《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》ハイヤー不定期契約

――車は5分ほどで千城臺通に到著する。

「それではしお待ちください」

車から降りたあとは、運転手が車を車庫れするまでの間、タクシー會社の構に停まっている車を見ながら時間を潰す。

仕事柄、多くのコールセンターを見てきた。

中には、駐車場管理のコールセンターにも配屬されたことがあったが……。

「タクシー會社に直接きたことはなかったな」

土地――、敷地は大だが學校のグランドの半分ほどはあるだろう。

そして道路に面した側には2階建てのプレハブの建が建っており、敷地の奧の方にはガソリンスタンドに置かれているような洗車機が置かれている。

「山岸様、お待たせしました」

男の言葉に頷く。

そういえば……、名前を聞いていなかったな。

スキル「解析LV10」で確認する。

ステータス

名前 相原(あいはら) 勉(つとむ)

職業 タクシー運転手

年齢 67歳

長 167センチ

重 59キログラム

レベル1

HP10/HP10

MP10/MP10

力17(+)

敏捷14(+)

腕力15(+)

魔力 0(+)

幸運 2(+)

魅力 8(+)

所有ポイント0

なるほど……。

相原という名前か。

男に連れられてプレハブ2階建ての建の中にると、二人から視線を向けられる。

二人のの前には電話とパソコンが置かれていることから配車などを擔當しているのかも知れない。

「山岸様、お待ちしておりました。富田と申します」

話し掛けてきた男を「解析LV10」で見る。

ステータス

名前 富田(とみた) 源六(げんろく)

職業 千城臺通社長

年齢 45歳

長 174センチ

重 55キログラム

レベル1

HP10/HP10

MP10/MP10

力18(+)

敏捷13(+)

腕力17(+)

魔力 0(+)

幸運 5(+)

魅力18(+)

所有ポイント0

――どうやら、目の前の――、話してきた男が千城臺通の社長で間違いないようだな。

「相原君。お疲れ様、勤怠表を出して今日は上がってくれ」

「わかりました。それでは――。山岸様、失禮致します」

ステータスを確認している間に、富田に指示をけた相原は、俺に一禮すると事務所の奧へと向かってしまう。

「それでは、こちらへどうぞ」

富田に案された部屋は、2階の社長室。

部屋にるなりソファーを勧められたので、そのまま座る。

それからすぐに事務員がインサートカップにったコーヒーを2人分持ってくるとテーブルの上に置いて部屋から出て行った。

「山岸様、どうぞ……」

向かい側に座った富田が薦めてきたコーヒーに砂糖をれて口をつける。

思ったよりもが冷え切っていたこともあり、コーヒーの熱がやけに熱くじられるが――。

まぁ――、いまはそれはどうでもいいだろう。

「富田さん、今日は無理を言ってしまい申し訳ありませんでした」

俺は、コンビニエンスストアで購した茶封筒にれた現金40萬円をテーブルの上に置く。

相手から言われてから出しても良かったが、さすがに商売をしている人間から顧客相手に催促するのは厳しいだろうという判斷からだったが――。

「一応、お約束した金額をれてあります。ご確認をしてください」

「ずいぶんと急なのですね」

「何分、分なものなので」

コールセンターに攜わっている時間が長い場合、勤めている人間はエンドユーザーの要をいち早く察知し正解へと思考導しないといけない。

それは、多くのコールセンターのアポインターに求められるスキル。

何故、必要なのか? と言えば――、多くの電を裁くために必要だからだ。

「お約束の30萬円よりも10萬円ほど多いようですが……」

一人で考え込んでいる間に、紙幣を數え終わった富田が俺を見てくる。

「じつは、今後もハイヤーの利用をしたいと考えております。その10萬円は、その際の心づけということで」

「なるほど……」

俺の言葉の意味を察してくれたのか何度か頷くと、封筒をテーブルの上に富田が置く。

「それでは、何かあった場合に配慮してしいと言う事ですか?」

「そうなります。専屬という形はとれないので、何とかなりませんか?」

まだ俺は會社をもっていない。

ハイヤー契約になると法人同士の契約になる場合が多い。

――なら、お金を多なりとも先に渡しておいて融通を利かせてもらいたい。

「分かりました」

即答で答えを返してくる。

そんなに簡単に約束をしてしまっていいのだろうか?

