《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》企業買収案件

自宅に戻る。

パソコンの電源をれたあとは、千葉都市モノレール本社の住所と電話番號を確認しておく。

「さて……、お金の方はなんとかなったが……」

問題はアポイントだな。

おそらくだが……、高い確率で相手の幹部と會うことは出來るだろう。

だが――、はたして代表取締役までも渉の席に著かせることが出來るのか? と言えば難しいだろうな。

俺だって長年、社會人として勤めてきたから分かる。

お金だけを持っていたとしても――、何の肩書も持たない人間を社長自らが相手するのかと言えば恐らくはしない。

そうなると――。

「やはり肩書が必要か……」

だが、肩書などすぐに用意出來るものではない。

いや――、自稱ならば何とでもなる。

問題は、その肩書に実績があるかどうかだ。

「相手と対等に渡り合えるだけのものか……、ふむ……、そうなると會社を購した方がいいのかも知れないな」

インターネットで、M&Aマッチングサイトへ登録畫面を開く。

登録名はどうするか……。

本名で登録をするしかないだろうな。

名前を山岸(やまぎし) 直人(なおと)と力し連絡先と住所――、そして予算を登録する。

「しかし……、俺が會社を買う立場になるとは思ってもみなかったな。とりあえず架空でもいいから會社があれば箔にはなる」

すでに夜も遅い。

あとは明日に掛けるしかないだろうな。

――ピピピピッ

「……う……ん?」

意識がはっきりしない中、攜帯電話――、スマートフォンを取る。

寢ぼけたまま、攜帯電話の畫面に映っている電話番號を見るが見た事がない番號だ。

それに時刻は、午後2時を過ぎている。

――とりあえず、著信ボタンを押す。

「こちらM&Aコーポレーションの月と言います。山岸様の攜帯電話番號で宜しかったでしょうか?」

「M&A……」

そこでようやく意識がハッキリする。

昨日、會社を売りたいオーナーと買い手を引き合わせるサイトに登録したことを思い出す。

「はい。山岸ですが……」

「私、M&Aコーポレーションの月(もちづき) 麗華(れいか)と申します。先日、ご登録頂きました容の確認のためご連絡いたしました。ご登録を頂きましたご本人様で宜しかったでしょうか?」

「はい」

「それでは、しお話をお伺いしたいのですがお時間は宜しいでしょうか?」

電話口で話しているの言葉に俺は同意の言葉で頷く。

すぐに、どのような職種の企業を買収したいのか――、そして予算はいくらなのか? と聞かれる。

予算は、一社あたり500萬円前後。

何社か購したいこと。

そして、長年コールセンターで働いてきた経験からコールセンターをと注文する。

「畏まりました。全部で117社を當社では登録されております。詳細――、書面につきましてはお會いしてからと言う事になりますが如何いたしますか? お客様のお住まいでしたら、こちらから伺いこともできますが……」

