《俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。》1-29【そして、新たなる伝説へ】

俺は、走った。

とにかく、走った。

休まずに、ひたすらに走った。

息が切れる苦しみにも耐えて、ひたすらに走り続けた。

橫っ腹が痛くなったけれども、ひたすらに我慢しながら走り続けた。

尿も大便も我慢しながら走り続けました。

走れメロスもビックリなほど、ひたすらに走り続けたのだ。

振り返らず、何も聞かず、意地も恥もプライドも捨てて、ひたすらに走り続けた。

にだけは────、Aにだけは、何があっても絶対に捕まりたくなかったからだ。

捕まれば、間違いなく殺されるだろうさ。

あの大きな鉈のような切り包丁で微塵切りにされて殺されるだろう。

もしかしたら、もっと酷くて痛そうな殺されかたをするかも知れない。

だから俺は意地でも走り続けたのだ。

捕まってなるものか!

そして、気が付けば夜になっていた。

走り続けながらも空を見上げれば、真ん丸いお月様と煌びやかな星々が無數に輝いていた。

もう、どのぐらい走り続けていたのかも分からない。

俺は足が発しそうだったが止まらなかった。

足が棒になるなんて通り越してダイナマイトになりそうである。

だが、背後からは魔の殺気とけたたましく追い掛けてくる足音が継続して聞こえていた。

まだ、追い掛けて來てやがる。

噓だろ……。

あいつ、諦めてねぇぞ……。

しつこい、しつこすぎるぞ、こいつ!

そして、夜の草原を走り続ける俺の視界に複數の人影が目にった。

人が居る?

こんな時間に、こんな草原のド真ん中で、あの人たちは何をしているのだろう?

旅人か何かだろうか?

だが、俺はその疑問以上のことを思い付く。

それは────。

こいつらに魔り付けよう。

名案である!

いつまでも逃げ続ける俺よりも、通りすがりの人間を襲ったほうが魔だって楽だろうさ。

そうすれば俺も助かる。

も獲をゲット出來る。

これってWINWINな関係ではないだろうか!?

咄嗟に思い付いた外道な発想なままに俺の走る足は人影たちのほうに進んで行く。

どうやら人影の人數は五人のようだ。

五人のシルエットが月明かりに映し出されている。

その五人は背後から迫る俺たち二人に気付いていない。

とにかく俺は五人の方向に走り迫る。

Aをり付けるためにだ。

そして、五人組が俺の走る足音と鬼気迫るAの殺気に気付いて振り返った。

そこで俺も気付いたのである。

そいつら五人は人間ではなかったのだ。

耳が頭に生えている。

尾がおに生えている。

むくじゃらである。

それは、コボルトたちであった。

五人ではなく、五匹だったのだ。

その五匹のコボルトに俺は見覚えがあった。

一匹の雄コボルトと、四匹の雌コボルトだ。

雌の四匹はセクシーな水著姿である。

「あいつら!」

間違いないだろう、ハーレムのコボルトたちだ。

こいつらは廃鉱から逃げ出した生き殘りのコボルト連中である。

ならば俺がAをり付けても人道的にすら問題ないだろうさ。

だって俺が見逃したからこいつらは生きているのだ。

だから今ここで俺の代わりに魔に捕まって殺されても問題ないだろう。

そう考えると俺ってラッキーだよね。

なので俺はコボルトたちに向かって突っ込んで行った。

だがしかし、コボルトたちは俺の姿を見ると両手を上げて逃げ出した。

なんで逃げるんだ!?

逃げてるのは俺のほうだぞ!

俺は待たないけど、お前らは待ちやがれ!

そんなわけで俺はコボルトたちを追い回し、そんな俺を魔が追い回し続けた。

もう何が何だかわけが分からない。

そして、しばらく追い駆けっこが続いていると、コボルトたちが五方向に別れてバラバラの方角に散って逃げ出した。

「えっ、なんで!」

俺は慌てたが、それでもコボルトの一匹を適當に選んで追い掛ける。

適當に選んだ積もりだったが括れがセクシーなビキニのコボルト子を俺は追い掛けていた。

こんな時でも俺の煩悩は怠けることはないようだ。

だが、そのビキニコボルトは足が速かった。

流石は犬面のモンスターだ。

犬と人間の中間ぐらいには足が速かった。

それもあってか俺はコボルトたちに巻かれてしまう。

それなのに俺の背後にはAが迫る殺気が付いてきていた。

俺が巻かれたのに俺は巻けないなんてありかよ!

ズルくね!?

畜生っ!!

なんて日だ!!

