら、先輩だし!!」

「いや、それは――」

「いけません、ことな。そんなことをしてはファンクラブを除名されますよ」

車をり口近くに回してきたマネージャー篠田さんの一言で、ことなは漸く暴走を止めた。

やっぱり頼りになるわね、篠田さん。

將來は篠田さんみたいにクールな人を目指したいわ。

「そ、それもそうでした。ごめんなさい、祐里香ちゃん」

「いや、別にいいけど。それに紹介くらいなら」

「いけません祐里香。ファンクラブには々と規則があるんですよ」

そうして篠田さんの説得によりことなはスタジオへと歩いて行きました。

去り際の肩を落とした寂しげな背中、あれは絶対アイドルが見せちゃいけないやつだわ。

「それでは車に向かいましょう、祐里香」

「はい」

私は今日の出來事を頭の中でとりあえず無かったことにして、篠田さんと出口へ向かう。

千佳……貴は一、何者なのよ……。

「……祐里香。明日は朝學校まで送って行きましょうか? 教室まで送って行きますよ?」

「……ねぇ篠田さん。もしかして」

――おのれ千佳。私のマネージャーも毒牙に掛けていたのね!!

絶対に、演劇クラブで主役を勝ち取ってやるんだから!

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