まあ、俺としては助かるが――。

「そんなに簡単にけてしまっていいのですか?」

「――ええ。これでも、金銭には敏な方でして」

どうやら、社長をしているだけあって中々どうして食えない男のようだ。

結果的に助かったが、なるべく報は與えない方がいいだろうな。

「なるほど――」

俺は目の前の男の目を見ながら答える。

「ええ――」

やはり男も薄く笑みを浮かべ返してくる。

「さて、富田さん。今後、ハイヤーの利用については口約束であってもご了承頂けたと言う事で宜しいでしょうか?」

「はい。貰えるさえ貰えれば――」

何だが、俺と富田の話し合いが悪人同士の相談そのものに思えてくるが、気のせいだろう。

実際は、正規ルートのきちんと稼いだお金で払うのだから。

「富田さん、そろそろ本題にりたいと思うのですが予算は如何致しましょうか?」

「そうですね……、いつでも対応できるとなると――」

富田が、両腕を組み目を閉じる。

俺は、それを見ながら待つこと數十秒。

「山岸様専用のドライバーを用意した方がいいかも知れませんね。それが一番、安く済むと思いますので」

「専屬?」

「はい。當社と致しましても、今いる人員でいつも対応できるとは限りませんので。それに融通を利かせるとなれば、その方がいいでしょう」

「なるほど……。つまり、私がクライアント――、社が人材を派遣する形をとる……、そういうことですか?」

「まぁ、それに近いですね」

ふむ……。

たしかに、これからのことを考えるとその方がいいかも知れない。

問題は、金額だな。

「金額的には、どのくらいを?」

「そうですね、當社の規定と致しましては30キロあたりまでを2萬円としております。ですが、それは車とガソリン代・整備を含めた金額になりますので――」

「つまり、まずは人件費ということですか?」

「ええ、當社としても契約される方が法人ではない場合には……」

なかなか足元を見てくるな。

まあ、金はある。

ここは、し強気で出てみるとするか。

「24時間対応ということで、2人雇う方向で――、一人あたり30萬円の支払いでどうでしょうか?」

「つまり、人件費で60萬円ということですか?」

「違います」

俺は指を――、人差し指を立てる。

「月300萬円の支払いでどうでしょうか?」

「――さ、300萬円!?」

「驚くほどの事ではないでしょう? これらには車を用意してもらう事、そしてガソリン代込みでと考えていますから」

「――なるほど……、やはり私の見た通り、貴方はすごい方のようだ。まるで、降って湧いた大金を持っているかのようにお金に対してまるで執著を見せない。自分に必要なら、相手が必要なを提供してくる」

「では――」

「はい。月300萬円の契約で山岸様専屬のドライバーの確保と24時間対応をお約束しましょう」

まあ、毎回30萬円払うよりは安いだろう。

で下ろしていると、富田が事務所の電話を取り話し始める。

それから、すぐに事務員のが部屋にってくる。

「社長、お持ちしましたが――」

事務員が俺の方を一瞬チラリと意味有りげにみてくるが、すぐに部屋から出ていく。

「山岸様、これは本來は法人様とハイヤー契約をする書類になります。私は、貴方のことを信じて契約をすることにしましたので記をお願いできますか?」

「いま、法人ではまずいと言いませんでしたか?」

「はい。ですが……、多くの顧客を見てきた私から言わせてもらえれば、貴方は何れ會社を自分で持つようになる。私はそう確信しているのですよ」

なるほどな。

いまの俺は會社を購するためにいている。

それを何となく分かってしまうとは……、俺と同じく有能のようだな。

――ただ……。

「法人名と書くように言われても困るのですが?」

「それならば――、將來、山岸様が會社を作る際に付けられる名前でも構いませんよ」

「なるほど……」

それなら、俺がつける會社名は一つしかない。

サラサラっと書く。

「なるほど……、さすがは山岸様。私が見込んだだけはある方ですね」

「そうですか?」

「ええ――、『株式會社ギュウドゥーン』ですか…………」

契約書をわしたあと、富田が運転する車でアパート前まで送ってもらう。

「それでは、山岸様。これからも末永くお付き合いを――」

「はい。それでは約束通り後日、前金を用意しておきますので」

「連絡を頂ければ伺いますので」

アパートの前で車から降りたあと、二言・三言――、話したあと車は去っていく。

「さて、俺も帰るとするか……」

アパートの敷地にり階段を登ろうとした瞬間――、視界に赤いプレートが表示されると同時にログが流れる。

――スキル「危険察知LV10」が発しました。

――杵柄(きねづか) 妙子(たえこ)が倒れたのを確認しました。

「――な!?」

すぐにスマートフォンを取り出す。

「山岸様、どうかなさいましたか?」

「すぐに戻ってきてください」

「……分かりました。アパート前でよろしいでしょうか?」

「杵柄さんの家は分かりますか?」

「はい。同じ町會に父も所屬しているので――」

「……では、杵柄さんの家の前で」

俺は、メゾン杵柄のアパートの敷地から出ながら手短に足の確保をする。

赤いプレートが表示されるということは命の危険があるということ。

なら迅速な対応が必要になる。

「くそっ! 石垣を遠回りしている余裕はない!」

――斜めに5メートルほど跳躍。

杵柄さんの自宅を囲っていたブロック塀を超えると同時に、縁側で倒れている杵柄さんの姿が目にった。

すぐに駆け寄り話かけるが応答がない。

「こんな時に大賢者がいれば……」

佐々木を助けた時のようにスキルが使えれば問題ないというのに。

だが、いまは泣き言を言っている場合ではない。

――、杵柄さんを抱き上げるとブロック塀に向かって走り跳躍。

2メートルを超えるブロック塀を超えたあと道路に著地。

辺りを見渡したところで車の照明が視界にった。

「山岸様、お待たせしました――、これは!?」

「富田さん。みつわ臺病院まで」

「いえ、ここは千城臺病院が近いです、杵柄さんをしっかりと抱き抱えておいてください」

車は猛スピードで走り始めた。

「いまは容も安定しましたので、もう大丈夫ですよ」

千城臺病院に到著したのは、わずが3分後。

まさか、街中でドリフトを見るとは思わなかった。

「そうですか……」

俺は、醫者の言葉にホッとする。

「どうでしたか?」

「いまは容も安定したと」

「良かったです。それで、どうしますか?」

「どうとは?」

「いえ――、杵柄氏は山岸様とは無関係の方ですので、このままお帰りになるのかと……」

俺は首を橫に振る。

「そうですか。それでは何かありましたら、またご連絡を」

「いきなり無理を言ってしまい申し訳ありませんでした」

「いえいえ、お気になさらず。同じ町に住む者同士――、助け合いは必要ですからね」

それだけ言うと、富田が運転する車は病院の敷地から出ていく。

俺は車を見送ったあと、病室へ戻った。

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