「いえ、社の方に伺いたいと思います」

取引相手――、仲介人が、どういうオフィスを構えているのか。

どれだけの規模の會社かを確認するのは社會人としては當たり前のこと。

まずは、相手の會社に行き本當に取引にふさわしいかどうかを判斷する必要がある。

「それでは、日程でございますが年末ということもありお忙しいかと思われますので2024年1月10日以降など如何でしょうか?」

「今年中などは難しいですか?」

なるべく早い段階で制を整えたい。

時間を掛ければ掛けるほど千葉都市モノレールの存続に対して、第三セクターが消極的になる可能がある。

「それでは、本日の午後5時など如何でしょうか?」

「わかりました。よろしくお願いします」

「畏まりました。山岸様、當社のホームページはご覧頂きましたでしょうか?」

「はい。一応は……」

「それでは、登録頂きましたメールアドレスに當社の住所をお送り致します。當社までの道が分からなかった場合には、メールに添付しております連絡先までご連絡ください」

「わかりました。何か分証明書などは必要ですか?」

「ご本人確認が取れる分証明書だけあれば結構です。他には何かご質問はございますか?」

「いえ――、それではよろしくお願いします」

電話が切れる。

「――さて……、まずは會社を買収するということだから見栄えが必要だな」

『ハイヤー 千葉 千城臺』で検索をかける。

すぐに検索に引っかかり予算は30キロまで2萬円弱。

東京都新宿駅前までには、往復でかなりの予算が掛かりそうだが……。

「背に腹は変えられないな」

すぐに電話をれる。

「はい。千城臺通ですが……」

「すいません。社のホームページでハイヤーの貸し出しをしているのを見たのですが――」

「申し訳ありません。當社をご利用して頂くお客様には事前に會員登録と予約を頂く規則になっておりますので」

これは困ったな。

現在の時刻は午後2時――、新宿には5時までに到著しなければいけない。

あまり遠い業者だと、それだけでも時間を浪費してしまう。

「そこを何とかなりませんか?」

「あいにく規則ですので――」

本來なら、これ以上はクレーマーの領域になる。

だが、俺も引く訳にはいかない。

ならば! 仕方ない。

ここは、長年コールセンター業務に従事してきた経験を最大限に生かさせてもらう。

「失禮ですが、所長様か社長様はいらっしゃいますでしょうか?」

「申し訳ありませんが……、きちんと手続きを踏んでから……」

「貴の対応には非が無い事は分かりますが、出來れば経営的判斷が出來る方に電話を替わって頂けますか?」

「…………々お待ちください」

5分ほど待たされる。

そして唐突に電話の待ちが解除される。

「大変お待たせしました。千城臺通の富田です。どのようなご用件でしょうか?」

「お忙しいところ、申し訳ありません。山岸と言います。ハイヤーを今日一日、運転手付きでお借りしたいのですが……」

「それは出來ないことは當社のオペレーターがお話したと思いますが?」

「はい。存じております。――ですから、正規の10倍のお金で融通して頂けませんか?」

「じゅ!? 10倍!?」

「如何でしょうか? 30萬円まで出すことが出來ますが?」

「――わ、わかりました! すぐに! 早急にご用意いたします! どちらまで伺えば宜しいでしょうか?」

「待ち合わせ場所は――」

住所を説明したあと、支払いは現金ということで承諾をけることが出來た。

それから10分後、黒塗りの高級車であるクラウンがアパートからし離れた場所に到著した。

俺が乗った車は、京葉道路を通り首都高へと乗り換えたあと新宿方面へと進路を変える。

それから、しばらく走り外苑出口で降りた。

そのまま車は、M&Aコーポレーションの所在地である明治通りを走る。

「山岸様、到著致しました」

「ありがとう。あとで、また連絡をれるのでよろしくお願いします」

「畏まりました」

俺は、運転手が開けてくれたドアから降りる。

なんというか、すごくお金持ちになった気分だ。

タクシーのような自ではなく、運転手自らが手で開けてくれるところに趣と風じてしまう。

「さて――」

俺は、目の前に見える20階建ての茶いビルを見上げる。

スマートフォンにメールで添付されてきた住所は、攜帯アプリの地図を見る限り場所的に間違いはないようだ。

――ビルの中へる。

「M&Aコーポレーションは……」

一人呟きながら、ビルっているテナントのプレートへと視線を走らせる。

すぐに見つかる。

どうやら13階から14階までをM&Aコーポレーションが占有しているらしい。

以前に西池袋で勤めていたときには、テナントの費用が一年間で2400萬円とかゼネラルマネージャーが言っていたことがある。

池袋よりも新宿の方がテナント料金は高いだろう。

そうなると、フロア的に以前に勤めていた會社よりも広いということは、それなりの規模の會社ということが見てとれる。

「さて、いくか……」

大理石を模した床の上を歩き3基あるエレベーターの一つに乗り込み13階の付に向かうために13階のボタンを押す。

エレベーターはすぐに上がっていき13階で止まる。

降りると、真正面にはM&Aコーポレーションのロゴ――、赤い凰のマークが書かれた大きなプレートが飾られている。

そして、プレートの前には木製のテーブルと呼び出しのためのが置かれている。

――トゥルルウル

「はい。M&Aコーポレーションです」

「本日の17時から、相談の予約をしております山岸と申しますが、月様はいらっしゃいますでしょうか?」

「はい。々、お待ちください」

すぐに待機中の音楽が流れる。

そしてすぐに、音楽が切れた。

「山岸様、お待ちしておりました。わたくし、山岸様の擔當を致します月 麗華と言います」

オフィスに通じる扉から出てきたのは、やはり

俺は差し出された名刺をけ取る。

一言で言うなら――、かなり仕事が出來る人のように見える。

理由は? と聞かれれば……、薄いグレーのレディーススーツを著こなしていることからと言う見た目からだ。

ステータス

名前 月(もちづき) 麗華(れいか)

職業 M&Aコーポレーション課長代理

年齢 27歳

長 160センチ

重 47キログラム

レベル1

HP10/HP10

MP10/MP10

力14(+)

敏捷12(+)

腕力14(+)

魔力 0(+)

幸運 4(+)

魅力25(+)