それからしばらく過ぎて────。

「ぜぇぜぇ、ぜぇぜぇ……」

日が上り周囲が明るくなり始めたころに俺は走る速度を緩めた。

背後から迫る殺気が途絶えていたからだ。

そして、初めて振り返る。

そこには魔の姿は、流石にもうなかった。

もう諦めてくれたらしい。

もしもまだ追いかけて來ていたら、完全にアイツは俺に惚れているとしか思えんわ。

だが、魔の追跡は終わっていた。

安堵する俺は近くにあった大木に寄り掛かりながら休みを取る。

息を整えながら考えた。

なんで、アイツが宿屋に居たの?

だって村人は、あそこの宿屋は中年の夫婦だけで営んでいるって言ってたじゃんか……。

噓なの?

デマなの?

俺は騙されたのか?

人當たりの良い中年の夫婦は、どこに行ったんじゃい!

あっ…………。

いやぁ~~な予が脳裏に過ったよ。

まさか、もう既に殺されていて、宿屋をAに乗っ取られていたとか……かな?

うわぁ~~、自分で思い付いて、鳥が立ってきたわ!

こわっ!

めっちゃこわっ!

その可能が高いぞ、きっと!

こえーよ!

やっぱ、アイツ、サイコパスじゃん!

ホラー全開じゃんか!

とんでもない魔じゃんか!

良かった~……。

おっぱいをませてくれるって言われた時に心がダークサイドに落ちなくてさ。

神の呪いでが痛みださなかったら、ころっとに流されていたぜ……。

危ない、危ない……。

とりあえず俺は、水筒の水をガブガブと飲んだ。

するとザワ付いていた心が隨分と落ち著いて來た。

そして、冷靜に考える。

てか、ここどこ?

俺は必死に走ってたから、今どこに居るのかも分からなかった。

どの方向に進んでいたかも分からない……。

何せ一晩中、夜の闇の中を地図も見ないで走り続けていたからな。

とりあえず、周囲を注意深く見回した。

辺りが森か林の中なのは分かるが、ここがどこかまでは不明だった。

駄目だ、ここがとこかも見當がつかない。

やべ、迷子だな……。

いや、そんな可いレベルじゃあないぞ……。

これは、遭難だ。

そうなんですよ、遭難だ!

落ち著け、俺!

まだ、深刻な遭難かは分からない。

その辺を適當に選んで歩いていれば、もしかしたら知ってる道に出るかも知れない。

てか、知ってる道なんてあるのだろうか?

まあ、それよりもだ。

よし、走り疲れたから休もう。

てか、眠い……。

一睡もしないで昨晩は走り続けていたからな。

もう睡眠不足と力が限界値である。

もういろいろなメーターがスッカラカンなのだ。

ここは寢て、調を整えよう。

そして、俺は逃走の疲れから直ぐに眠りに落ちた。

最近では野宿も苦じゃない。

かなり慣れてきた。

人間の慣れって怖いよね。

転生前は布団の中でしか寢たことがなかったのにさ。

まあ、そんでもって時間が過ぎた。

俺は目が覚めると、早速行を開始した。

とりあえずは森の外を目指す。

しかし、どちらを見ても森の中で同じ景に見えた。

森、森、森、一つ飛ばしてまた森である。

うん、やっぱり遭難だ。

遭難中だな、俺……。

さて、どうしよう?

とりあえず、森を抜けられればどうにかなるやも知れない。

とにかく、俺は歩くことにした。

そして二時間ぐらい歩くとすんなり森を出れた。

二時間がすんなりって表現が正解かは不明である。

何せ最近は異常なことばかり起きるから、俺の常識も麻痺してきてるのだ。

現世で死んで、糞神に出會って、異世界に転生して、全で草原を放浪して、真っ直ぐなダンジョンを進み、コボルトたちと戦い、パンティーの霊にも取り憑かれた。

何よりものハプニングは、ヒロイン候補がサイデレのDQNな娘だったのがトラウマになりそうなぐらい効いている。

俺の心に深い深い生傷を殘したぐらいだ。

まあ、とにかく、いろいろとあり過ぎた。

それで俺の常識も見事に崩れ去っているのだ。

でも、とりあえずは森から出れたぞ。

ラッキーである。

そして、森の外は再び平原だった。

遙か遠くに、何かが見える。

俺は目を凝らした。

町である、ラッキー!

俺ってば、超ラッキーだわ!

遭難したかと思ったら、直ぐにピンチから出できたぜ!

あの貧乏そうな村の周辺にはソドムタウンぐらいしか町がないって言ってたから、おそらくあれが目的地のソドムタウンだろう。

俺はルンルン気分で草原をスキップで進んだ。

あそこが噂のソドムタウンである。

あそこで新たに俺の大冒険が始まるのであろう。

俺様アスランの伝説が、あのソドムタウンから新たに始まるのだ。

ワクワクするぜ!

【第一章・アスラン伝説編】完。

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