《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》幕間2 日本國政府

――首相邸3階。

その南會議室の扉が閉まると同時に、小野平防衛大臣は――、この國の首相であり第99代 日本國総理大臣 夏目一元へと視線を向ける。

「総理、よかったのですか? あのような立ち振る舞いを許して――」

小野平の言葉に、夏目は頷くと口を開く。

「許すも許さないも、あの男が提示してきた資料には、それだけの価値があるだろう? それに、ああ言う問題の解決方針を金で済まそうとする輩の方が正義と喚く輩より遙かに信用できる。何故なら自分の正義に酔う連中ほど救えない奴らはいないからな」

そう呟いたあと、夏目はタブレットに視線を落としたあと指を畫面に這わせる。

タブレットに表示されていたのは野黨の不正報だけではない。

僚の使途不明金までもが詳細に書き込まれてくる。

「それに、このデータだけで、數千億の価値がある。消費稅を下げようと思っていたが、財務省からの抵抗で中々行えなかったからな」

「ですが……」

「小野平、勘違いをするなよ? 我々がしないといけないことは、國民の生活向上だ。そのためには暴言やどんな罵りでも甘んじてける。それが我々の仕事だろう? そして、そのために私は総理になったのだ」

「――っ!? そ、そうでしたな」

「分かればいい。200億の資金は、私の口座から出しておくとしよう、しばらくは席を外してくれたまえ」

「かしこまりました」

會議室から、小野平が出ていく。

扉が閉まるのを目で確認したあと、夏目は、タブレットを作しながら山岸のプロフィールをチェックしていく。

それは山が調べたもの。

そのプロフィールに目を通していた夏目の視線がある一點を見たところで止まる。

「上越智村の出?」

眉間に皺を寄せた夏目は、タブレットを使い上越智村の報を閲覧していく。

「やはりな……、どこかで聞いたことがあったと思ったが……」

タブレットの畫面には、KB(クリエイィブバンク)と東亜ソーラー開発株式會社が関わっていた事業――、メガソーラー設備を斜面に作ったことで、斜面が広域に崩落。

斜面を作ることを反対していた上越智村を膨大な土砂が襲い183人が死亡。

生き殘りは1人と書かれている。

「なるほどな」

さらに夏目が資料を読み進めていく。

が調べた資料の中には、山岸が大手コールセンターに勤めていた経緯。

その際に、顧客報を不正に開示していたことも書かれている。

「ふむ……」

顎に手を當てたまま、夏目は腑に落ちない表をし――。

「どういうことだ? 我々に、野黨や僚の報をリアルタイムで送りつけてくる人間が、どうして態々、大手のコールセンターで雇用され、ログを殘すような方法で事を調べる必要があるのだ? 腑に落ちんな」

さらに山岸直人という男のプロフィールと職歴と學歴を夏目は見ていく。

「ダンジョンツアーに參加しているのか。――なるほど、レムリア帝國の兵士が襲ってきた時にも居たの……か!? まさか……、いや――、可能は非常に高いな。あの男――、人を殺してレベルを上げた可能がある。地面を突き破り天空へと放たれた緑。もし、あれが山岸直人の魔法だったとしたら……、レムリア帝國の兵士が倒れていたことも、我々に提供された報も魔法で得られたものならば、すべての説明がつく。おそらく山岸という男、最低でもLV600を超えている。しかし……」

夏目は、ひと呼吸おくとタブレットをテーブルの上に置く。

「何の力も、戦い方も知らない、最初は持たない人間がレムリア帝國の兵士を倒せることがナンセンスではないのか? もし倒せるとしたら、それは何かしら武を修めていなければできないことではないのか?」

夏目は一人呟きながらも、ふと何かに思い至ったのかテーブルの上に置いたタブレットを再度、手にとると畫面上に【上越智村】【武】と打ち込んで検索をかける。

すると、畫面上にいくつかHITする。

そこに表示された文字には、どれも疑わしいものばかりで――。

さらに、夏目はタブレットの畫面をスクロールしていくと、夏目の視線がタブレットの畫面上に釘付けになった。

「上越智村に存在していた神社は、毎年、天より墮ちた神々を鎮める祭祀を取り仕切っていたのか……、これはさすがにな……」

さすがに神々が居るなど空想もいいところであったことから夏目の関心は急速に薄れていった。

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