所有ポイント0

ステータスを何となく……、無意識的に「解析LV10」で見ていた。

別に他意はない。

ただ、しだけ興味があっただけだと心の中で弁明しておきたい。

それにしても27歳には見えないほど若々しい。

これで髪を茶に染めていなければ、かなりの和風と言ったじだったのだが……。

キリッ! とした強い眼差しと長い髪を後ろでアップしている部分は一部の男からは評価が高いかもしれない。

「申し訳ありません。道が空いていたので、思ったよりも早く到著してしまいました。時間的には大丈夫でしょうか?」

「はい。年末に購のためにお越しになる方はないので……」

「そうですか」

「それでは、こちらへどうぞ――」

月さんにオフィスの中へ案される。

やはりというかチラッと見えただけで十臺以上のノートパソコンが見えた。

資本金が3億円とWIKIでは書かれていたが、強ち噓ではなさそうだな。

パーティションで區切られた場所ではなく、きちんと一室として區分けされた部屋に通される。

「それでは、こちらで々お待ちください」

に勧められるがまま椅子に座ること3分。

は、コーヒーを二つとクリアファイルを抱えて室ってくる。

「寒い中、お越しくださりありがとうございます」

は、ホットコーヒーを俺へと差し出す。

もちろんけ取る。

砂糖とミルクと一緒に。

「いえ、それではよろしくお願いします」

「はい。それでは、當社の説明をさせていただきますね」

10分ほどで、M&Aコーポレーションについての説明が終わる。

――月さんの話の容をかいつまむと――。

後継者不足で企業存続が難しい會社。

営業利益は上がっていたが何らかの事により売りする會社。

……などを、M&Aコーポレーションでは取り扱っているという容であった。

話が一通り終わったところで、リストの一覧をけ取る。

あまり顧客容には詮索してこないところがいい。

まあ、アパートに住んでいる無職ですと説明する訳にもいかないからな。

クリアファイルにっている資料に目を通していくと會社名や資本金、直近の売上から社員數まで書かれている。

ただ、問題は……、どの會社を購していいのか分からない點だ。

「お答えは何時までにすれば宜しいですか?」

「期間は設けておりませんが――」

「なるほど……」

月さんの言葉に相槌を打ちながら顎に手を當てながらホッとで下ろす。

すぐに決めないといけない場合であったのなら困っていたところだ。

俺の場合は、當てはまらないかも知れないが、會社を買う場合には基本的にデューデリジェンスの徹底が必要になってくる。

簡単に言うならば買収監査とも言う。

帳簿外債務以外にも、他會社との連帯保証・稅務リスク(違法な節稅)や訴訟・背任行為・公害問題などリスクを警戒する部分は多岐に渡る。

そしてそれらを買収監査(デューデリジェンス)と呼ぶ。

「こちらのリストは持って帰っても?」

「申し訳ありません。こちらの方で――」

渡された資料は會社名や連絡先などが書かれていないリスト。

企業コンプライアンスというモノだろう。

まぁ、自分が勤めている會社が買収されるかも知れないと分かれば労働者の士気は落ちるし、何より取引先との関係も悪化するだろう。

當然の配慮と言える。

M&Aコーポレーションがオフィスを構えているビルから出た頃には、日は沈んでいた。

すぐにハイヤーを攜帯電話で呼び出す。

5分もしないうちに車はビルの前に停まる。

「千城臺までお願いします」

「畏まりました」

すぐに車は走り出す。

車は首都高へと乗り走る。

すると、しばらくして渋滯に摑まる。

東京名とも言える首都高渋滯。

俺は、心溜息をつきながら目を閉じた。

車は渋滯を抜け千葉県にり、京葉道路へと乗り換えたあと――、1時間ほどで貝塚インターチェンジを降りた。

それから國道を走ること10分ほど。

千葉東警察署前を通りすぎると、千葉都市モノレール千城臺駅が見えてきた。

そこで、俺は支払いについて思い出す。

そういえば……。

「すいません。一度、銀行へ寄って頂けますか?」

「畏まりました」

よくよく思い出してみれば、現金で馬券を購したあと――、當てたお金については千葉信用銀行に殆ど預けていた。

おかげで手持ちが918円しかない。

これでは、ハイヤーをレンタルしていた支払いが出來ない。

千葉興業銀行の千城臺支店前に車を止めてもらう。

ハイヤーから降りると周辺の住人が俺をジロジロと見てくる……、ような気がするが気のせいだろう。

銀行にりATMから100萬円ほど引き出そうとすると引き出すことができない。

仕方なく10萬円単位で引き出せる限度額まで引き出すと50萬円まで引き出すことが出來た。

「なるほど……、一日の限度額があるのか?」

下ろせる金額に限度額があるなんて初めて知った。

「生きてきた中で一番高い買いは車を除けば、牛丼を自作する時に用意した100グラム1萬円の牛くらいなものだからな……」

何となく慨深くじるが、いまは運転手を待たせている。

すぐに銀行から出たあと、近くのファミリーマートで封筒を購し40萬円をれてからハイヤーへと戻る。

「お待たせしました。千城臺通までお願いします」

「千城臺通までですか?」

「はい」

「分かりました」

どうやら運転手の方には、千城臺通の富田さんは何も説明はしていないようにじられることから、支払いは千城臺通で済ますことに決めた。

それに今後、何度か使うことになるかも知れない。

繋がりを作っておくことは必要だろう。

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