《俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。》2-13【走れ、アスラン!】

ゴブリン退治クエストを完了させた俺は、ソドムタウンに向かって平原をひたすらに走っていた。

タババ村で村長さんに報酬を頂いたあと、一泊させてもらってからである。

そして俺は早朝から荷を背負って村を発ったのだ。

冒険の功から気分はルンルンの上機嫌である。

あとはソドムタウンに帰って冒険者ギルドに報酬の一割を納めたら仕事は終わりだ。

──そのはずだった。

そのはずだったけれど……。

しかし、今の俺は走っている。

ひたすら草原を走っていた。

もう既に何キロぐらい走ったのかも分からない。

そのぐらい走っている。

とにかく、走っているのだ。

正直、覚えたての新スキルの【マラソンコストダウンLv1】がなかったら終わっていただろう。

それを思うとラッキーである。

地平線の先にソドムタウンの防壁が見えて來た。

ゴールは近いぞ。

頑張れ、俺。

そして、走る俺の後方には100匹を超える野生の狼が追って來ていた。

そう、俺は追われているのだ。

野生の狼の群れに……。

いーやー!!!

こーわーいーよー!!!!

流石に100匹のウルフとかって無理だよね。

戦っても勝てる數じゃあないよ、マジでさ!

こいつら牙を剝いて、おっかねー面してるし!

絶対に俺が好きでアイドルの推し気分で追っかけて來ているわけじゃあないよ、こいつら!

ムツゴロウさんみたいに、わしゃわしゃわしゃっとかやって和解できるムードじゃあないもの!

追い付かれたら絶対に食われるわ!

こっちの漢字を使うよ。

口偏を付けるよ!

喰われるわ!

絶対に喰われるわ!

しかもこいつら俺が疲れるのを待っていやがるんだ。

そんな節が見られる。

疲れて抵抗出來なくなってから襲う積もりだよ。

そんな余裕の速度で追ってきてるもん。

なんでこんなに利口なのさ。

俺が武裝してるから、疲れてないと抵抗されると考えてるよ。

このウルフたち頭がいいよ!

野生のくせして利口だよ!

最初はね、數匹だったんだよ。

付かず離れす付いてきているだけだったんだよ。

俺も最初は何さこのストーカー狼はって思ったさ。

それが時間が過ぎるにつれて數が増えて行ったのよ。

絶対に一つの群じゃあないよね。

數個の群が合流して巨大な群と化してるよ。

普通さ、野生でそんなことあるの!?

だってウルフって縄張りとかあるでしょう。

厳しいでしょう、そういうのさ!

なのになんで、こんなになっちゃうわけ!?

てか、すげーよ!

このマジックアイテムさー!!

ウルフファングネックレスだっけ!?

狼に怒りを買いやすいとか書いてあったけれど、それ以上じゃあねえか!?

もうこれさ、怒りのレベルじゃあねえよ!

もう、執念を通り越して怨念レベルじゃあねえか!?

普通じゃあねえよね!?

しかも、ほんのちょっと裝備しただけだよ。

視力が良くなるって効果を試してみたくてさ、ほんのし裝備しただけだよ、マジで!

ほら、売る時に効果がどのくらいか説明しないといけないじゃんか!

確かに視力アップしていたさ!

これなら視力が悪い人に高値で売れるって思ったさ!

この異世界に來てからほとんど眼鏡を掛けている人を見ないから、きっと眼鏡は貴重品だと思ったからさ!

それに俺は視力が多分5.0のはずだから、絶対に要らないもん!

こんな怖いマジックアイテムは要らないもん!

だから売るつもりだもん!

スカル姉さんにさ!

なのにこの狀況は何故だよ!

ウルフファングネックレスを外したけれど駄目でしたわ!

狼たちの追跡は終わるどころか數を増やしたしだいでさ!!

そんでもって俺は逃走中なわけよ!!

これ、完全に呪いのアイテムだわ!!

でもでも、もうしだ、もうしだぞ!

もうしでソドムタウンに逃げ込める。

ソドムタウンの様子も慌ただしくなってきているのが見えた。

非常事態を知らせる鐘をけたたましく鳴らしている。

そして、旅商人たちが慌ててゲートに走り込み、代わりに盾と槍を構えた兵士たちがゾロゾロと出てくる。

防壁の上からも弓を構えた數人の兵士が並んで居るのが見えた。

俺の急狀況を察してくれたらしい。

これなら助かるぞ!

だから俺は走る。

そして、とにかく走った。

あと100メートルぐらいでゴールインだぞ!

そこで狼たちに異変が見られた。

俺との距離を詰めてくる。

もう、俺を襲うつもりだ!

やばい!

やっぱりこいつら頭いいよ!

ゴールが近いことを付いていやがるぞ!

もう、襲いかかる気だ!

俺は振り向かず後ろに魔法を放つ。

「ファイヤーシャード!」

振り返ることなく後方に放たれた炎の飛礫がウルフに當たったのかな、それとも突然の炎にビビッただけなのかな?

ウルフの一匹が「キャッン」とけない聲を上げた。

でも狼たちの追跡音は止まらない。

多數の走る足音が轟いていた。

もう、焼け石に水ですわ!

覚えたての新魔法だけど、ぜんぜん役に立たない。

一匹二匹のウルフを追い払ったとしても意味がないぞ!

もう、こうなったら全力で走るしかない!

俺が助かるには全力で走りきるしかないわ!!

もうちょっとでゴールだ!!

でーもー……。

ゲートの前に橫一列で並んだ兵士たちが、扉のようなサイズのタワーシールドで隙間を塞ぐ。

そして、僅かな隙間から槍を突きだしていた。

ちょっと待ってよ!!

俺が逃げ込む隙間が無いじゃんか!!

そんな無慈悲なことありますか!!

俺を助けてくれる陣形じゃあないの!!

って思ってたら、防壁の上からアーチャーたちが矢を放ってきた。

複數の矢が雨のように飛んで來る。

狼の群を狙っているのだろうが、間違いなく俺にも當たるぞ。

弓矢の攻撃も俺の救出は考えられてないようだ。

いーやー!

うーたーなーいーでー!!

飛んで來た矢の一本が、俺の頭の直ぐ橫を過ぎて行った。

マジで、あぶねーよ!

當たるところだったじゃんか!

でも、一斉に狼たちの悲鳴が聞こえた。

何匹かは退治できたのだろう。

だが、唸る狼の聲と地響きは止まらない。

狼の數が減ってる気配もじられない。

もうちょっとで俺がゲートに到著する。

でも、盾の壁は開かない。

仕方ないので俺は盾の前で踵を返して戦斧を構えた。

その直後、津波のような狼の群れが突っ込んで來た。

狼たちは俺に當たりしただけでなく、盾に激突したり槍に串刺さっていた。

そこからは闘だった。

人間チームvs狼の群。

激しい団戦が繰り広げられたが、やがて勝者のフラッグは人間サイドに上がった。

半數近くの狼は逃げて行く。

平原の向こうに帰っていった。

俺は生き殘った兵士たちと明るくハイタッチで勝利を祝う。

笑顔で抱き合っている兵士たちも居た。

もう、ワンチームである。

そこには友が芽生えていた。

それに戦っている最中にレベルアップもした。

レベル9になったのだ。

そして、俺は捕まった。

何故か今俺は、牢獄にって居ます……。

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